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狩り
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次の日の早朝、ペルーラは「2時間位したら庭で待っていて。きっと王子を連れてくるから」と言い残して出ていった。
アスカが眠い目を擦りながらベッドに横たわっていると、
「王子は屋敷のお嬢様達と狩りに行くそうですよ。アスカ様も早く支度して行きましょう」とサーラが起こしに来た。
「今日はゆっくり過ごすわ」とアスカは返事をした。ペルーラが王子を連れてきてくれるはずである。
「アスカ様、そんなのんきなこと言っていると王子様をリディア嬢に取られてしまいますわよ」
と言って無理やり起こされて洋服に着替えさせられた。
サーラは優しくて良い人なんだけど、少しおせっかいなんだよなとアスカは思った。
「さ、さ、さ、急ぎましょう!」とサーラが急かしてくる。
アスカはこのままでは狩りに行くことになってしまうと思いとっさに
「王子とは後で会う約束をしているから」と嘘をついてしまった。
「えーーーー! ほんとうですか! いつの間に!」
思っていた以上に驚くサーラに戸惑いながら、アスカは嘘を重ねた。
「え、ええ。食事の時にこっそりと」
「まあ、素敵! やっぱりアスカ様は王子様とはただならぬ関係なのですね!」
「ま、まあそうね」アスカは少し汗をかきながらうなずいた。
サーラを黙らせるために嘘をついてしまったけど、ペルーラがきっと王子を連れてきてくれるはず。
「それじゃあ、楽しみに待ちましょう。いつ待ち合わせしているのですか?」
「二時間後に庭で待ち合わせしているの」
「どこに行く予定ですの?」
「それがまだ決めていなくて。どこかゆっくりできるところあるかしら」
「それでしたら、少し山側のほうに行ったところにある小さな教会がいいと思いますわ。今日は平日だからお祈りに来る人もいないだろうし、じゃまされないと思いますわ」
「教会っていいわね。そこにするわ。ありがとう。王子が来るまで本でも読んでようかな」
そういってアスカは図書室に向かった。王子を待つ間の暇つぶしだ。
図書室にある本はアスカには全く読めない言葉で書かれていた。それでもページをめくっていると時折挿絵が描かれていたのでそれを眺めた。船や馬車、牛、馬、羊、麦、武器などの絵を見ているだけでこの世界の情報が少しずつ入ってくる。まだ燃料で動く機械類は存在しないようだ。
一方、ペルーラはホワイトブライアンの首のあたりにちょこんと乗ってバランスを取っていた。もちろん王子には見えないように姿を消している。弓を腰にぶら下げたエドワルド王子の乗ったホワイトブライアンの後ろを令嬢たちの乗った少し大きいロバのような馬たちがぞろぞろとついてきている。
エドワルド王子はその中にアスカの姿がないことが気がかりだった。
アスカ殿は俺がこの屋敷にいることを快く思っていないみたいだ。それに、リディア譲と狩りに行く約束をしてしまった。アスカ殿と満足に話す機会もないまま時が過ぎている。俺のせいでアスカ殿は一時的とはいえジャルジャンのものになってしまった。俺はアスカ殿に嫌われてしまったのかもしれない。王子の気持ちは沈んでいた。
「エドワルド王子、今日は何を捕らえてくださる予定ですの?」とリディア嬢が王子に質問をした。
「さあ、わかりませぬ。見つけた獲物をしとめるだけです」
「まあ、頼もしいですわ。期待していますわよ」リディアはアスカがいないことで機嫌がよかった。あれだけ昨日の食事でいびっておけば今頃泣いて過ごしていることだろう。王子は私のものになるのよ。そう思っていた。
アスカが眠い目を擦りながらベッドに横たわっていると、
「王子は屋敷のお嬢様達と狩りに行くそうですよ。アスカ様も早く支度して行きましょう」とサーラが起こしに来た。
「今日はゆっくり過ごすわ」とアスカは返事をした。ペルーラが王子を連れてきてくれるはずである。
「アスカ様、そんなのんきなこと言っていると王子様をリディア嬢に取られてしまいますわよ」
と言って無理やり起こされて洋服に着替えさせられた。
サーラは優しくて良い人なんだけど、少しおせっかいなんだよなとアスカは思った。
「さ、さ、さ、急ぎましょう!」とサーラが急かしてくる。
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「えーーーー! ほんとうですか! いつの間に!」
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「え、ええ。食事の時にこっそりと」
「まあ、素敵! やっぱりアスカ様は王子様とはただならぬ関係なのですね!」
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サーラを黙らせるために嘘をついてしまったけど、ペルーラがきっと王子を連れてきてくれるはず。
「それじゃあ、楽しみに待ちましょう。いつ待ち合わせしているのですか?」
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「どこに行く予定ですの?」
「それがまだ決めていなくて。どこかゆっくりできるところあるかしら」
「それでしたら、少し山側のほうに行ったところにある小さな教会がいいと思いますわ。今日は平日だからお祈りに来る人もいないだろうし、じゃまされないと思いますわ」
「教会っていいわね。そこにするわ。ありがとう。王子が来るまで本でも読んでようかな」
そういってアスカは図書室に向かった。王子を待つ間の暇つぶしだ。
図書室にある本はアスカには全く読めない言葉で書かれていた。それでもページをめくっていると時折挿絵が描かれていたのでそれを眺めた。船や馬車、牛、馬、羊、麦、武器などの絵を見ているだけでこの世界の情報が少しずつ入ってくる。まだ燃料で動く機械類は存在しないようだ。
一方、ペルーラはホワイトブライアンの首のあたりにちょこんと乗ってバランスを取っていた。もちろん王子には見えないように姿を消している。弓を腰にぶら下げたエドワルド王子の乗ったホワイトブライアンの後ろを令嬢たちの乗った少し大きいロバのような馬たちがぞろぞろとついてきている。
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「さあ、わかりませぬ。見つけた獲物をしとめるだけです」
「まあ、頼もしいですわ。期待していますわよ」リディアはアスカがいないことで機嫌がよかった。あれだけ昨日の食事でいびっておけば今頃泣いて過ごしていることだろう。王子は私のものになるのよ。そう思っていた。
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