23 / 71
ジャルジャンの屋敷
しおりを挟む
ジャルジャンの屋敷は山の中腹にあり、周りを塀で囲まれていた。立派な門の中に馬車が入ると、そこはとてつもなく広い石畳の庭になっていた。ランプがいくつも灯されており、夜なのに明るい。中央には大きな噴水があり水が流れている。それを囲むようにヨーロッパ風の建物が数棟建っており、まるで大学のキャンパスのようだ。辺りは山に囲まれていて自然が豊かである。空気が澄んでいて排気ガスやチリの臭いが全くしない。人の姿がちらほら見られ、会話が聞こえてくる。みんなここでは穏やかに暮らしているようだ。
― 想像していたのとは違う。知的というか文化的と言うかそんな雰囲気が漂っている。
「お待ちしておりました。アスカ様。馬車よりお降り下さい」
そう言って黒い礼服のような衣装を着た男性がアスカを出迎えた。
「初めまして。私はこの屋敷の執事フランソワでございます」
「初めまして。わたしはアスカです。よろしくお願いします」馬車から降りるとアスカはお辞儀した。
「これよりお部屋までご案内いたします。荷物はございませんか?」
「荷物は特にありません……」
とペルーラが馬車から姿を現した。
「にゃーん」とアスカの足元にすり寄ってくる。半透明でなくなっている。みんなの前に姿を現したようだ。
「あ、この子はペルーラです。飼っても大丈夫ですか?」
「まあ、可愛らしいですね。ペットですか。ジャルジャン様は生き物は大好きですので歓迎されると思います。すぐにお伺いしておきましょう」
「よろしくお願いします」
「ささ、どうぞこちらへ」
アスカはフランソワの案内に従って歩いた。
アスカは敷地内で一番大きな建物の三階の部屋に案内された。まるで一流ホテルの部屋のように豪華で広い。
「今日からこのお部屋をご自由にお使いください。必要なものがあればこちら、メイドのサーラにお言いつけください」
「サーラです。よろしくお願いします」
ぽっちゃりしたメイド姿の少女がいつの間にかいて、お辞儀していた。大きめの胸が衣装のデザインで強調されている。クルクルの金髪にリボンが着いていて笑顔が可愛らしい。
「アスカです。よろしくお願いします」
「アスカ様のような素敵な方にお使い出来て嬉しいです」
「え、あ、はい」
― いえ、あなたの方が遥かに素敵でしょ。そんなセリフを言われても困るんだけど……。
「それではゆっくりおくつろぎください。一時間後位に食事の準備が整いましたらお呼びいたします」そう言ってフランソワは出て行った。
サーラが部屋の中を案内してくれた。部屋にはソファ、ベッド、シャワールーム、衣装ルームなど生活に必要なものは全て揃っていた。大きな窓からは屋敷の庭を一望できる。今は暗くて景色はよく分からないが、遠くに灯りがちらほら見える。きっとあそこに町があるのだろう。空にはめまいがするほどの星の数である。
― なんて素敵な部屋なんだろう。こんな部屋で生活できるなんて夢のよう。アスカはソファでくつろぎながらペルーラをもふもふした。
少しうとうとしかけた頃にドアがノックされ、執事のフランソワが呼びに来た。案内された場所は広い食堂で長細いテーブルが中央にでーんと置いてあり、椅子が並べられていた。五十人位は一緒に食事が出来るであろう。世話係のメイドが数人配置されている。その上座にジャルジャンが座っていた。
「アスカちゃーん。こっちこっち」そう手を振って馴れ馴れしく呼んでいる。競売場の時の態度と全然違う。アスカはジャルジャンの近くの料理が用意されている席に座った。
「ささ、疲れたでしょ~。お飲み物は何にする?ワインもあるしシャンパンもあるし好きな物を飲んでね」
「白ワインをお願いします」
「かしこまりました」そう言ってメイドがよく冷えた白ワインをアスカのグラスについだ。
「かんぱーい」
そう言うジャルジャンとグラスを合わせた。ワインを一口飲むとフルーティーな味わいが口に広がった。さっぱりしていて飲みやすい。
「お腹すいたでしょ遠慮せずに食べてね」
アスカはお腹が空いていたので遠慮せずに食べた。というか、先程席に座った時からスープの香りが漂っていてすぐにでも食べだしたい気持ちを抑えていた。
― うま~い。
今まで食べたことの無い旨みのあるコンソメスープだった。そうなると空腹が刺激されて夢中で食べ続けた。
「アスカちゃん、とてもいい食べっぷりね」
ジャルジャンの声に顔を上げると、周りのみんなが注目してみていた。
― きゃ~。恥ずかしい。乙女ががっつく姿を見られてしまったわ。
アスカはいったん食べるのをやめた。
「いいのいいの。そういうところも素敵だわ。この屋敷では自由にくつろいでね。欲しいものは遠慮せずになんでも言ってね。用意するわ」
アスカはジャルジャンの目を見た。
くりくりっと見開かれた青い目はなんでも見透かしたようにアスカをみている。
意外に無邪気で可愛らしい。
吸い込まれそうな感覚になったが、気を取り直して言った。
「わたしはエドワルド王子の元に行きたい」
アスカは自分の意思をジャルジャンにハッキリと伝えた。これは馬車の中から言おう決めていた事だ。
― 想像していたのとは違う。知的というか文化的と言うかそんな雰囲気が漂っている。
「お待ちしておりました。アスカ様。馬車よりお降り下さい」
そう言って黒い礼服のような衣装を着た男性がアスカを出迎えた。
「初めまして。私はこの屋敷の執事フランソワでございます」
「初めまして。わたしはアスカです。よろしくお願いします」馬車から降りるとアスカはお辞儀した。
「これよりお部屋までご案内いたします。荷物はございませんか?」
「荷物は特にありません……」
とペルーラが馬車から姿を現した。
「にゃーん」とアスカの足元にすり寄ってくる。半透明でなくなっている。みんなの前に姿を現したようだ。
「あ、この子はペルーラです。飼っても大丈夫ですか?」
「まあ、可愛らしいですね。ペットですか。ジャルジャン様は生き物は大好きですので歓迎されると思います。すぐにお伺いしておきましょう」
「よろしくお願いします」
「ささ、どうぞこちらへ」
アスカはフランソワの案内に従って歩いた。
アスカは敷地内で一番大きな建物の三階の部屋に案内された。まるで一流ホテルの部屋のように豪華で広い。
「今日からこのお部屋をご自由にお使いください。必要なものがあればこちら、メイドのサーラにお言いつけください」
「サーラです。よろしくお願いします」
ぽっちゃりしたメイド姿の少女がいつの間にかいて、お辞儀していた。大きめの胸が衣装のデザインで強調されている。クルクルの金髪にリボンが着いていて笑顔が可愛らしい。
「アスカです。よろしくお願いします」
「アスカ様のような素敵な方にお使い出来て嬉しいです」
「え、あ、はい」
― いえ、あなたの方が遥かに素敵でしょ。そんなセリフを言われても困るんだけど……。
「それではゆっくりおくつろぎください。一時間後位に食事の準備が整いましたらお呼びいたします」そう言ってフランソワは出て行った。
サーラが部屋の中を案内してくれた。部屋にはソファ、ベッド、シャワールーム、衣装ルームなど生活に必要なものは全て揃っていた。大きな窓からは屋敷の庭を一望できる。今は暗くて景色はよく分からないが、遠くに灯りがちらほら見える。きっとあそこに町があるのだろう。空にはめまいがするほどの星の数である。
― なんて素敵な部屋なんだろう。こんな部屋で生活できるなんて夢のよう。アスカはソファでくつろぎながらペルーラをもふもふした。
少しうとうとしかけた頃にドアがノックされ、執事のフランソワが呼びに来た。案内された場所は広い食堂で長細いテーブルが中央にでーんと置いてあり、椅子が並べられていた。五十人位は一緒に食事が出来るであろう。世話係のメイドが数人配置されている。その上座にジャルジャンが座っていた。
「アスカちゃーん。こっちこっち」そう手を振って馴れ馴れしく呼んでいる。競売場の時の態度と全然違う。アスカはジャルジャンの近くの料理が用意されている席に座った。
「ささ、疲れたでしょ~。お飲み物は何にする?ワインもあるしシャンパンもあるし好きな物を飲んでね」
「白ワインをお願いします」
「かしこまりました」そう言ってメイドがよく冷えた白ワインをアスカのグラスについだ。
「かんぱーい」
そう言うジャルジャンとグラスを合わせた。ワインを一口飲むとフルーティーな味わいが口に広がった。さっぱりしていて飲みやすい。
「お腹すいたでしょ遠慮せずに食べてね」
アスカはお腹が空いていたので遠慮せずに食べた。というか、先程席に座った時からスープの香りが漂っていてすぐにでも食べだしたい気持ちを抑えていた。
― うま~い。
今まで食べたことの無い旨みのあるコンソメスープだった。そうなると空腹が刺激されて夢中で食べ続けた。
「アスカちゃん、とてもいい食べっぷりね」
ジャルジャンの声に顔を上げると、周りのみんなが注目してみていた。
― きゃ~。恥ずかしい。乙女ががっつく姿を見られてしまったわ。
アスカはいったん食べるのをやめた。
「いいのいいの。そういうところも素敵だわ。この屋敷では自由にくつろいでね。欲しいものは遠慮せずになんでも言ってね。用意するわ」
アスカはジャルジャンの目を見た。
くりくりっと見開かれた青い目はなんでも見透かしたようにアスカをみている。
意外に無邪気で可愛らしい。
吸い込まれそうな感覚になったが、気を取り直して言った。
「わたしはエドワルド王子の元に行きたい」
アスカは自分の意思をジャルジャンにハッキリと伝えた。これは馬車の中から言おう決めていた事だ。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

ヒロインの、はずですが?
おりのめぐむ
恋愛
★ぼちぼち更新中★
<あらすじ>
元平民出身のエセ貴族として入学式に参加した伯爵令嬢シャルロット・ラぺーシュ。
クリーム色の肩までの髪に伯爵家譲りの淡いピンクの瞳。
美人というよりは可愛らしくほんわかとした空気感と愛らしさを持ったその姿。
ん……見知った自分と違うんですけど? もしかしてわたしはゲームのヒロイン??
<作品について>
もうド定番の設定で使い回されたネタですがラブコメを意識しつつどうにか第1部も終了しました。
♡個人的に10/31はサイト登録4年目に入ります記念♡
そんなこんなで随分と間の空いた第2部が始まります。ただ更新が遅くなるかもしれませんがご了承ください。<(_ _)>

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。


完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる