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ミカラムの命
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ルーカスへ通ずる道に、茶色い岩に囲まれて一際狭くなっている場所があった。人々曰く、『蛇のくびれ』と呼んでいる。
ミカラムはその場所に一人で陣取り、エドワルド王子の精鋭部隊を迎えうつことにした。ここならば、広い場所と違って一度に一人か二人ずつしか相手にしなくて良い。そうやって時間を稼いでいる間にエレナ達は無事ルーカス王国へ逃げのびるであろう。もちろん、ミカラムは十数名の王子の精鋭部隊に一人で勝てるとは思っていない。
命を捨てる覚悟であった。
あのエドワルド王子をあれだけ傷つけてしまったのだ。精鋭部隊に追いつかれれば皆殺しにされてしまうだろう。そうなるよりもわし一人が命を落とせばよい。
愛する妻エレナが無事にあの黒髪の女を売りさばき、長年の夢である国を持つことができればそれでいいと考えていた。
あのエレナのことだ、盗賊どもを上手く従えて素晴らしい国を作ってくれるに違いない。
そこへ、エドワルド王子の精鋭部隊の第一陣が到着した。
鬼の形相をしたミカラムの前に部隊は怯んだ。何しろ相手は命がけで戦おうとしている巨漢である。しかも場所が狭く一度に襲いかかることができない。
先頭の一人がミカラムにかかっていくも簡単に槍を弾き落とされてしまった。
「わはははは。わしのパワーにかなうものなどおるまい」
「なにおー!」
精鋭部隊は代わる代わる戦っていくが一対一でミカラムに敵うものはいなかった。精鋭部隊はミカラムを疲れさせる作戦に切りかえ、次から次へと攻撃を仕掛けミカラムを休ませなかった。
さすがのミカラムも疲れてきたが、長期戦は否めなかった。
このままでは黒髪の女アスカを連れていかれてしまう。
そこへ、エドワルド王子とラウルの第二部隊が到着した。
「何をもたついておる!」隊長のラウルが激を飛ばすと、精鋭部隊はいっそう激しく攻撃を仕掛けた。
「ええい。俺に任せろ!」ラウルがミカラムの前に踊り出た。
「少しは骨のあるやつとみた。我はミカラムである」と太刀を構えた。
「我はこの部隊の隊長ラウルである。覚悟しろ!」
そう言ってラウルは槍をミカラムの喉元に突きつけた。ミカラムはそれを交わして太刀を降った。
ラウルも下がって避ける。
しかし、ラウルは槍の名手である。
二連三連、いや四連の攻撃を仕掛けた。さすがのミカラムも避けきれずに脇腹に槍の先がかすった。
「ふっ。なかなかやりよる。お前は一筋縄ではいかぬようだな」
「ぬかすなー」
そう言ってラウルが槍をつくと、ミカラムは今度は盾で受け流し太刀をラウルの頭をめがけて振った。それをすんでのところで交わすと、ラウルは短剣を抜いてミカラムの胸に向けて突き刺した。ミカラムは体を横に向けて胸をかばった。
グサッ
と音がして短剣がミカラムの左腕に突き刺さった。
「ウオオーー」
すぐさまミカラムは右手でラウルの頭を掴むと岩にたたきつけた。
ゴツッと音がしてラウルはその場に崩れ落ちた。
近くにいた別の隊員がラウルを助けるために槍でミカラムを攻撃する。
ミカラムは下がりながら盾で受けた。
カン!
と音がした。
ラウルもダメージを受けたが、ミカラムも深手を負って左手に力が入らない。
精鋭部隊を前にしてミカラムの命はもはや尽きたと思われた。
その時、
「それ以上の手出しは無用よ」と後方からエレナの声がした。
ミカラムはその場所に一人で陣取り、エドワルド王子の精鋭部隊を迎えうつことにした。ここならば、広い場所と違って一度に一人か二人ずつしか相手にしなくて良い。そうやって時間を稼いでいる間にエレナ達は無事ルーカス王国へ逃げのびるであろう。もちろん、ミカラムは十数名の王子の精鋭部隊に一人で勝てるとは思っていない。
命を捨てる覚悟であった。
あのエドワルド王子をあれだけ傷つけてしまったのだ。精鋭部隊に追いつかれれば皆殺しにされてしまうだろう。そうなるよりもわし一人が命を落とせばよい。
愛する妻エレナが無事にあの黒髪の女を売りさばき、長年の夢である国を持つことができればそれでいいと考えていた。
あのエレナのことだ、盗賊どもを上手く従えて素晴らしい国を作ってくれるに違いない。
そこへ、エドワルド王子の精鋭部隊の第一陣が到着した。
鬼の形相をしたミカラムの前に部隊は怯んだ。何しろ相手は命がけで戦おうとしている巨漢である。しかも場所が狭く一度に襲いかかることができない。
先頭の一人がミカラムにかかっていくも簡単に槍を弾き落とされてしまった。
「わはははは。わしのパワーにかなうものなどおるまい」
「なにおー!」
精鋭部隊は代わる代わる戦っていくが一対一でミカラムに敵うものはいなかった。精鋭部隊はミカラムを疲れさせる作戦に切りかえ、次から次へと攻撃を仕掛けミカラムを休ませなかった。
さすがのミカラムも疲れてきたが、長期戦は否めなかった。
このままでは黒髪の女アスカを連れていかれてしまう。
そこへ、エドワルド王子とラウルの第二部隊が到着した。
「何をもたついておる!」隊長のラウルが激を飛ばすと、精鋭部隊はいっそう激しく攻撃を仕掛けた。
「ええい。俺に任せろ!」ラウルがミカラムの前に踊り出た。
「少しは骨のあるやつとみた。我はミカラムである」と太刀を構えた。
「我はこの部隊の隊長ラウルである。覚悟しろ!」
そう言ってラウルは槍をミカラムの喉元に突きつけた。ミカラムはそれを交わして太刀を降った。
ラウルも下がって避ける。
しかし、ラウルは槍の名手である。
二連三連、いや四連の攻撃を仕掛けた。さすがのミカラムも避けきれずに脇腹に槍の先がかすった。
「ふっ。なかなかやりよる。お前は一筋縄ではいかぬようだな」
「ぬかすなー」
そう言ってラウルが槍をつくと、ミカラムは今度は盾で受け流し太刀をラウルの頭をめがけて振った。それをすんでのところで交わすと、ラウルは短剣を抜いてミカラムの胸に向けて突き刺した。ミカラムは体を横に向けて胸をかばった。
グサッ
と音がして短剣がミカラムの左腕に突き刺さった。
「ウオオーー」
すぐさまミカラムは右手でラウルの頭を掴むと岩にたたきつけた。
ゴツッと音がしてラウルはその場に崩れ落ちた。
近くにいた別の隊員がラウルを助けるために槍でミカラムを攻撃する。
ミカラムは下がりながら盾で受けた。
カン!
と音がした。
ラウルもダメージを受けたが、ミカラムも深手を負って左手に力が入らない。
精鋭部隊を前にしてミカラムの命はもはや尽きたと思われた。
その時、
「それ以上の手出しは無用よ」と後方からエレナの声がした。
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