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エドワルド王子vsミカラム
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エドワルド王子は金髪をなびかせながらホワイトブライアンを走らせた。幸い山へ通ずる道は一本しかない。
恐らく盗賊はこの山道を通ってエスタ王国を出て、隣国のルーカス王国へ抜けるはずだ。
王子はたずなをさばいてビュンビュン加速した。周りの田園風景が物凄い勢いで過ぎ去っていく。
そして、ついに盗賊のしんがりにたどり着いた。
「木っ端どもじゃまだー」
エドワルド王子が叫ぶと、盗賊どもは驚いて一瞬怯んだ。
王子はその中に割って入り、先頭を進む頭領を目指す。
「頭領に近づけるなー」と盗賊どもはエドワルド王子の前に次々と現れて行く手を邪魔した。しかし、王子は見事な手網さばきで盗賊どもを交わしてぐんぐんと前に押し進む。
そもそも、一流の血統を引き継いでいるホワイトブライアンの前には盗賊どもの馬はロバのようなものである。スピードもパワーも身のこなしも格段に差があった。あっという間に前方にいる盗賊の頭領の姿をとらえた。
馬に乗せられて連行されているアスカは後方が騒がしい事に気づいて目をやった。
すると白馬に乗った王子が右に左に盗賊どもを交わしながら駆け寄って来るでは無いか。
しかも、物凄いスピードで!
近づく度にその姿形がハッキリしてくる。
よく鍛えられた腕で巧みに白馬を操り、全身でしなやかにバランスをとっている。
動く度にサラサラとした金髪がなびく。その下には凛々しい眉毛、透き通った青い瞳、すっとした鼻、ニヤリと余裕たっぷりに微笑む赤い唇があった。
もしかして、もしかしての展開?
王子様がわたしを救出してくれるの?
アスカは期待にドキドキした。
エドワルド王子は盗賊の先頭に躍り出て、たずなを引き、馬を止めると叫んだ。
「我はこの国の王子、エドワルドだ。お前たちは何者だ。その美しい黒髪の女をどうするつもりだ!」
「我はミカラム・グンスイ。この女は我らの奴隷だ。たとえ王子と言えども好きにはさせないぞ」
「おのれがかの悪名高き盗賊のミカラム・グンスイか。このエスタ王国で好き勝手は許さん。このエドワルドが成敗してくれるわ」
「なにおー! こしゃくな」
エドワルド王子は懐から月の時計を取り出した。
「そこの美しい黒髪の女! 一つ訪ねたいことがある。この時計はそなたのものか?」
「は、はい」
「間違いないな」
アスカはゆっくりと頷く。
「そなたの名前はなんと申す」
「アスカです」
「アスカ殿。お会いしたかった。この王子がそなたをお連れする。良いか?」
「はい! もちろんです」
なんという事?
王子が月の時計を持っているではないか。
しかも、助け出してくれるなんて!
と、そこにミカラムが割ってはいる。
「勝手なことをぬかすなー。俺達に勝てると思っているのかー」
「いざ勝負!」王子は叫びながらホワイトブライアンから降り立った。
ミカラムも馬から降りてエドワルド王子と対面した。
エドワルド王子はよほど剣の腕に自信があるのか、こんな巨漢を前にしてもニヤリと微笑んでいる。
ミカラムが大きな太刀を王子の頭上に振り上げて勢いよく振り下ろした。
エドワルド王子は難なく交わすと、サーベルをミカラムの腹をめがけて突き刺した。
ミカラムは左手に持った盾で防御する。
カンと乾いた音がした。
エドワルド王子は次々とサーベルを繰り出した。
カンカンカンカン
エドワルド王子が踊るようにサーベルで攻撃をする度に音が響いた。
時折、ミカラムが太刀を振る。
ブーン
図太い腕で豪快に振られる太刀に少しでも当たれば致命傷を負うであろう。
真剣勝負の息詰まる攻防が展開された。
いつの間にか二十人強の盗賊たちが二人を取り囲んでミカラムに声援を送っている。
もちろんアスカは自分の為に命をかけて戦う王子を応援している。自然と体に力が入り、手に汗を握りしめていた。
徐々にエドワルド王子の形勢が有利になってきた。ミカラムは大汗をかいて息が荒くなっている。どうやらスタミナが切れてきたらしい。それに比べてエドワルド王子はまだまだ涼しい顔をしている。
この時、アスカはエドワルド王子の勝利を必死で祈った。どうかこの盗賊共からわたしを助け出してください。
その効果か、ミカラムの目に汗が入り一瞬の隙が出来た。その瞬間、エドワルド王子はミカラムの背後に周り、サーベルを振り上げた。
アスカも思わず「いけー」と声を張り上げた。
決着がついたかと思われたその時、
ガツンと音がして王子がその場にうずくまった。
恐らく盗賊はこの山道を通ってエスタ王国を出て、隣国のルーカス王国へ抜けるはずだ。
王子はたずなをさばいてビュンビュン加速した。周りの田園風景が物凄い勢いで過ぎ去っていく。
そして、ついに盗賊のしんがりにたどり着いた。
「木っ端どもじゃまだー」
エドワルド王子が叫ぶと、盗賊どもは驚いて一瞬怯んだ。
王子はその中に割って入り、先頭を進む頭領を目指す。
「頭領に近づけるなー」と盗賊どもはエドワルド王子の前に次々と現れて行く手を邪魔した。しかし、王子は見事な手網さばきで盗賊どもを交わしてぐんぐんと前に押し進む。
そもそも、一流の血統を引き継いでいるホワイトブライアンの前には盗賊どもの馬はロバのようなものである。スピードもパワーも身のこなしも格段に差があった。あっという間に前方にいる盗賊の頭領の姿をとらえた。
馬に乗せられて連行されているアスカは後方が騒がしい事に気づいて目をやった。
すると白馬に乗った王子が右に左に盗賊どもを交わしながら駆け寄って来るでは無いか。
しかも、物凄いスピードで!
近づく度にその姿形がハッキリしてくる。
よく鍛えられた腕で巧みに白馬を操り、全身でしなやかにバランスをとっている。
動く度にサラサラとした金髪がなびく。その下には凛々しい眉毛、透き通った青い瞳、すっとした鼻、ニヤリと余裕たっぷりに微笑む赤い唇があった。
もしかして、もしかしての展開?
王子様がわたしを救出してくれるの?
アスカは期待にドキドキした。
エドワルド王子は盗賊の先頭に躍り出て、たずなを引き、馬を止めると叫んだ。
「我はこの国の王子、エドワルドだ。お前たちは何者だ。その美しい黒髪の女をどうするつもりだ!」
「我はミカラム・グンスイ。この女は我らの奴隷だ。たとえ王子と言えども好きにはさせないぞ」
「おのれがかの悪名高き盗賊のミカラム・グンスイか。このエスタ王国で好き勝手は許さん。このエドワルドが成敗してくれるわ」
「なにおー! こしゃくな」
エドワルド王子は懐から月の時計を取り出した。
「そこの美しい黒髪の女! 一つ訪ねたいことがある。この時計はそなたのものか?」
「は、はい」
「間違いないな」
アスカはゆっくりと頷く。
「そなたの名前はなんと申す」
「アスカです」
「アスカ殿。お会いしたかった。この王子がそなたをお連れする。良いか?」
「はい! もちろんです」
なんという事?
王子が月の時計を持っているではないか。
しかも、助け出してくれるなんて!
と、そこにミカラムが割ってはいる。
「勝手なことをぬかすなー。俺達に勝てると思っているのかー」
「いざ勝負!」王子は叫びながらホワイトブライアンから降り立った。
ミカラムも馬から降りてエドワルド王子と対面した。
エドワルド王子はよほど剣の腕に自信があるのか、こんな巨漢を前にしてもニヤリと微笑んでいる。
ミカラムが大きな太刀を王子の頭上に振り上げて勢いよく振り下ろした。
エドワルド王子は難なく交わすと、サーベルをミカラムの腹をめがけて突き刺した。
ミカラムは左手に持った盾で防御する。
カンと乾いた音がした。
エドワルド王子は次々とサーベルを繰り出した。
カンカンカンカン
エドワルド王子が踊るようにサーベルで攻撃をする度に音が響いた。
時折、ミカラムが太刀を振る。
ブーン
図太い腕で豪快に振られる太刀に少しでも当たれば致命傷を負うであろう。
真剣勝負の息詰まる攻防が展開された。
いつの間にか二十人強の盗賊たちが二人を取り囲んでミカラムに声援を送っている。
もちろんアスカは自分の為に命をかけて戦う王子を応援している。自然と体に力が入り、手に汗を握りしめていた。
徐々にエドワルド王子の形勢が有利になってきた。ミカラムは大汗をかいて息が荒くなっている。どうやらスタミナが切れてきたらしい。それに比べてエドワルド王子はまだまだ涼しい顔をしている。
この時、アスカはエドワルド王子の勝利を必死で祈った。どうかこの盗賊共からわたしを助け出してください。
その効果か、ミカラムの目に汗が入り一瞬の隙が出来た。その瞬間、エドワルド王子はミカラムの背後に周り、サーベルを振り上げた。
アスカも思わず「いけー」と声を張り上げた。
決着がついたかと思われたその時、
ガツンと音がして王子がその場にうずくまった。
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