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ミカラム・グンスイ
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盗賊の三人はしばらく馬を走らせて移動すると、アスカを馬から引きずり下ろして、大きな洞窟の中へ連れていった。そこには野蛮人のような盗賊達が二十人程いた。
アスカはまるで公園の猿山に閉じ込められてしまったように感じた。
何をされるか分からない。
アスカの目には恐怖の涙が溜まっていた。
そこへ、一際目立つ巨漢が現れた。まるで相撲取りのような体型。両肩に鹿の毛皮をぶら下げている。
「ミカラム頭領! これが先程捕らえた獲物です」
「ほう。中々の上物だな。褒美をやろう」と言って金貨を一枚放り投げた。
金貨はチャリーンと音を立て地面の上に転がった。アスカを捕らえた男達がその金貨を手にしてはしゃいでいる。
「ところでコイツはどうしやしょ」この盗賊の参謀のような男が尋ねる。
ミカラム頭領はアスカに近寄り、膝をつくとアスカの顎に手を当て
「こんなに美しい黒髪の女は初めてみた。わしの妻にしたい」
そう口にした時、
「あなた! 何言ってんの!」と頭領の背後から怒声が聞こえてきた。頭領が振り返ると、そこには腕組をして眉を吊り上げた女が仁王立ちになっていた。
「ところが、見ての通りわしには既にエレナという美しい女房がいる。こいつは奴隷として売りに出そう」と残念そうにつぶやいた。
どうやら盗賊の頭領ミカラムは妻エレナの尻に敷かれているようだ。
エレナはアスカに近づくと見下ろしながら言った。
「うふふふ。こいつは高く売れそうだねぇ。黒髪は珍しいからね。二十万ゴールドはくだらないわ」
「に、二十万ゴールド? そんなにするのか?」
「こんな美しい黒髪の女は王族共が放っておかないわ。競売にかければもっと高く売れるだろうよ」
「そ、そうか。二十万もあれば当分俺達が暮らすのに困らねえな」
「それどころか上手くすれば売った金で土地を買って国が持てるわ」
「そ、そうか。俺達の国か。国を持つのは長年の夢だもんな」
「国を持てば、こんな盗賊暮しなんておさらばよ」
「よし! おめえら、この女を絶対逃がさねえように牢屋に閉じ込めて見張ってろ。ただし、手荒な真似はするんじゃねえぞ! 大事な商品だからな。俺達の国を持つための資金源だ。高値で売れたらみんなに美味いもん食わせてやるからな」
「おう!」と盗賊たちは一致団結している。
アスカはその光景を見て混乱していた。わたしが奴隷? 競売にかけられる? 人身売買? そんなものが今の世の中許されるの?
しかし、目の前の野蛮な人達に何を言っても通じそうにはなかった。中東とかに取材に出かけてテロリストに捕まって身代金を要求されてる人と同じ立場だ。価値がないとなれば殺されるかもしれない。
ひえ~。なんという状況だろう。全身から冷や汗が溢れ出た。
とにかく今は何とかして生き延びるしかない。幸い今のわたしは大事な商品という立場だ。こいつらも下手に手出しはしてこないだろう。じっとこらえよう。うまく、王族に落札されたら事情を説明して日本に帰してもらえるかもしれない。
アスカが立たされ洞窟の奥の方に連れていかれる時、エレナの目に時計が写った。
「ちょっと待ちなさい。その腕に着けているものは何?」
アスカはギクリとした。大事な腕時計に目をつけられてしまったのだ。
エレナはアスカの腕から時計を外して奪い取って尋ねた。
「なかなか良さそうなもの持ってるじゃない。一体あなたは何者?」
「……」アスカはなんとも答えようがなかった。わたしは日本人で、婚約破棄されて、傷心旅行に出て、腕時計を衝動買いしたら森の中にいたなんて答えてもここではなんの意味も持たない。
「答えないつもりね。まあいいわ。遠い遠い東の方の国の血筋だということは分かるんだけど、こんな高価な物を身につけているとは相当な身分ね。これは多少やばいヤマを踏んでるかもしれないわね。さっさと売り飛ばすに限るわ」そう言って踵を返すと腕時計を光にかざして眺めながら去っていった。
「わ、わたしの腕時計。返してよ!」アスカは心の中で叫んだがなす術がなかった。
アスカはまるで公園の猿山に閉じ込められてしまったように感じた。
何をされるか分からない。
アスカの目には恐怖の涙が溜まっていた。
そこへ、一際目立つ巨漢が現れた。まるで相撲取りのような体型。両肩に鹿の毛皮をぶら下げている。
「ミカラム頭領! これが先程捕らえた獲物です」
「ほう。中々の上物だな。褒美をやろう」と言って金貨を一枚放り投げた。
金貨はチャリーンと音を立て地面の上に転がった。アスカを捕らえた男達がその金貨を手にしてはしゃいでいる。
「ところでコイツはどうしやしょ」この盗賊の参謀のような男が尋ねる。
ミカラム頭領はアスカに近寄り、膝をつくとアスカの顎に手を当て
「こんなに美しい黒髪の女は初めてみた。わしの妻にしたい」
そう口にした時、
「あなた! 何言ってんの!」と頭領の背後から怒声が聞こえてきた。頭領が振り返ると、そこには腕組をして眉を吊り上げた女が仁王立ちになっていた。
「ところが、見ての通りわしには既にエレナという美しい女房がいる。こいつは奴隷として売りに出そう」と残念そうにつぶやいた。
どうやら盗賊の頭領ミカラムは妻エレナの尻に敷かれているようだ。
エレナはアスカに近づくと見下ろしながら言った。
「うふふふ。こいつは高く売れそうだねぇ。黒髪は珍しいからね。二十万ゴールドはくだらないわ」
「に、二十万ゴールド? そんなにするのか?」
「こんな美しい黒髪の女は王族共が放っておかないわ。競売にかければもっと高く売れるだろうよ」
「そ、そうか。二十万もあれば当分俺達が暮らすのに困らねえな」
「それどころか上手くすれば売った金で土地を買って国が持てるわ」
「そ、そうか。俺達の国か。国を持つのは長年の夢だもんな」
「国を持てば、こんな盗賊暮しなんておさらばよ」
「よし! おめえら、この女を絶対逃がさねえように牢屋に閉じ込めて見張ってろ。ただし、手荒な真似はするんじゃねえぞ! 大事な商品だからな。俺達の国を持つための資金源だ。高値で売れたらみんなに美味いもん食わせてやるからな」
「おう!」と盗賊たちは一致団結している。
アスカはその光景を見て混乱していた。わたしが奴隷? 競売にかけられる? 人身売買? そんなものが今の世の中許されるの?
しかし、目の前の野蛮な人達に何を言っても通じそうにはなかった。中東とかに取材に出かけてテロリストに捕まって身代金を要求されてる人と同じ立場だ。価値がないとなれば殺されるかもしれない。
ひえ~。なんという状況だろう。全身から冷や汗が溢れ出た。
とにかく今は何とかして生き延びるしかない。幸い今のわたしは大事な商品という立場だ。こいつらも下手に手出しはしてこないだろう。じっとこらえよう。うまく、王族に落札されたら事情を説明して日本に帰してもらえるかもしれない。
アスカが立たされ洞窟の奥の方に連れていかれる時、エレナの目に時計が写った。
「ちょっと待ちなさい。その腕に着けているものは何?」
アスカはギクリとした。大事な腕時計に目をつけられてしまったのだ。
エレナはアスカの腕から時計を外して奪い取って尋ねた。
「なかなか良さそうなもの持ってるじゃない。一体あなたは何者?」
「……」アスカはなんとも答えようがなかった。わたしは日本人で、婚約破棄されて、傷心旅行に出て、腕時計を衝動買いしたら森の中にいたなんて答えてもここではなんの意味も持たない。
「答えないつもりね。まあいいわ。遠い遠い東の方の国の血筋だということは分かるんだけど、こんな高価な物を身につけているとは相当な身分ね。これは多少やばいヤマを踏んでるかもしれないわね。さっさと売り飛ばすに限るわ」そう言って踵を返すと腕時計を光にかざして眺めながら去っていった。
「わ、わたしの腕時計。返してよ!」アスカは心の中で叫んだがなす術がなかった。
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