婚約破棄されて衝動買いしたら異世界にて王子に求愛された

MJ

文字の大きさ
上 下
6 / 71

見知らぬ森で目覚める

しおりを挟む
 アスカが目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中だった。

 辺りには無数の針葉樹林がそびえ立っており、見上げると葉の間から柔らかな光が注いできている。

地面には所々草が生え、花が咲いている。

日本では見慣れない植物達だった。

アスカは不思議に思い、立ち上がった。
辺りを散策する。

もしかしてわたしは死んだ?
ここが天国なのだろうか。

混乱する頭を振り、腕時計の事を思い出して左手を確認する。

月の形をした腕時計はそのままだった。

そして、時を刻んでいる。

直ったのだわ!

思わずガッツポーズをする。もしかしたらあの黒人が修理した時に直っていたのかもしれない。

嬉しい!そしてありがとう。

しかし、ここはどこ? 夢にしてはリアルすぎる。

辺りを見回すとあの黒猫がいた。

「隠れて! 何か来るよ」

「あなた喋れるの?」

「僕はその腕時計に付いている精霊なんだ。名前はペルーラ。それよりなにか危険なものが近づいてくる。隠れて!」

「え!精霊?」

「はやく!」

耳を済ませると確かにざわついた音が近づいてくる。

アスカは急いで近くの大木の影に身を寄せた。



しばらくすると、動物の皮をきた男達が三人馬に乗って現れた。三人とも獣のような鋭い目をしている。

「この辺りで女の匂いがする。デヘヘへへ」
「ほんとだ。この辺りだぜ」
「探そうぜ」

クンクンとアスカの匂いを嗅ぎつけた男どもが近づいてくる。

「ダメだ。みつかる。逃げよう!」と走り出すペルーラにアスカはついて行く。

しかし、既に時遅く、見つかってしまった。

「いたぞ!」と言う掛け声とともに三人の男達に取り囲まれてしまった。

「なかなかいい女じゃねえか」

「ああ、とびきりの上物だぜ」

「しかし、変な服を着ているな」と紺色のスラックスに白系のシャツを着ているアスカを見て言う。

「まるで異世界ファンタジーだぜ」

は? こいつら何言ってんの?
獣の皮を着てるお前らにそんな事言われたくないわ。
ん? そういえば、不思議なことに言葉が理解できてる。やっぱりこれは夢の中?

 と、馬から降りた男達が獣のように俊敏な動きでアスカに襲いかかってきた。

そのうちの一人に腕を掴まれた。
痛い!
やっぱりこれは夢じゃないわ。
獣臭いし。

アスカはとっさに少林寺拳法の技で掴まれた手を振りほどくと、相手の顎を正拳で付いた。正拳はヒットしたが男はびくともしない。

殴られた男はニヤリとして
「可愛いね~」と言いながら地面に唾を吐いた。

アスカは背面にいた男に抱きつかれ、身動きが取れなくなった。ものすごい力だ。

そして臭い。

嗅いだことの無いような強烈な獣臭さとアンモニア臭が鼻をつく。

「やめて!」足をバタバタさせるが三人の屈強な男どもに押さえつけられてはどうにもならない。しかも棍棒のような武器を持っている。

「大人しくしろよ。お嬢ちゃん」

男どもはアスカの手足をロープで縛って猿ぐつわをはめると馬の背中に乗せて走らせた。
アスカは状況が飲み込めず、ただただ怖くて震えていた。











しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...