超変態なジャン=ジャック･ルソーの思想がフランス革命を引き起こすまで

ジャン=ジャック･ルソー

ルソーの過ち

ルソーはテレーズに教育を試みた。

ところが、テレーズは全くと言っていいほど学問の才能がなかったのだ。

時計の読み方を覚えさせるのに何日もかかり、しかも未だに正確には時計を読むことが出来ない。

12月を覚えさせるのにも一苦労だった。

数学は簡単な計算もままならない。

書くことは少しはできたが、読むことは全くダメだった。

しかし、ルソーはテレーズを軽蔑することは無かった。

ルソーは、学問ができるとか出来ないとかではなく、その人の本質を見ていた。

テレーズの純粋な愛情や、その仕草や、無欲さ、そして何にも影響されない判断力を愛した。

事実、ルソーは何もかも上手くいかずに落ち込んでいる時、どうしようもない時、度々テレーズに助けられることがあった。

しかし、テレーズの母親はそうではなかった。
欲深く、学校にも通わせなかったテレーズから様々なものを搾取した。

ルソーはテレーズだけではなく、テレーズの両親や兄弟までも養わなくてはならなくなった。

この頃のルソーは、父親が亡くなったため、母親の遺産を受け取ることが出来たりして、少しだけ金銭的には自立出来ていた。


テレーズの家族を養うためにルソーはお金が足りなくて、オペラなどを書いて稼ごうとした。

しかし、人々の嫉妬心や差別の餌食となってなかなか上手くはことが運ばなかった。

そんな時、テレーズが妊娠した。

ルソーは子供を養うだけの財力がなかったため、安易な考えで子供を孤児院に入れることにした。
これにはテレーズの母親も賛成していたため、嫌がるテレーズを説得するのを協力してくれた。

テレーズは産婆の元に行き、無事出産した。そして、子供はそのまま孤児院に引き取られて行った。

結局、ルソーは5人の子供を孤児院に入れた。

この事はルソーをとてつもなく苦しめてしまう出来事であった。

しかし、この時代、フランスでは生まれた子供を孤児院に入れることはよくある事だった。

例えば、1772年にはフランスでは18713人の子供が生まれたが7676人の子供が孤児院に入れられていた。

それほど貧しかったし、子供の価値が低かった。子供に義務教育もなされていなかった時代だ。

あれほど、社会の理不尽なことに対して怒りを示し反抗していたルソーが、この時何も疑問を持たずに、自らの大事な子供を孤児院に入れてしまったことは、悔いても悔いきれないことであった。