超変態なジャン=ジャック・ルソーの思想がフランス革命を引き起こすまで

MJ

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ジャン=ジャック・ルソー

別れそして、ヴァランス夫人との再開

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ルソーとバークル少年との旅は六週間あまり経っていた。気まぐれな貧乏旅はヴァランス夫人の住むアヌシーに近づくにつれてルソーを不安にした。

急にバークル少年が厄介者に思えてきたのだ。

この旅のルソーの最終目的はヴァランス夫人の下へ帰る事だった。

何者にもならなかった貧乏な自分だけでもヴァランス夫人に厄介になる事が叶うかどうか不安なのだ。
そこへ、バークル少年も連れていったら果たしてヴァランス夫人にどれだけ迷惑がかかることか計り知れない。

何とかバークル少年と別れることは出来ないものだろうか。それとも彼も一緒にヴァランス夫人の下で厄介になる交渉をするべきなのか。

ルソーは悩んだ。


しかし、それは杞憂に終わった。

アヌシーに到着すると、バークル少年は立ち止まった。

「さあ、きみの土地へきたよ」

そう言って、ルソーのことを抱きしめた。

ルソーはわけも分からぬまま抱擁をしていた。バークル少年は抱擁を終えると、踵を返し、

「さよなら」と言って立ち去った。

ルソーは意外な別れに驚いて、その後ろ姿を見ながらほっとした。

ヴァランス夫人の下へ一人だけで向かえるのだ。それまで心を悩ましてきた厄介者がいなくなってくれた。

それと同時に寂しさが込み上げてきた。

脳の中に黒い幕が降りてきて、悲しみに包まれた。

涙が溢れ出てきた。

バークル少年はルソーの事を気遣って自ら去ってくれている。彼からの本当の愛情を感じた。彼はバカではなかった。それだからこそ、ルソーは何者にも変え難い友情を彼に感じていたのだ。申し訳ない気持ちが込み上げてきた。

しかし、バークル少年を引き止めることは出来なかった。ルソーにとってヴァランス夫人との関係が第一優先なのだ。ヴァランス夫人の傍にいるためにはどんな障害をも取り除いておかなければならない。
それほど、ヴァランス夫人はルソーにとって特別だった。

ヴァランス夫人の家に近づくにつれてルソーは不安になった。
こんな乞食のような放浪者の自分を果たしてヴァランス夫人はどう扱うだろうか。
もちろん、ヴァランス夫人には手紙を書いてこれまでの事は報告してある。

ルソーは屋敷に向かう途中心臓が激しく動機を打ち、何も見えないほど混乱していた。

何度も立ち止まって呼吸を整えた。

近々、飢え死にしてしまうかのような貧乏な状況で果たして受け入れられるのだろうか。自分は一体、どう思われてしまうのだろうか不安でたまらない。たとえ、どんなに飢えようが何とか生きて行く自信はある。その点での不安はない。不安なのはヴァランス夫人からどう扱われるかだ。重い気持ちが心を支配していた。

しかし、ヴァランス夫人の姿を見て、声を聞いた瞬間、気持ちが落ち着いた。どうしようもない嬉しさが込み上げてきた。

あまりにも夢中になってその手に肩を押し付けた。
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