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ジャン=ジャック・ルソー
少年の欲情
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ルソーはバジール婦人の膝元で窮屈な姿勢で座っていた。見上げることも出来ず、体に触れることも出来なかった。
欲情していなかった訳では無い。
欲情はしていた。
ただ、怖くて体に触れることが出来なかった。抱きしめたい気持ちを伝えることも、膝に触れることも出来なかった。
少年らしい恐れから、ただただその場にいるだけだった。
バジール婦人は、ルソーに指図した意図がとてつもなく恐れ多い事だったと気づいたのか、酷く狼狽した。
緊張がみなぎっていた。
バジール婦人は、ルソーよりも5,6歳年齢が上だったので、ルソーを導くことも出来たはずだ。
しかし、それはしなかった。
つつましやかな、バジール婦人は夫を恐れてか、カトリックの教えに背くことが出来なかったのか、とうとうそれ以上の行動を起こさなかった。
邪魔が入らなければ、ルソーは何かしら行動に出ていたかもしれない。
しかし、番頭が呼んだことで、2人は我に返った。
「立ちなさい。ロジナが来ます」
ルソーはあわてて立った。
その時、バジール婦人の差し出す手に接吻をした。
一度だけでなく、二度した。
二度目の時、バジール婦人が手の甲を押し付けてくるのを感じた。
それ以上そういった機会を得ることは無かった。バジール婦人にとってはそれが初めての不貞であった。
バジール婦人はルソーの事を気にかけ、家に仕えることが出来るように、番頭に帳簿の付け方を教えるように言いつけた。
しかし、番頭は自分の仕事が奪われると思ったのか、意地悪く仕事を教えなかった。
だが、ある時、急にルソーに馴れ馴れしくしてきた。
また、バジール婦人もルソーに「あなたはここにいつまでもいるような子ではないわ。あなたみたいな賢い子はもっとちゃんとした仕事につかなくては」と言うようになった。
バジール婦人はその賢明さから、そろそろルソーを遠ざけなければ行けないと悟っていたに違いない。
木曜日にルソーは婦人から晩餐会に呼ばれた。
そこには、婦人の知り合いが出席していて、偉い坊さんを紹介された。
その坊さんはバジール婦人に敬意を示していて、ルソーに優しくした。相談にのるから今度ぜひ訪ねてこいと言った。
ルソーは小さいテーブルで番頭と一緒に食事をすることになった。
そうしていると、馬車が乗り付け、真っ赤な服の男が入ってきた。
バジール氏だった。
バジール氏は急に現れてみんなを驚かせた。
バジール婦人は夫の首に抱きつき抱擁した。
バジール氏はそれには何も反応しなかった。
「あの若いのは誰だね」とバジール氏はルソーを指さして尋ねた。
バジール婦人はルソーの身の上を説明した。
バジール氏は明らかに不機嫌な態度をとった。
坊さんがバジール婦人の善行を大目に見るようにと庇ったが、バジール氏はそれに反論した。
ルソーは番頭が何かしらバジール氏に告げ口したのだと悟った。
皆が食卓から離れると、番頭が勝ち誇った態度でルソーの元にやってきて、「これから直ぐに家を出ていくように。それと二度と近づいてはならん」と旦那からの命令を伝えてきた。
ルソーは一言も口を聞かずに出ていった。
欲情していなかった訳では無い。
欲情はしていた。
ただ、怖くて体に触れることが出来なかった。抱きしめたい気持ちを伝えることも、膝に触れることも出来なかった。
少年らしい恐れから、ただただその場にいるだけだった。
バジール婦人は、ルソーに指図した意図がとてつもなく恐れ多い事だったと気づいたのか、酷く狼狽した。
緊張がみなぎっていた。
バジール婦人は、ルソーよりも5,6歳年齢が上だったので、ルソーを導くことも出来たはずだ。
しかし、それはしなかった。
つつましやかな、バジール婦人は夫を恐れてか、カトリックの教えに背くことが出来なかったのか、とうとうそれ以上の行動を起こさなかった。
邪魔が入らなければ、ルソーは何かしら行動に出ていたかもしれない。
しかし、番頭が呼んだことで、2人は我に返った。
「立ちなさい。ロジナが来ます」
ルソーはあわてて立った。
その時、バジール婦人の差し出す手に接吻をした。
一度だけでなく、二度した。
二度目の時、バジール婦人が手の甲を押し付けてくるのを感じた。
それ以上そういった機会を得ることは無かった。バジール婦人にとってはそれが初めての不貞であった。
バジール婦人はルソーの事を気にかけ、家に仕えることが出来るように、番頭に帳簿の付け方を教えるように言いつけた。
しかし、番頭は自分の仕事が奪われると思ったのか、意地悪く仕事を教えなかった。
だが、ある時、急にルソーに馴れ馴れしくしてきた。
また、バジール婦人もルソーに「あなたはここにいつまでもいるような子ではないわ。あなたみたいな賢い子はもっとちゃんとした仕事につかなくては」と言うようになった。
バジール婦人はその賢明さから、そろそろルソーを遠ざけなければ行けないと悟っていたに違いない。
木曜日にルソーは婦人から晩餐会に呼ばれた。
そこには、婦人の知り合いが出席していて、偉い坊さんを紹介された。
その坊さんはバジール婦人に敬意を示していて、ルソーに優しくした。相談にのるから今度ぜひ訪ねてこいと言った。
ルソーは小さいテーブルで番頭と一緒に食事をすることになった。
そうしていると、馬車が乗り付け、真っ赤な服の男が入ってきた。
バジール氏だった。
バジール氏は急に現れてみんなを驚かせた。
バジール婦人は夫の首に抱きつき抱擁した。
バジール氏はそれには何も反応しなかった。
「あの若いのは誰だね」とバジール氏はルソーを指さして尋ねた。
バジール婦人はルソーの身の上を説明した。
バジール氏は明らかに不機嫌な態度をとった。
坊さんがバジール婦人の善行を大目に見るようにと庇ったが、バジール氏はそれに反論した。
ルソーは番頭が何かしらバジール氏に告げ口したのだと悟った。
皆が食卓から離れると、番頭が勝ち誇った態度でルソーの元にやってきて、「これから直ぐに家を出ていくように。それと二度と近づいてはならん」と旦那からの命令を伝えてきた。
ルソーは一言も口を聞かずに出ていった。
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