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第7章 ハリスナ国
3.出動
しおりを挟む「ハリスナ国王救出を最大目標とする。最後の王だ、慎重にお守りするのだ!」
「はっ!」
張り詰めた空気の中、シーレッド本部の城門が開かれた。朝の寒い時間、革のジャケット同士が擦れ、車に揺られ、窓の外のまどろみを見る。
「……フラッグ…お前が…みんなを守るんだ」
その言葉に反応するように、青い鉱石が光った。ただの幻覚だったのかもしれない、その光に、確かに自分の意思があることを確認し、遠くに見える白色の国に目を細めた。
*
「え~面倒っすよぉ~」
金髪の少年は、木製のその机に両足を乗せ、気怠げにそう言った。
「行儀が悪いんじゃないのか?フェル?」
「だってさ~さっき任務から帰ったばっかだっつ~のに、また任務っすかぁ~?おれ、そろそろ限界っすよぉ~」
「アクからの命令だ、俺達が従わないでどうする」
「……てか、ボスはいつ会議に参加するんすかぁ~?おれ、そろそろボスの顔忘れちゃいそうなんすけどぉ~」
「文句言うなガキ」
プロトは、フェルの頭に金色の囲いを纏うコートを被せ、その上からわしゃわしゃとフェルの頭を鷲掴みにした。
「うわっ痛ッ」
「分かったら、さっさと行動しろ、向こうもそろそろハリスナに到着するころだろ」
「…へえ~い」
フェルは、重い体を起こし、頭のコートを無造作に外し、片腕を通す。髪が摩擦で擦れふわりと浮いていることに気づき、プロトにバレぬように手で押さえつける。いろんなことにウンザリし、ジジイのようなうめき声をあげながら本格的に動き出した。
ふと通り過ぎた鏡の前で、横目に立ち止まり、髪を整えようと顔を寄せる。鏡が顔を近づけるごとに白く曇り、視界が悪くなる。フェルは袖で鏡を拭い、あることに気づいた。
「……なぁ、プロト。そういや、ノーベ…帰ってきたんだよな?」
「あぁ、そうだが?」
プロトは、眼鏡を拭いながら、素っ気なく答える。
「ならさ……なんで…ノーベの銀斧が。ここにあるんだ?」
「ノーベの…?」
鏡の背後に映った、銀の光沢を四方の光で輝かせる、美しい斧。武器を装備しない状態での外出など決してあり得ないことだ。
プロトは、一瞬目を細め、フェルの後ろ姿を一瞥する。不安や恐怖を感じる前兆のような、そんな背中に、プロトは乾いた笑顔を作った。
「ノーベなら、確か、偵察に行くとかいうローレンに連れて行かれてたな。忘れた…というのが妥当な説だな」
「……忘れるのか……ノーベが…」
「……あぁ」
「……やっぱ、そういうことってあるんすよね人生…」
あぁ、こいつが馬鹿で助かった。
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