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第3章 ファーストライブ!
ライブ前日
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ライブまで一週間を切り、練習もダンスの細かいタイミングのずれを直すなど本番を意識したものとなった。
そんなある日、紗夜香が両手にいっぱいの手提げ袋を持って部室にやってきた。
「みんな、衣装ができたわよ」
「紗夜香先輩お疲れ様です」
「わー、さっそく着てみてもいいですか?」
「ええ、サイズが合っていなかったら急いで直すから」
乗り気の佑香や美空に対し、玲が恥ずかしそうにつぶやく。
「えっと、更衣室で着替えるの? 他の部の子に見られるのは、恥ずかしい……」
「えー、本番だとお客さんに見てもらうんだよっ」
「本番で見られるのと学校で見られるのは、恥ずかしさが違う……」
佑香の言葉にも納得しない玲に対し、紗夜香が話し掛ける。
「じゃ今日は部室で着替えましょうか。カーテンを閉めれば他からは見られないし」
「玲ちゃんそれなら大丈夫?」
「うん……」
美空に聞かれて玲が頷く。カーテンを閉めてドアにも鍵をかけて部室で着替えることになった。
数分後、三人は衣装に着替え終わった。衣装姿になった三人を見て亜紀が感想を言う。
「おお、三人ともめっちゃかわいいやんか!」
「えへへー」
上機嫌の佑香がくるりとターンで一回転する。その姿を見た玲が言う。
「あ、三人とも衣装の細かい部分が違う」
「ええ、三人の特色を出せるようにしたわ。玲ちゃんはパープルと色が合うから黒タイツにショートシューズにしてみたわ。どうかしら」
「はい、可愛いです」
「みそらちゃんは肩だしで全体的にすっきりな感じだね」
「うん」
美空が自分の衣装と佑香、玲の衣装を見比べる。そしてある違いに気付く。
「あれ、佑香ちゃんと玲ちゃんはスカートの下スパッツなんですか?」
美空はスカートの下がショートパンツだった。紗夜香が答える。
「ええ。だって『ヒカリノツバサ』のジャンプは一番の見せ場でしょ? やっぱりスパッツは『踊っている最中に万が一見えても大丈夫なように』履くものだから、ジャンプみたいな中が見えるの前提な動きのときはスカパンの方がいいわ」
「なるほど」
紗夜香の説明に納得する美空。たしかに別にスパッツを見られても恥ずかしいわけではないが、どうせ見せるのなら可愛いショートパンツの方が良い。
「それにしても、れいちゃんの脚やっぱり綺麗だよね。モデルさんみたい」
佑香が玲を見てつぶやく。短いスカートから覗く玲の脚はモデルのように細く真っ直ぐで綺麗だった。
しかし、普段ならそう言われると真っ赤になって恥ずかがる玲だったが、今回はきっぱりと返した。
「いや、アタシよりも佑香や美空の脚の方が綺麗だよ。最近プロのアイドルのテレビや動画を見ているけど、みんなしっかりと筋肉が付いたアスリートの脚をしてる。アタシはただ細いだけで、ダンスに必要な筋肉が全然付いてない」
「れいちゃん……」
「でもこれから練習していく、でしょ? だから大丈夫」
美空に言われて、玲は力強く頷く。
「うん」
★
ライブ前日、本番と同じくMCも入れてしっかりと時間内に終わらせる練習をした三人は、早めに練習を切り上げた。
美空がいつも試合前に行っていたという練習後のクールダウンをしながら、佑香が口を開く。
「そういえば、今日このあとみんな予定ある?」
「この後? 特に何も無いよ」
「ん、……アタシも特には」
二人の返事を聞いた佑香が大声で少し離れたところにいる二人にも聞く。
「さやか先輩、あきちゃん! このあと予定あいてますか?」
「家に帰って明日の事務的な確認するだけだけど」
「ウチはヒマ人やで」
「じゃみんなで神社にお参りに行きませんか? あすのライブの成功を祈って!」
帰る準備をしてから五人がやってきたのは、学校から徒歩で十五分ほどのところにある札幌護国神社だった。亜紀が感心したようにつぶやく。
「ほぉ~、学校からこんな近くに神社なんてあったんやな」
「私も三年間通っているけどこんなところにあるなんて知らなかったわ」
「わたしの七五三や初詣はここなんです。子供のころは林にセミの幼虫を取りにいったりもしました」
そう言って笑う佑香。そのまま鳥居をくぐろうとすると、玲が普段からは想像もできないような大声を上げて制止する。
「ダメ! 鳥居の真ん中は正中(せいちゅう)といって神様が通る道だから、鳥居をくぐる時は少し端の方を一礼してから」
「え、そうなの? わたし毎年初詣でめっちゃ真ん中くぐってました……」
「玲ちゃん詳しいね」
「アタシ、よく神社にお参りに行くから。今日も佑香に声かけてもらえなかったら一人で行くつもりだった……」
そう言ってから、恥ずかしいことを言ってしまったかと思って顔を赤くする玲だったが、皆は素直に感心しているようだった。
「そうなんだ。じゃお参りの正しいやり方教えてっ」
「う、うん」
玲の言う通りに手水(ちょうず)で手を清めてから本堂へ向かう五人。
「お賽銭どうしよう、やっぱり五円玉が縁起がいいのかなぁ」
「ゆかっち、五円玉は『ご縁がある』やで。別に結婚したいとかやないやろ」
呆れ気味に言う亜紀に対し、美空が言葉を返す。
「でも、明日は美樹先輩やスタッフの方とか、たくさんの方に会うんだから、ご縁がありますようにで間違ってないんじゃないかな」
「そうね。ライブは『人の縁』がとても大事よ。そこから次のライブへと繋がっていったりもするんだから」
紗夜香にもそう言われて、佑香が財布から五円玉を取り出す。
「じゃ明日はたくさんの良いご縁がありますように。そしてライブが成功しますようにっ」
賽銭を入れた後、五人全員でお参りをする。
★
「実はね、ライマスのアニメで、主人公達がこうやって神社にライブ成功祈願のお参りに行っていたんだ」
神社からの帰り道で佑香が話す。
「ええ、知っていたわよ。ライマス見ていたらやりたくなるわよね」
「えへへ」
紗夜香の言葉に佑香が照れ笑いを浮かべる。
「じゃ明日は朝九時に札幌駅のJR西口改札前待ち合わせで」
「はい」
「それじゃまた明日、お疲れ様」
「おつかれさまでしたっ」
それぞれが想いを胸に秘め、帰路についた。
そんなある日、紗夜香が両手にいっぱいの手提げ袋を持って部室にやってきた。
「みんな、衣装ができたわよ」
「紗夜香先輩お疲れ様です」
「わー、さっそく着てみてもいいですか?」
「ええ、サイズが合っていなかったら急いで直すから」
乗り気の佑香や美空に対し、玲が恥ずかしそうにつぶやく。
「えっと、更衣室で着替えるの? 他の部の子に見られるのは、恥ずかしい……」
「えー、本番だとお客さんに見てもらうんだよっ」
「本番で見られるのと学校で見られるのは、恥ずかしさが違う……」
佑香の言葉にも納得しない玲に対し、紗夜香が話し掛ける。
「じゃ今日は部室で着替えましょうか。カーテンを閉めれば他からは見られないし」
「玲ちゃんそれなら大丈夫?」
「うん……」
美空に聞かれて玲が頷く。カーテンを閉めてドアにも鍵をかけて部室で着替えることになった。
数分後、三人は衣装に着替え終わった。衣装姿になった三人を見て亜紀が感想を言う。
「おお、三人ともめっちゃかわいいやんか!」
「えへへー」
上機嫌の佑香がくるりとターンで一回転する。その姿を見た玲が言う。
「あ、三人とも衣装の細かい部分が違う」
「ええ、三人の特色を出せるようにしたわ。玲ちゃんはパープルと色が合うから黒タイツにショートシューズにしてみたわ。どうかしら」
「はい、可愛いです」
「みそらちゃんは肩だしで全体的にすっきりな感じだね」
「うん」
美空が自分の衣装と佑香、玲の衣装を見比べる。そしてある違いに気付く。
「あれ、佑香ちゃんと玲ちゃんはスカートの下スパッツなんですか?」
美空はスカートの下がショートパンツだった。紗夜香が答える。
「ええ。だって『ヒカリノツバサ』のジャンプは一番の見せ場でしょ? やっぱりスパッツは『踊っている最中に万が一見えても大丈夫なように』履くものだから、ジャンプみたいな中が見えるの前提な動きのときはスカパンの方がいいわ」
「なるほど」
紗夜香の説明に納得する美空。たしかに別にスパッツを見られても恥ずかしいわけではないが、どうせ見せるのなら可愛いショートパンツの方が良い。
「それにしても、れいちゃんの脚やっぱり綺麗だよね。モデルさんみたい」
佑香が玲を見てつぶやく。短いスカートから覗く玲の脚はモデルのように細く真っ直ぐで綺麗だった。
しかし、普段ならそう言われると真っ赤になって恥ずかがる玲だったが、今回はきっぱりと返した。
「いや、アタシよりも佑香や美空の脚の方が綺麗だよ。最近プロのアイドルのテレビや動画を見ているけど、みんなしっかりと筋肉が付いたアスリートの脚をしてる。アタシはただ細いだけで、ダンスに必要な筋肉が全然付いてない」
「れいちゃん……」
「でもこれから練習していく、でしょ? だから大丈夫」
美空に言われて、玲は力強く頷く。
「うん」
★
ライブ前日、本番と同じくMCも入れてしっかりと時間内に終わらせる練習をした三人は、早めに練習を切り上げた。
美空がいつも試合前に行っていたという練習後のクールダウンをしながら、佑香が口を開く。
「そういえば、今日このあとみんな予定ある?」
「この後? 特に何も無いよ」
「ん、……アタシも特には」
二人の返事を聞いた佑香が大声で少し離れたところにいる二人にも聞く。
「さやか先輩、あきちゃん! このあと予定あいてますか?」
「家に帰って明日の事務的な確認するだけだけど」
「ウチはヒマ人やで」
「じゃみんなで神社にお参りに行きませんか? あすのライブの成功を祈って!」
帰る準備をしてから五人がやってきたのは、学校から徒歩で十五分ほどのところにある札幌護国神社だった。亜紀が感心したようにつぶやく。
「ほぉ~、学校からこんな近くに神社なんてあったんやな」
「私も三年間通っているけどこんなところにあるなんて知らなかったわ」
「わたしの七五三や初詣はここなんです。子供のころは林にセミの幼虫を取りにいったりもしました」
そう言って笑う佑香。そのまま鳥居をくぐろうとすると、玲が普段からは想像もできないような大声を上げて制止する。
「ダメ! 鳥居の真ん中は正中(せいちゅう)といって神様が通る道だから、鳥居をくぐる時は少し端の方を一礼してから」
「え、そうなの? わたし毎年初詣でめっちゃ真ん中くぐってました……」
「玲ちゃん詳しいね」
「アタシ、よく神社にお参りに行くから。今日も佑香に声かけてもらえなかったら一人で行くつもりだった……」
そう言ってから、恥ずかしいことを言ってしまったかと思って顔を赤くする玲だったが、皆は素直に感心しているようだった。
「そうなんだ。じゃお参りの正しいやり方教えてっ」
「う、うん」
玲の言う通りに手水(ちょうず)で手を清めてから本堂へ向かう五人。
「お賽銭どうしよう、やっぱり五円玉が縁起がいいのかなぁ」
「ゆかっち、五円玉は『ご縁がある』やで。別に結婚したいとかやないやろ」
呆れ気味に言う亜紀に対し、美空が言葉を返す。
「でも、明日は美樹先輩やスタッフの方とか、たくさんの方に会うんだから、ご縁がありますようにで間違ってないんじゃないかな」
「そうね。ライブは『人の縁』がとても大事よ。そこから次のライブへと繋がっていったりもするんだから」
紗夜香にもそう言われて、佑香が財布から五円玉を取り出す。
「じゃ明日はたくさんの良いご縁がありますように。そしてライブが成功しますようにっ」
賽銭を入れた後、五人全員でお参りをする。
★
「実はね、ライマスのアニメで、主人公達がこうやって神社にライブ成功祈願のお参りに行っていたんだ」
神社からの帰り道で佑香が話す。
「ええ、知っていたわよ。ライマス見ていたらやりたくなるわよね」
「えへへ」
紗夜香の言葉に佑香が照れ笑いを浮かべる。
「じゃ明日は朝九時に札幌駅のJR西口改札前待ち合わせで」
「はい」
「それじゃまた明日、お疲れ様」
「おつかれさまでしたっ」
それぞれが想いを胸に秘め、帰路についた。
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