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5章 激闘、二回戦!
028話 第二試合と、エース対決と ①
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SIDE:SHIZUKA
「妙高、お前なら間違いなく勝てると思うが、相手は有栖川だ。何が来てもすぐに対応するように」
「はい、わかっていますコーチ」
私は名門聖マリヤ女学院のエース、妙高静香。相手のエースを止めて、一勝を持ち帰る。それが私の仕事だ。
たとえ相手がかつての同門であっても。怪物と呼ばれた存在であっても。
そういえばコーチは中等部の『あの事件』を知っているのだろうか。中等部と高等部のコーチ同士で戦力についてのやりとりはしていたと思うけれど。
** ***
三年前の、中等部に新入生が入って初めての休日。
練習場には、卓球部の二、三年生と一年生の有栖川 稔里ちゃんだけ。
別にいじめとかそういう悪い意味のものではなく、ただ単純に全員がこの謎の新入生の実力を知りたかった。普通マリ女には小学校時代クラブでの成績が良かった子がスポーツ特待生として入ってくる。なので新一年生も大体誰か二、三年生のクラブの後輩だったり、近隣のクラブで小学生時代に顔見知りだったりする。
なのに、この有栖川という子はどこのクラブにも属していなかった。もちろんマリ女にもスポーツ特待生ではなく一般入試で入って卓球部に入る子もいないことはない。ただ、有栖川ちゃんはクラブ無所属で特待生入部だった。数日だがラリーを見ていても明らかに他の子とレベルが違う。
年齢別の卓球全国大会であるホープス(小学校六年生以下の部)に出場したなんてウワサもあり、皆がこの謎の新入生の実力を知りたがっていた。
結果は、忘れもしない。
二年生は一ゲームも取れずに全滅。三年生も団体戦メンバーの吉川と村川まで負けて、私ももう疲れてへとへとだった有栖川ちゃん相手にフルゲームの末敗退。最後に絵東がなんとか勝ったけど、もう有栖川ちゃんの体力は残っていない状態だった。
その後案の定コーチに見つかってこっぴどく叱られ、言い出しっぺの村川と止めなかった私と絵東、吉川が体育館の掃除をさせられたのは懐かしい思い出だ。
** ***
あの怪物が、今目の前にいる。
自分が中体連に行くまでの数か月しか一緒に卓球はしていなかったが、練習試合は六対四でかろうじて私が少し勝ち越していたかどうか、そんな記憶だ。中学の三年間よりも高校の三年間の方が実のある練習で実力に差が付いた。そう信じてコートに入る。
アリスちゃんとラリーを始める。当時も中学一年にしては背が高いと思ったが、そのまま順調に育っているらしい。そして長い手足を全く持て余すところのない綺麗なフォーム。順調にキャリアを積んでいるようだ。
ただ逆に安心する。中学三年間の間にうちのミクちゃんのような超異質型にでもなっていたら初見で攻略するのは難しかっただろう。試合前のラケット交換でもお手本のようなオールラウンダーの打点に感心する。
「ラブオール」
向こうのサーブから試合開始。最初はオーソドックスな横下回転、のサーブがネットインする。卓球ではサーブがネットに触って相手コートに入った場合、レットと言うネットインとなり打ち直しとなる。そのボールがただのネットインではなく、ネットに触ったところで横回転の回転量が凄まじいためにボールがネット上を数センチ摩擦音と共に横に走るという派手な初球のレットを見せ付けてきた。
(ありがとう、心の準備をさせてくれて)
相手を高校一年生、ノーシードの公立校の選手なんて少しでも考えたら持って行かれる。目の前の相手はエース中のエースだ。
仕切り直しの一球目、相手はナックル気味のサーブに変えてきた。もし下回転だったとしてもチキータで巻き込めばいい。そう考えて肘を固定しチキータの準備をするがなんとサーブは逆に上回転がかかっていた。伸びてくるボールにチキータは合わせられず、空振りの形でサービスエースを取られてしまう。
小さくガッツポーズをするアリスちゃん。闘争心の塊のようなあの子にとってまだ序盤戦ということか。
続けてのサーブは、バック側深くへの横回転ロングサーブ。さっきのチキータの空振りで、バックハンドの調子を狂わせようとする作戦、ということはこちらも見抜いていたので半歩下がってのバックハンドドライブで打ち抜く。相手は高速のカウンターでブロックしてくるが、このスピードのカウンターブロックならいくらでも使い手はいる。冷静に左右に打ち分け、今度は私が得点する。
1-1で、私のサーブ権。
こちらも初球は驚かすくらいのつもりで得意のサーブを最初に持ってくる。
相手コートでバウンド後にこちらのコートに戻ってくるような、下回転の回転量を上げるだけ上げたサーブ。これだけ短いサーブだとチキータは不可能、ツッツキで返すしかない。ネットぎりぎり、腕を伸ばした体勢のツッツキに対し体勢を戻す時間を与えずスピードドライブで三球目攻撃。それでも手首の返しだけで四球目をブロックしてくるけど、同じコースへスマッシュを打つ。空いたフォアハンド側へ打つと思っていた相手の逆を突く五球目攻撃で私が一点リードする。
二本目のサーブ。今度はチキータを見てみたいのでわざと打ちやすいコースへ下回転サーブを放り込む。相手は絶好のコース、チキータで返してくる。スピード、コース共に申し分のないチキータだ。わざと打たせた分こちらはコースを予測して三球目をカウンターで攻撃するが、向こうは身体を倒し込むように回り込んでフォアハンドのスマッシュを打ち抜いてきた。
「妙高、お前なら間違いなく勝てると思うが、相手は有栖川だ。何が来てもすぐに対応するように」
「はい、わかっていますコーチ」
私は名門聖マリヤ女学院のエース、妙高静香。相手のエースを止めて、一勝を持ち帰る。それが私の仕事だ。
たとえ相手がかつての同門であっても。怪物と呼ばれた存在であっても。
そういえばコーチは中等部の『あの事件』を知っているのだろうか。中等部と高等部のコーチ同士で戦力についてのやりとりはしていたと思うけれど。
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三年前の、中等部に新入生が入って初めての休日。
練習場には、卓球部の二、三年生と一年生の有栖川 稔里ちゃんだけ。
別にいじめとかそういう悪い意味のものではなく、ただ単純に全員がこの謎の新入生の実力を知りたかった。普通マリ女には小学校時代クラブでの成績が良かった子がスポーツ特待生として入ってくる。なので新一年生も大体誰か二、三年生のクラブの後輩だったり、近隣のクラブで小学生時代に顔見知りだったりする。
なのに、この有栖川という子はどこのクラブにも属していなかった。もちろんマリ女にもスポーツ特待生ではなく一般入試で入って卓球部に入る子もいないことはない。ただ、有栖川ちゃんはクラブ無所属で特待生入部だった。数日だがラリーを見ていても明らかに他の子とレベルが違う。
年齢別の卓球全国大会であるホープス(小学校六年生以下の部)に出場したなんてウワサもあり、皆がこの謎の新入生の実力を知りたがっていた。
結果は、忘れもしない。
二年生は一ゲームも取れずに全滅。三年生も団体戦メンバーの吉川と村川まで負けて、私ももう疲れてへとへとだった有栖川ちゃん相手にフルゲームの末敗退。最後に絵東がなんとか勝ったけど、もう有栖川ちゃんの体力は残っていない状態だった。
その後案の定コーチに見つかってこっぴどく叱られ、言い出しっぺの村川と止めなかった私と絵東、吉川が体育館の掃除をさせられたのは懐かしい思い出だ。
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あの怪物が、今目の前にいる。
自分が中体連に行くまでの数か月しか一緒に卓球はしていなかったが、練習試合は六対四でかろうじて私が少し勝ち越していたかどうか、そんな記憶だ。中学の三年間よりも高校の三年間の方が実のある練習で実力に差が付いた。そう信じてコートに入る。
アリスちゃんとラリーを始める。当時も中学一年にしては背が高いと思ったが、そのまま順調に育っているらしい。そして長い手足を全く持て余すところのない綺麗なフォーム。順調にキャリアを積んでいるようだ。
ただ逆に安心する。中学三年間の間にうちのミクちゃんのような超異質型にでもなっていたら初見で攻略するのは難しかっただろう。試合前のラケット交換でもお手本のようなオールラウンダーの打点に感心する。
「ラブオール」
向こうのサーブから試合開始。最初はオーソドックスな横下回転、のサーブがネットインする。卓球ではサーブがネットに触って相手コートに入った場合、レットと言うネットインとなり打ち直しとなる。そのボールがただのネットインではなく、ネットに触ったところで横回転の回転量が凄まじいためにボールがネット上を数センチ摩擦音と共に横に走るという派手な初球のレットを見せ付けてきた。
(ありがとう、心の準備をさせてくれて)
相手を高校一年生、ノーシードの公立校の選手なんて少しでも考えたら持って行かれる。目の前の相手はエース中のエースだ。
仕切り直しの一球目、相手はナックル気味のサーブに変えてきた。もし下回転だったとしてもチキータで巻き込めばいい。そう考えて肘を固定しチキータの準備をするがなんとサーブは逆に上回転がかかっていた。伸びてくるボールにチキータは合わせられず、空振りの形でサービスエースを取られてしまう。
小さくガッツポーズをするアリスちゃん。闘争心の塊のようなあの子にとってまだ序盤戦ということか。
続けてのサーブは、バック側深くへの横回転ロングサーブ。さっきのチキータの空振りで、バックハンドの調子を狂わせようとする作戦、ということはこちらも見抜いていたので半歩下がってのバックハンドドライブで打ち抜く。相手は高速のカウンターでブロックしてくるが、このスピードのカウンターブロックならいくらでも使い手はいる。冷静に左右に打ち分け、今度は私が得点する。
1-1で、私のサーブ権。
こちらも初球は驚かすくらいのつもりで得意のサーブを最初に持ってくる。
相手コートでバウンド後にこちらのコートに戻ってくるような、下回転の回転量を上げるだけ上げたサーブ。これだけ短いサーブだとチキータは不可能、ツッツキで返すしかない。ネットぎりぎり、腕を伸ばした体勢のツッツキに対し体勢を戻す時間を与えずスピードドライブで三球目攻撃。それでも手首の返しだけで四球目をブロックしてくるけど、同じコースへスマッシュを打つ。空いたフォアハンド側へ打つと思っていた相手の逆を突く五球目攻撃で私が一点リードする。
二本目のサーブ。今度はチキータを見てみたいのでわざと打ちやすいコースへ下回転サーブを放り込む。相手は絶好のコース、チキータで返してくる。スピード、コース共に申し分のないチキータだ。わざと打たせた分こちらはコースを予測して三球目をカウンターで攻撃するが、向こうは身体を倒し込むように回り込んでフォアハンドのスマッシュを打ち抜いてきた。
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