41 / 106
3章 インターハイ予選へ向けて
019話 試合前夜と、約束と ②
しおりを挟む
***
『ごめんミカ、今まで家族でご飯食べてた』
『ん、メッセ送ってからそいえば夕飯の時間だなって』
帰宅後、夜。
私は美夏と通話をしていた。
稔里ちゃんも誘ったのだが、試合前日の夜はやることがあるということだった。稔里ちゃんくらいになると練習以外にも色々と試合前のルーティンがあるのかもしれない。
『どう試合前は? ってミカの方が私よりも色んな大会に出てるか』
『うーん、実は個人の対人競技って初めてなんだよね』
『ん、どういうこと?』
『バレーとかバスケとかは団体競技でしょ。陸上とかスキーは個人だけど記録を出す競技。個人で相手がいる競技で試合に出るのって卓球が初めてなんだ』
なるほど。言われてみればよく個人競技と団体競技なんて比較は耳にするが、個人競技でも記録を出す競技と相手と戦う競技に分かれるのか。
『それぞれで試合前の気持ちが変わるんだ』
『うん。どっちかというとバスケバレーに近い感覚かな。相手の動きを頭の中でシミュレーションする。陸上とかだとシミュレーションというより身体の感覚を研ぎ澄ましていく感じ。うーん、うまく伝わってるかなぁ』
『大丈夫だよ』
そもそも色んなスポーツで試合前を経験してきている美夏と卓球しか知らない私では美夏の方が大先輩だ。
『私トーナメント表が気になって眠れないかも』
『前原センセ言ってたもんね、何時に更新されるかわからないから気にするな、って』
大会のトーナメント表は、試合当日の朝にホームページ上で発表されるが、何時と決まっているわけではないらしい。
『でもゆのは何があってもしっかり眠れるっしょ』
『これは私の特技かもね』
遠足の前日、運動会の前日、試験の前日。どんなに楽しみなことや緊張することがあっても、その前日は普通に眠くなって普段通りに眠れる。体調管理という意味では特技と言ってもいいかもしれない。そんなに神経が図太いつもりはないのだけれど。
『わたしは楽しみすぎるよ。ゆのと同じユニフォーム着て戦う、初めての日なんだから』
『この前の練習試合の時は?』
『実はめっちゃドキドキしてた! 明日は公式戦だから絶対ヤバい!』
美夏を卓球部に誘ったときのことを思い出す。まだあれから二か月も経っていないが、随分と遠い過去のように思える。
私は照れ隠しも込めて答える。
『私はいつも、試合前は大活躍するミカを送り出すだけだったから、自分が引っ張るっていうのが不思議な感覚。なんてね、明日も美夏の方が大活躍だったりして』
『そんなことない!』
スマホ越しの大声にびっくりする。
『ゆのはパイセンやみのりんが苦戦する強敵相手にバシって決めるって、わたし信じてるから』
『ミカ……』
うん、大丈夫。今の言葉で明日は絶対に実力以上の力が出せる。
ベッドの中で軽く武者震いをする。
『よし、じゃ明日大活躍するためにもそろそろ寝る準備するかね』
『うぃ。明日はゆのん家迎えに行くよ』
『オッケー。じゃおやすみ』
『おやすー』
通話を切る。
寝る準備の前に、昨年度の女子団体戦のトーナメント表を見る。
全部で二十四校。四強を外すと二十校。二回戦で四強と当たる一回戦を戦うのは八校。
二十分の八。もちろん去年と出場校数は変わるだろうが、実はほぼ半分の確率で二回戦は四強のシード校と当たる計算だ。
だからといって今更自分にできることは何もない。
一通りの準備を終えると、枕元の電気を消す。ほどなくして私は順調に眠りについた。
『ごめんミカ、今まで家族でご飯食べてた』
『ん、メッセ送ってからそいえば夕飯の時間だなって』
帰宅後、夜。
私は美夏と通話をしていた。
稔里ちゃんも誘ったのだが、試合前日の夜はやることがあるということだった。稔里ちゃんくらいになると練習以外にも色々と試合前のルーティンがあるのかもしれない。
『どう試合前は? ってミカの方が私よりも色んな大会に出てるか』
『うーん、実は個人の対人競技って初めてなんだよね』
『ん、どういうこと?』
『バレーとかバスケとかは団体競技でしょ。陸上とかスキーは個人だけど記録を出す競技。個人で相手がいる競技で試合に出るのって卓球が初めてなんだ』
なるほど。言われてみればよく個人競技と団体競技なんて比較は耳にするが、個人競技でも記録を出す競技と相手と戦う競技に分かれるのか。
『それぞれで試合前の気持ちが変わるんだ』
『うん。どっちかというとバスケバレーに近い感覚かな。相手の動きを頭の中でシミュレーションする。陸上とかだとシミュレーションというより身体の感覚を研ぎ澄ましていく感じ。うーん、うまく伝わってるかなぁ』
『大丈夫だよ』
そもそも色んなスポーツで試合前を経験してきている美夏と卓球しか知らない私では美夏の方が大先輩だ。
『私トーナメント表が気になって眠れないかも』
『前原センセ言ってたもんね、何時に更新されるかわからないから気にするな、って』
大会のトーナメント表は、試合当日の朝にホームページ上で発表されるが、何時と決まっているわけではないらしい。
『でもゆのは何があってもしっかり眠れるっしょ』
『これは私の特技かもね』
遠足の前日、運動会の前日、試験の前日。どんなに楽しみなことや緊張することがあっても、その前日は普通に眠くなって普段通りに眠れる。体調管理という意味では特技と言ってもいいかもしれない。そんなに神経が図太いつもりはないのだけれど。
『わたしは楽しみすぎるよ。ゆのと同じユニフォーム着て戦う、初めての日なんだから』
『この前の練習試合の時は?』
『実はめっちゃドキドキしてた! 明日は公式戦だから絶対ヤバい!』
美夏を卓球部に誘ったときのことを思い出す。まだあれから二か月も経っていないが、随分と遠い過去のように思える。
私は照れ隠しも込めて答える。
『私はいつも、試合前は大活躍するミカを送り出すだけだったから、自分が引っ張るっていうのが不思議な感覚。なんてね、明日も美夏の方が大活躍だったりして』
『そんなことない!』
スマホ越しの大声にびっくりする。
『ゆのはパイセンやみのりんが苦戦する強敵相手にバシって決めるって、わたし信じてるから』
『ミカ……』
うん、大丈夫。今の言葉で明日は絶対に実力以上の力が出せる。
ベッドの中で軽く武者震いをする。
『よし、じゃ明日大活躍するためにもそろそろ寝る準備するかね』
『うぃ。明日はゆのん家迎えに行くよ』
『オッケー。じゃおやすみ』
『おやすー』
通話を切る。
寝る準備の前に、昨年度の女子団体戦のトーナメント表を見る。
全部で二十四校。四強を外すと二十校。二回戦で四強と当たる一回戦を戦うのは八校。
二十分の八。もちろん去年と出場校数は変わるだろうが、実はほぼ半分の確率で二回戦は四強のシード校と当たる計算だ。
だからといって今更自分にできることは何もない。
一通りの準備を終えると、枕元の電気を消す。ほどなくして私は順調に眠りについた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる