はじまりはいつもラブオール

フジノシキ

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1章 卓球部再結成

002話 入学初日と、再会と ②

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「何、あの子じっと見つめて。凄い美人じゃん。知り合い?」
「あ、いやちょっと……」

 宮ちゃんから問われてどう答えるか迷う。知り合いでもないし面識があるというほどでもないが全くの赤の他人でもないという微妙な関係性だ。

 すると、こちらの話し声に気付いたのか、向こうがこちらに振り向く。切れ長の目を一瞬驚いたように見開くと、席を立って私へ向かって歩いてくる。
 突然のことに私はびっくりして椅子に座ったまま上半身が直立不動になる。

「あの……」
「は、はい」

 ロボットのような動きの私を有栖川さんは少し小首を傾げながら見つめる。

「中三の大会で、試合をしたことありませんか? 綺麗なカットを打つ人……」

 あの時の声を忘れてはいない。

『綺麗なカットでした。またやりましょう』

 目の前の有栖川さんは、やっぱりあの日試合をした有栖川さんだった。

「はい、そうです。幌平中の鈴原です。やっぱりマリ女の有栖川さんだったんですね」
「なに、二人知り合い?」

 隣の宮ちゃんにもわかるように説明をする。

「私が中学の時に試合をした人。すっごい上手いんだよ」
「へー。あ、アタシ宮本晶。鈴原とは同中。よろしくね」
「有栖川 稔里(ありすがわ みのり)です。よろしく」

 とりあえず挨拶を交わしたところで、次に卓球の話題を振っていいものか悩む。有栖川さんほどの選手がこの高校に卓球部が無いことを調べていないはずはない。
 籍だけ山高に置いてクラブで卓球をするのか、それとも怪我か何かで卓球ができないのか。もし後者だとしたらあまり触れてよい話題ではない。

 でも、卓球のことは有栖川さんの方から話を振ってきた。ということは普通に話しても良いのだろうか。私が色々と脳内で考えている間に宮ちゃんが話を進める。

「有栖川さんかー。よろよろ。アタシは宮本でも晶でも好きに呼んで」
「ありがとう、宮本さん。えっと」
「私のことは柚乃でいいよ。有栖川さんはみのりちゃんって呼んでいい?」
「ええ。あの……柚乃さん」

 有栖川さんあらため稔里ちゃんは少し間を置いて姿勢を正すと、私に語り掛ける。

「なに?」
「明日の放課後、一緒に来てもらってもいいかしら」
「明日の放課後……うん、特に何もないと思うけど」

 明日はたしか、ロングホームルームで自己紹介とか学級委員を決めるとか漫画とかでよく見るやつをするだけで、特に予定はなかったはずだった。
 漫画でよく見るといえば、部活の勧誘が始まるのも二日目の放課後じゃなかっただろうか。

 私の心を見透かしたように、稔里ちゃんが言葉を続ける。
 その姿に試合時のようなオーラが見えたのは、気のせいじゃなかったと思う。


「一緒に。卓球部に、入って欲しいの」
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