稚拙図書館

絶叫しきれない絶叫マシン

【乗車から10秒】
乗っているコースタ一が、レールからずれてしまったり。安全バ一が、何かの拍子で、ずれてしまったり。そうなったら、怖いのは当然だ。ジェットコースタ一の、前に乗っているおじさんのカツラが今、少しずれてしまっている。それは、ある意味怖い。

【乗車から30秒】
まだ、コースタ一は上に登っている最中。風は、かなり強いとは言い切れない。スピードも、全然出ていない。なのに、おじさんのカツラが、こんなに揺れている。ということは、たぶんもう飛ぶ。

【乗車から50秒】
ジェットコースターの揺れだけでは、心が揺れたり、騒いだりすることはない。だが、ジェットコース夕一の揺れによって揺れた、おじさん。そのおじさんによって揺れた、おじさんのカツラ。それによって、私の心が揺れているのが、今の現状だ。

【乗車から70秒】
かなりずれていて、かなり揺れている。なのに、意外に飛ばないなと思っていた。そう思ってから、すぐに飛んだ。斜め下を見たら、ソレが空中を浮遊していた。興味は漂う、ソレに全部持ってかれてしまった。

【乗車から90秒】
さっき、写真撮影ゾーンがあった。カメラ目線でピースをしながら、通りすぎた。ツルッツルのおじさんの頭から、ピースという名のツノが2本生えている。そんな感じに、なっていないかどうか。それが、かなり心配になっていた。

【乗車から120秒】
前のおじさんが、しきりに頭を隠そうとしている。なので、さっきの一回転する場所の、逆さま状態になっている場所。そこで、上に帽子を投げて、下に来たときのおじさんの頭に、ちょうどよく被す。そんな方法もあったなと、少しだけ後悔した。

【乗車から150秒】
ジェットコースタ一が、無事にフィニッシュを迎えた。その後のおじさんを、よく見てみた。すると、この遊園地のマスコットキャラクターの、顔まですっぽり隠れる被り物のグッズ。それを、握り締めていた。その被り物を被るだけで、世界はガラリと変わったのに。あるんだったら、カツラが飛ぶ前に被ってよ。そう、少しだけ思った。