機能しない現実

ダイナマイト山村

文字の大きさ
上 下
6 / 7

計画の残滓3

しおりを挟む
 賢者の石。



人を不老不死にしたり、といった超自然的な能力を秘めたもの…というイメージも強いが元々は中世の錬金術師が卑金属を金に換える触媒と考えたものである。科学と伝承は表裏一体。人の希望を物質的に実現する科学と精神的に実現するストーリー。



いつしか、超越したものを生み出すものという概念が生まれた。







 人類が発見した大きな機械箱。元素を分解し、再構成できるならば万物の根源からあらゆるものを生み出す賢者の石そのものである。



何者によって何のために生み出されたのかはわからないが、利用することはできる。



専用の制御プログラムと自己判断自立システムを搭載したAIが開発された。







 生物としての最強を目指したベストマン計画101~106までは人間の脳で制御されていた。



101論理的天才。102感覚的天才。103敏感的天才。104鈍感的天才。105乳幼児。



そして106には研究主任の脳が移植された。107から109までの3体はコンピューター制御型である。



107制御AIタイプ。108疑似人格AIタイプ。109自己進化AIタイプ。



初期型の107は計画全体が凍結される寸前で回収され、どこからかもたらされた賢者の石が搭載された。







 その残骸はあらゆる組織にとって回収したいものであり、回収されたくないものである。







 「そんなことだろうとは思っていたがな」



ミルコはジョシュアの遺品MP5を握り直す。







 侍は身体能力が高い。それはもはや異常だ。



ミルコ自身も特殊部隊の人間として、一般人を凌駕する身体能力を持っている。



それでも、侍とは僅差などではない、決定的な能力差がある。



もはや自分たちがこれまで狩ってきた対象に近い。







 ミルコは考えている。







 そもそも侍などいない。表の世界には。



重火器がある世界で超近接戦闘以外で刀など使わない。







 日本という国の今や伝統文化の一つとして道として刀の型があると聞いたことがある。



しかし、日本の警察も、自衛隊も基本的に近代装備だ。



確かに、詳しく知らないことではある。



が、訓練を積んだ特殊部隊を全滅させるほどの相手を圧倒する戦闘術。



しかも、単騎での突破力。そんなものが存在するのか。だとして我々が知らないのはなぜだ。



日本政府とはそれほどまでに。







 「ミルコ。大丈夫か」



「お前が圧倒的過ぎて、残念ながら生き残った」



ジョシュアは死んだが。



「この先の追跡も予想される。107式から賢者の石を取り出そう」



ミルコは衝撃を受けた。



「取り出せるのか」



「君たちが持っていたキャンサーバレットを使えば」



「お前何者なんだ。いや、お前たちの後ろにいる組織はなんだ。日本政府か」



リョウジは少し考えて口を開いた。



「そうだな。とりあえず、賢者の石を取り出す。そしてここを一刻も早く出よう」



ミルコはまぁ言えないわなとうなずく。



戦闘能力の差。情報量の差。すべてが圧倒的。



今この状況において何一つの権利を持たない。



従うしかない。そう思った時意外な返答だった。







 「道中に話そう。俺には協力者がいる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...