上 下
3 / 3

しおりを挟む
「なんだこれ…」
2枚目以降も同様に、彼の無様な姿が映された画像ばかりだった。
舌を出しながら動物の真似をしている画像や、腕を縛られながら地面を舐めている画像。誰かの靴を舐めている画像。言語化するのも憚られる画像。
どれもそれぞれ豊富に無様だった。
しかもどの画像も笑顔で写っているものだから無様さの格が上がっている。
彼本人の格は下がっているが。
「ってことは動画も…?」
動画データの方も確認する。
「……うわぁ」
無様に無様を重ね着していた。
いや、全裸だったんだけど。
色んな動物のポーズを取りながら自己紹介してたのがハイライトだ。
まぁ、恐らくこれらは彼の、彼とあの女の情事なんだろうというくらいは動画を見れば想像に難くない。
動画に女の声もしっかり入っていたということは、まぁそういうことで間違いないんだろう。
ただ流石に調教されすぎだとは思う。
少なくとも私との時は普通だった。
まぁ普通を装ってただけかもしれないが。
「で、結局何を伝えたいんだこれは。というかこの送り主の名前も知らないし」
烏合。
間違いなく彼から聞いた名前はそんな名前では無かった。
なんというかもっと女の子っぽい名前だった。確か。
結局どういうことなのか画像と動画には何もヒントは無かった。
ただおもしろ映像と画像を見せられただけで。
なにかヒントはないものかと封筒の中をまさぐってみると、なにやら1枚の紙が入っていた。
「何だろう…手紙?」


『使い方はあなたに一任します』
 
「そんな」
困った。
こんなものをもらったところでどうしろというのだ。
実生活のどのタイミングにこんなデータの使い道があるというのか。
「…ん?なんか小さく書いて…メールアドレス?連絡しろってことか…」




使い道。
無くは、ないのかもしれない。
使い方、などという言う方をしているけれど、先程も言ったが実際にこんなものが使われる方法などまずないだろう。
つまり、真にこの手紙が私に問うているのは使うか使わないか、そのどちらかであるということだ。
そしてそうである以上、使途は限定されている。
私に『絢文』の名で送られてきた彼の目も当てられないような醜態の数々。
こと私に、惨めな私にとっての惨めな彼の姿の使い道。
思いつくものが一つある。

「仕返し…」

そしてこれは、『絢文烏合』にとっても同様の意味合いを持つのだろうということもまた、どこか直感的に感じ取れた。


仕返しなんて、復讐なんて、思ってもみなかった。
いや、嘘だ。
思ったことなら100回じゃきかない。
思うだけなら。
「はは」
でも、今。
今なら。
手が、届く。

「やって、みようか」





















 
   











しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら

キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。 しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。 妹は、私から婚約相手を奪い取った。 いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。 流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。 そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。 それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。 彼は、後悔することになるだろう。 そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。 2人は、大丈夫なのかしら。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...