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fragile〜センチネルバース〜
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雪崩れ込むように柊は瑞希を抱いたままステージ袖に駆け込むと慣れたマネージャーに誘導されてライブ中の着替え用に衝立で作られたスペースに飛び込んだ。
「お待たせ、瑞希」
苦悶の汗でしっとりと濡れた瑞希の淡い綺麗な色の髪をそっと柊は指で分けて頬に手を当てる。
苦しそうな切ない呼吸の中、ねだるようにうっすらと開かれた瑞希のくちびるに誘われるように柊はくちびるを重ねる。柊のくちびるが触れた瞬間から瑞希の強烈な痛みや吐き気がやわらかく引いていく。
「……っぁ」
全身の細胞が柊の与えるくちびるの感覚を悦び、瑞希の躯は細かく痙攣する。くちびるからどんどん苦痛がやわらいでくるので、瑞希はもっともっと柊が欲しくて堪らなくなる。少し開いた瑞希のくちびるのナカに柊が舌を差し込むと、ちいさな子供がミルクを飲むように瑞希は舌に吸い付いた。ちゅる、と小さな音がやたらと大きく響いた。ちいさな部屋の中には二人の熱とあまい汗の香りが立ち込めていた。
「ん……っん………んっ」
綺麗な顔をしてはいるが、普段は男らしい瑞希が瞳を潤ませて顔を紅潮させて、必死に柊の舌を吸う様はひどく庇護欲を誘う。
震える躯で瑞希はこく、こくと柊の唾液を必死に飲む。瑞希の全身の細胞が悦んで柊を求めていて、 必死に柊にしがみつく。瑞希は欲しくて欲しくて気が狂いそうだった。
「……ひっ……ぅ」
うまく呼吸も出来ずに喘ぐ瑞希に大丈夫だよ、というように背中を柊が撫でると安心したのか瞳にたまっていたものが零れた。
そう、『ガイド』が『センチネル』に施すことのできる更なる治療法というのは、ガイドとセンチネルが躯の粘膜を触れあわせ、体液を受け入れる方法である。
ゾーンと呼ばれる発作状態からガイドの癒しによって抜け出す感覚は他に何も考えられないほどに気持ちがよい。トランス状態の瑞希に圧倒的な快感をもたらす。
「……柊っ……んんっ」
柊からもたらされるとろりと甘美な快感に何も考えられなくなる。
不快な感覚が躯から抜け、甘い快感に満たされてゆく。脳内に快感物質を直接流し込まれているようで、どうしようもなく気持ちよくて、理性を失ってしまう。
「んんっ…… もっと……欲し……っ」
気持ちよくて、気持ちよくて、もっと欲しくなって柊の首筋にぎゅっとしがみつく瑞希は恐らく殆んど意識は飛んで無意識の仕草となっている。深く合わせている柊のくちびるが、無意識の瑞希の可愛い言動に満足そうに笑う。
瑞希の咥内に差し込まれた柊の舌と甘く舌を絡め合うと、瑞希の躯は流れ込んでくる溺れるほどの快感に包まれて、びくびくと震えた。
「は……は………」
恐らく性器に触れずにして達してしまった瑞希。 吐息を乱す瑞希の目尻にくちびるを落としてなだめるように頭を撫でてやる。濡れたくちびるを柊が親指でそっと拭ってやると、徐々に瑞希の瞳の焦点が合ってくる。
「ごめ……助かった。俺、また迷惑かけたよな」
漸く我に返った瑞希はそう言って躯を起こすと申し訳なさそうに柊に謝った
「アンコール曲の最後のとこだったから気にしないで大丈夫。それより、シャワー浴びてすっきりして来た方がいいよ」
そう言って瑞希の両腕を引っ張って立たせてやる。多分瑞希の下肢が汚れてしまったことを、柊は気付いていると思うと瑞希は目も合わせることもできなかった。
「ねぇ、瑞希」
立ち上がった瑞希の腕を掴んだまま柊は言う。
「俺は瑞希と契約を結んでも構わないよ。契約結ぶと発作を癒す効果も長持ちするし、発作の予防もできたらライブも生放送も安心だよね」
女の子達が憧れてやまない美しい黒い瞳で柊は瑞希を諭すように言った。
センチネルとガイドの契約とはセックスをして、粘膜同士を触れ合わせ、精液を受け入れることで、結ばれる。契約を結ぶと癒しの効果が何倍にも増し、今よりも発作を起こす頻度が減り、躯にかかる負担もかなり軽くなる。
だが、瑞希は静かに首を振った。
「それは駄目だって……わかってるだろ?」
センチネルは一度ガイドの精液を受けて刻印を結んでしまうと、そのガイド以外の癒しを受けることができなくなる。即ちセンチネルは契約を結んだガイドに一生依存して生きていかなければならなくなる。
「大丈夫。そしたら一生瑞希に俺の精液あげるって約束するよ」
綺麗な顔をしてさらりととんでもないことを言う柊に瑞希は動揺する。
「ばっ……バカ、柊。お前なに言ってんだよ。俺の発作近くで見てるから同情して言ってるんだろうけど、俺がお前だけの癒ししか受けられないようになるんだぞ? 一生依存されることがどんなに重いことかわかってないだろ」
瑞希の問いかけに柊はわからないと言うように首を傾げた。
「そうかな? 瑞希を重いとは俺は思わないけど」
一生を左右することなのに、大したことないとでも言うような柊の口ぶりに瑞希は溜め息を吐く。
「やっぱわかってない。わかってないお前と契約するなんてできない」
瑞希はそう言うと、柊にくるりと背を向けてシャワーを浴びに行ってしまった。
「わかってないのは、瑞希だよ。 俺がどんなに重いかまーったくわかってない」
早く俺がいないと生きていけなくなるようにしちゃいたいな……
そう小さく呟いた柊の声も表情も瑞希は気付かなかった。
「お待たせ、瑞希」
苦悶の汗でしっとりと濡れた瑞希の淡い綺麗な色の髪をそっと柊は指で分けて頬に手を当てる。
苦しそうな切ない呼吸の中、ねだるようにうっすらと開かれた瑞希のくちびるに誘われるように柊はくちびるを重ねる。柊のくちびるが触れた瞬間から瑞希の強烈な痛みや吐き気がやわらかく引いていく。
「……っぁ」
全身の細胞が柊の与えるくちびるの感覚を悦び、瑞希の躯は細かく痙攣する。くちびるからどんどん苦痛がやわらいでくるので、瑞希はもっともっと柊が欲しくて堪らなくなる。少し開いた瑞希のくちびるのナカに柊が舌を差し込むと、ちいさな子供がミルクを飲むように瑞希は舌に吸い付いた。ちゅる、と小さな音がやたらと大きく響いた。ちいさな部屋の中には二人の熱とあまい汗の香りが立ち込めていた。
「ん……っん………んっ」
綺麗な顔をしてはいるが、普段は男らしい瑞希が瞳を潤ませて顔を紅潮させて、必死に柊の舌を吸う様はひどく庇護欲を誘う。
震える躯で瑞希はこく、こくと柊の唾液を必死に飲む。瑞希の全身の細胞が悦んで柊を求めていて、 必死に柊にしがみつく。瑞希は欲しくて欲しくて気が狂いそうだった。
「……ひっ……ぅ」
うまく呼吸も出来ずに喘ぐ瑞希に大丈夫だよ、というように背中を柊が撫でると安心したのか瞳にたまっていたものが零れた。
そう、『ガイド』が『センチネル』に施すことのできる更なる治療法というのは、ガイドとセンチネルが躯の粘膜を触れあわせ、体液を受け入れる方法である。
ゾーンと呼ばれる発作状態からガイドの癒しによって抜け出す感覚は他に何も考えられないほどに気持ちがよい。トランス状態の瑞希に圧倒的な快感をもたらす。
「……柊っ……んんっ」
柊からもたらされるとろりと甘美な快感に何も考えられなくなる。
不快な感覚が躯から抜け、甘い快感に満たされてゆく。脳内に快感物質を直接流し込まれているようで、どうしようもなく気持ちよくて、理性を失ってしまう。
「んんっ…… もっと……欲し……っ」
気持ちよくて、気持ちよくて、もっと欲しくなって柊の首筋にぎゅっとしがみつく瑞希は恐らく殆んど意識は飛んで無意識の仕草となっている。深く合わせている柊のくちびるが、無意識の瑞希の可愛い言動に満足そうに笑う。
瑞希の咥内に差し込まれた柊の舌と甘く舌を絡め合うと、瑞希の躯は流れ込んでくる溺れるほどの快感に包まれて、びくびくと震えた。
「は……は………」
恐らく性器に触れずにして達してしまった瑞希。 吐息を乱す瑞希の目尻にくちびるを落としてなだめるように頭を撫でてやる。濡れたくちびるを柊が親指でそっと拭ってやると、徐々に瑞希の瞳の焦点が合ってくる。
「ごめ……助かった。俺、また迷惑かけたよな」
漸く我に返った瑞希はそう言って躯を起こすと申し訳なさそうに柊に謝った
「アンコール曲の最後のとこだったから気にしないで大丈夫。それより、シャワー浴びてすっきりして来た方がいいよ」
そう言って瑞希の両腕を引っ張って立たせてやる。多分瑞希の下肢が汚れてしまったことを、柊は気付いていると思うと瑞希は目も合わせることもできなかった。
「ねぇ、瑞希」
立ち上がった瑞希の腕を掴んだまま柊は言う。
「俺は瑞希と契約を結んでも構わないよ。契約結ぶと発作を癒す効果も長持ちするし、発作の予防もできたらライブも生放送も安心だよね」
女の子達が憧れてやまない美しい黒い瞳で柊は瑞希を諭すように言った。
センチネルとガイドの契約とはセックスをして、粘膜同士を触れ合わせ、精液を受け入れることで、結ばれる。契約を結ぶと癒しの効果が何倍にも増し、今よりも発作を起こす頻度が減り、躯にかかる負担もかなり軽くなる。
だが、瑞希は静かに首を振った。
「それは駄目だって……わかってるだろ?」
センチネルは一度ガイドの精液を受けて刻印を結んでしまうと、そのガイド以外の癒しを受けることができなくなる。即ちセンチネルは契約を結んだガイドに一生依存して生きていかなければならなくなる。
「大丈夫。そしたら一生瑞希に俺の精液あげるって約束するよ」
綺麗な顔をしてさらりととんでもないことを言う柊に瑞希は動揺する。
「ばっ……バカ、柊。お前なに言ってんだよ。俺の発作近くで見てるから同情して言ってるんだろうけど、俺がお前だけの癒ししか受けられないようになるんだぞ? 一生依存されることがどんなに重いことかわかってないだろ」
瑞希の問いかけに柊はわからないと言うように首を傾げた。
「そうかな? 瑞希を重いとは俺は思わないけど」
一生を左右することなのに、大したことないとでも言うような柊の口ぶりに瑞希は溜め息を吐く。
「やっぱわかってない。わかってないお前と契約するなんてできない」
瑞希はそう言うと、柊にくるりと背を向けてシャワーを浴びに行ってしまった。
「わかってないのは、瑞希だよ。 俺がどんなに重いかまーったくわかってない」
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