平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました

ゆなな

文字の大きさ
上 下
122 / 123
番外編

ホリディパーティのお客様

しおりを挟む
「ユノ! 久しぶり! ツリーのてっぺんの星、失くしちゃったって言ってたけど出てきたの? よかったね。やっぱりツリーのてっぺんには星がなくちゃ決まらないよね」
 キリヤとユノが再会を果たしてから数日後のホリデーパーティの当日、ユノの家のドアベルを勢いよく鳴らしたのはサランだった。
「あれ? 予定変更になってホリデーパーティには来ないことになったってキリヤから聞いていたけれど」
 ユノはサランを見て驚いてはいたが、久しぶりの親友の姿に嬉しそうに顔を綻ばせた。
「予定変更? 僕はそんなこと言ってないけど……そんな話だった?」
 サランはそう言って後ろにいるアンドレアとイヴァンを振り返る。
 すると、ユノの後ろに立っていたキリヤがため息交じりに言った。
「僕がユノのところに行くからお前たちは今年はクルリ村に来るのは遠慮して、僕がいない間王都で留守を守ってくれる、そういう話じゃなかったか?」
 キリヤは手でこめかみを抑えるように顔を覆った。
「だって、僕がこの前クルリ村に来たのは去年の夏の休暇だったんですよ?! 一年半もユノに会っていなくて僕もう限界でしたし。キリヤ様に遠慮する理由なんて別にないですし。キリヤ様と約束したのはイヴァンとアンドレアで僕じゃないですし」
 キリヤの睨みにも動じず肩を竦めるサラン。
「一年半くらいなんだ! 僕なんて何年ぶりだと……!」
「それはキリヤ様の個人的な事情でしょ。僕には関係ないですから」
 サランがそう言い返すとキリヤは再び溜息をついた。
「サランとは……まぁ確かに約束していなかったが……イヴァンとアンドレアはどういうことだ」
「僕もよく考えたら、王都の様子は水晶や『占術』でもチェックできるから王都にいなくても留守は守れるなぁって思って。久しぶりに騒がしい王都を離れてゆっくり働くのもいいかなって。朝楓の森を散策してから仕事するなんて最高じゃない? 雪景色のホリデーパーティも体験してみたかったし。ワーケーションって言うんだってね、こういうの。王宮でも積極的に取り入れてみるのはどうかなとも思ってさ。あ、ユノこれお土産」
「わ。王都のマカロンに城下町のショコラ。紅茶もこんなに沢山……ありがとうございます」
 イヴァンが土産の品を魔法で取り出すと、ユノの腕の中に収まった
「……俺は止めたんですけど……二人の邪魔じゃないかって」
 そんなことを言いながらもちゃっかり一緒に来ているアンドレア。
「は? アンドレア大して止めてないでしょ。それどころか侍従に皆で飲むお酒とかおつまみ沢山王都の百貨店に買いに行かせていたくせに。僕たちのせいにしないでよ」
 サランが眉を顰める。
「イヴァンもサランも図々しすぎる。そんなお前達だけで行かせるわけにはいかないから、俺は付いてきたわけであってな!」
「いーや、僕の占術によるとアンドレアだってここにかなり来たいと思っていたはずだ。責任転嫁は良くないよ」
 イヴァンは飄々とアンドレアに言う。
「そういった個人の気持ちを探るようなことに『占術』を使うことは禁止されているはずだぞ」
 アンドレアが眉を顰めたがイヴァンは全く気にする様子は見せない。
「うん。だからアンドレアにしか使ってないよ。大丈夫」
「大丈夫じゃないだろうが!」
「まぁまぁ。落ち着いて。折角遠くから来てくれたのに、ここで立ち話もなんだから入って下さい。俺達もちょうどお茶をしていたところなんです。皆の分も温かい飲み物用意しますね。上着そこに掛けたらリビングに入って座って待っていてください」
 そう言ってユノはパタパタと一足先に部屋の奥に入っていった。
「おい……お前たち来ないって言ってたよな?」
 ユノが行ってしまうと、キリヤは地を這うような声で三人を睨んだ。
「……我々は夜は『メープルの宿屋』に部屋を取っていますから……」 
 アンドレアが申し訳無さそうに頭を下げる。『メープルの宿屋』というのはルカとニコライの宿屋のことだ。
「はぁ? いつものとおり僕はユノの家に泊まるからメープルには泊まんないよ? キリヤ様がアンドレアとイヴァンとメープルに行ってよ」
「……いつも来客はユノの家ではなく宿屋に泊まるのでは?」
 サランの言葉にキリヤは素早く反応した。
「僕たちはいつもメープルに泊まらせてもらっていたけれど、サランだけは学園で何年も同室だったからってユノの家に泊まっているんだよ」
「は? 聞いてないぞ! ユノっ!ユノー!」
 イヴァンの話を聞くと、一国の王子とは思えないほどバタバタと騒がしくユノを追いかけて部屋の奥にキリヤは入って行った。


「……本当にちゃんともう一度結ばれたんだね……幸せそうで、よかった」
 上着を掛けながらサランがほぅ……と安堵の息を零して言った。
 目には光るものがあった。
「素直に幸せな二人の姿が見たかったって言えばいいのに」
 イヴァンは苦笑しながらサランに言った。
「お前だってそうじゃねぇか」
 アンドレアは呆れたようにイヴァンの肩を小突く。
「僕はサランに合わせてあげたの」
「イヴァンにそんなこと言うアンドレアだって、キリヤ様がユノに振られてストーカーになってクルリ村に滞在しているんじゃないかとか変な心配してたじゃないか」
 小声で三人は囁きあって。
 そして。
「あー、でも本当によかった……」
 三人は小さな声は優しく重なった。


 そしてリビングに入っていった三人たが、部屋の様子を見て小さく固まった。
「……二人の仲が元に戻ったのはよかったけどさぁ……」
 サランが呆れたように言った。
「いつもはテーブルの周りに等間隔でクッションは置いてあるのにねぇ」
 イヴァンはくくっと低く笑う。
 普段はテーブルの周りに等間隔で置かれているクッションは全部纏めて1箇所に置かれていて、二人がそこで居心地良くそれらに凭れて過ごしていただろうことが伺えた。
 そして二人で一緒に包まっていたと思われる一枚のブランケット。すぐ横には木製のトレーには二つのマグカップと食べかけのメープルケーキが載った皿。
 二人が温かなリビングでぴったりとくっついて過ごしていた様子がありありと滲み出ていた。
「いくらユノの家のリビングが狭くてもこんなにくっついてましたー!って様子がわかりすぎるとかってある?! 部屋の様子だけでこんなに惚気ける人達いる?!」
「まぁ……来ないって言ってたのに、急に来ちゃったからな……」
 そう呟いたアンドレアはユノが恥ずかしい思いをしないように、そっとクッションを等間隔に置き直してやったのであった。



おわり





    
しおりを挟む
感想 369

あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...