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番外編

還る場所3

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 ユノは身を起こし膝立ちになると、シャツとセーターを脱いでしまった。
 それから細身のスラックスのウエスト部分を緩め、少しだけ下にずらす。
「……っ」
 すると、ユノのもう一つの紋様が姿を見せた。そして、キリヤがそれに目が釘付けになり、息を呑んだのがわかった。
 元々は真っ白だったユノの下腹には蔓が複雑に絡み合ったような紋様が刻まれていた。
 腕の紋様ですら手袋でいつも隠して人に見せたことがなかったので、下腹に現れてしまった紋様は言うまでもなかった。
 ただでさえ貧相な男の体なのに、こんなところに紋様が現れてしまったら、どんなにユノを愛しているとはいえ、がっかりした気持ちにさせてしまうのは仕方がないことに思えた。
 キリヤの反応が怖くなり、ユノは傍に置いてあったブランケットを取って隠そうとした。
「待って。もっと見せて」
 キリヤはユノが隠そうとするのを止めた。
「で……でもっやっぱりこんなの嫌ですよね……っ」
「嫌なわけないっ……」
 キリヤもユノと同じように膝立ちになると、ぎゅっとユノを抱きしめた。
 隙間なくきつく抱きしめられると、下腹にキリヤの熱く猛ったものが当たってユノはびくりと体を震わせた。
「す……すまないっ……これはさっきから君と触れ合っていたらこうなってしまったのであって、決してこの紋様が色っぽいからという即物的な理由では……っ」
 いつだって落ち着いてクールなキリヤ。
 それが大勢の群衆を前にしようとも、恐ろしい敵を前にしようとも変わらない。
 それなのに、ユノの前だと時折物慣れない少年の様に狼狽えることがある。
「ふは……っ」
 それが愛おしくて、思わず吹き出してしまうと、彼も照れ臭そうに笑った。
「……ぁ……っ」
 キリヤは下腹にあるユノの紋様にそっと触れたので思わず甘い声を漏らしてしまった。
「……っ腕の紋様と同じだよ。僕を愛するがゆえに体に刻んだものだと思うと、愛おしく思えて仕方がない……嫌悪感なんて少しもないよ……」
 キリヤはそう言うと、膝立ちになっていたユノの前に跪いた。
「あっ……あっ……待って……キリヤっ」
 先程、左腕から手にかけての紋様を優しく愛撫したのと同じように、下腹の紋様にも唇で触れたのだ。
「待たない……触りたい……」
「ぁ……っぁ」
 キリヤは熱に浮かされたようにそう言うと、舌先で紋様を辿り出した。
 そっと優しく、でもユノが腰を引いても逃げられないように腕を絡めて。
 熱く濡れた舌が下腹の紋様の上を這う。
びくびくと下腹が波打つように震える
 内腿までも震えて膝立ちがしていられなくなると、もう一度ラグの上にそっと倒された。
「うぁっ……キリ……ヤ……ぁ」
 体勢を変えても紋様を舌で辿ることをキリヤはやめてくれない。
 あまりの熱に目尻から涙の雫が溢れると共に、熱くなってしまっていたユノの陰茎からも白濁が溢れだした。
「ひ……っあ……ぁ」
 ユノは達してしまったにもかかわらず、紋様を全て彼の舌でなぞり終わるまで啼かされた。
「……すごく、綺麗だ……ユノ」
 少し下げただけだったスラックスも下穿きも全部脱がされていて、一糸纏わぬ姿で柔らかなラグの上に横たわるユノを見てキリヤは恍惚とした表情で上から見下ろして言った。
 そして、彼もユノの上で着ていた黒いハイネックのニットを脱ぎ捨てた。
「……っ」
 数年前よりがっしりとして、かつて図書館の美術書で見た彫像を思い出すような裸体。
 当時はまだ残っていた少年らしい線の細さがすっかり抜け落ちて、溜息が出るほど美しい彼。
 綺麗だ、なんてユノではなくて彼に相応しい言葉だ。
 比べて当時よりも更に痩せてしまった上に多くのものが刻まれてしまった自分の裸は恥ずかしいのに、彼が美しい宝物に触れるようにユノに触れるから動けない。
 長く美しい指がユノの頬をなぞった後、とびきり美しい顔がまたユノにそっと近づく。
「ユノ……」
 低く掠れた彼の声。
 甘い吐息が触れたあとに唇が重なると、以前よりも少しだけ長くなった髪がさらりと流れてユノの頬を擽る。
 下腹を愛撫していた彼の唇と舌が先ほどよりも熱く感じられて、ユノはどこまでも甘く溶かされていくみたいだった。
 たまらなくなってキリヤの逞しい首に腕を回すと、彼の腕もぎゅっときつくユノに回された。
 ぴったりと二人の胸が重なって、破裂してしまいそうなくらい激しく脈打つ鼓動。
「っあ……」
 ようやく唇を離した彼がユノの首筋に吸い付いたのだ。
「ここから甘い匂いがすごくする……」
「んん……っ」
 そう言って、ユノの首筋を何度も甘噛みしながら、指先が再び下腹の紋様をなぞり出したのだ。
 下腹の紋様に触れられると、自分の意思とは関係なく体がびくびくと震えてしまう。
「ユノ……ココ僕に触られるの、好き?」
「あ……っ」
 臍の下あたりの紋様をぐっと指で押され、ユノは甘い声を漏らしてしまう。
 問いに答えられなくて、ただ耳の端まで真っ赤に染め上げるとキリヤは喉の奥で獰猛に笑った。
「んん……っ」
 そして、何かを期待するかのようにツンと立ち上がってしまった胸の先にキリヤが吸い付いた。
 甘い声を漏らすのが恥ずかしくて、我慢したいのに、溶けそうなほど甘ったるいものが喉元をせり上がってきて抑えることができない。
「ああっ……ん」
 下腹を紋様の上を丁寧になぞっていた指先がにゅるりと音を立ててユノの陰茎に絡みついたのだ。
 胸の先を熱い舌で転がされながら、そこに触れられると、受け入れることをかつて彼に教えられた後孔がひくりと収縮したのがわかった。
 以前よりもずっとユノの考えていることが分かるようになってしまったキリヤは、陰茎から垂れるぬめりを指先に纏わせて、そのまま後孔に指先を押し当てた。
「あ……あ……」
 くち……と音を立てて彼の指先のほんの先。爪の部分だけがユノの体内に潜った。
「すごい……ユノ、欲しそうにひくひくしてる……」
 後孔が彼を求めて収縮してしまうのを恥ずかしくて止めたいのに、ぐずぐずに溶けてしまったユノの意思では止められない。
 このままではきっと彼にバレてしまう。
そう思うのに、思えば思うほど心も体もずっと彼を求めていた事実に抗えなくて、そこが恥ずかしいほどにキリヤの指先を締め付けてしまうことが抑えられない。
「あ……っ」
 つぷ……と指先がゆっくり中に潜ってくる。
「……可愛い……ユノ……このままユノが入れてっておねだりしてくれまでいじめてみたいけれど……今は僕が我慢できそうにない……っ」
 キリヤは堪らない、というような声で言うと、指を振った。
 すると、どこからともなく何か液体の入った瓶が現れた。
 それは中を慣らすようにゆっくりと出し入れしている指の上で少し傾いて、とろりとした液を零した。
「あっ……あっ………キリヤぁ……っ」
 泥濘んだ隘路はすっかり火照って、まるで熟れた果実のようだった。
 キリヤの指が深い快楽を生むポイントをじっくりと擦ると、もの欲しそうに腰が揺れてしまう。
 だって、ずっとずっとキリヤが欲しくて、恋しくて焦がれた夜を数え切れないくらい過ごしてきたのだ……
「ユノ……もしかして僕との初めての夜のことを思い出して、自分でココを慰めたりした?」
 甘くセクシーな声での質問。
 初めてのときより快楽を拾うのが早くなっているって気付いて、答えはわかっているくせに。
「ひ……っぁぁ」
 答えないでいると指を意地悪に揺らされた。
「……っだって初めてだったのに……っ」
 わけが分からなくなるほど気持ちよくされてしまったのだ。
 独り寝が辛い夜、初めての夜の甘い記憶は何度も何度もユノを苛んだのだ。
 ぽろぽろと涙を零しながらそのことを切なく訴えると、キリヤは自分で聞いたくせに、「くそ……っ」と彼らしくもない悪態を吐いてずるり、と指を引き抜いた。
「あぁっ……っ」
 キリヤは性急に熱く固く猛ったものを押し当てると、ぐっと中に押し込んできた。
 久しぶりに感じるそれは、大きくて苦しいのに、進むほどにお腹の奥から切ないほどの熱と甘い痺れがせり上がってきた。
「あ……っ」
 一番奥に感じたとき、少量だが精液を零して甘くイってしまったユノの沢山の涙で濡れた目もとにキリヤは唇を落としながら口を開いた。
「……っからかったわけじゃない……っく……僕も……だったから……っ」
 僕も初めての夜のユノを思い出しながら、何度も自分を慰めたよ、と切なく言う。
「あっ……キリヤぁぁ」
「ユノ……っ……ユ……ノっ」
 それから、ユノ体の一番奥で快楽に震える吐息を混ぜ込みながらユノの名前を何度も読んだ。
「んんっ……」
 口づけが色んなところに落とされる。
 左手の紋様にも愛おしくて堪らないと何度も唇で触れながら、ユノの体内をじっくり味わうように、どろどろに溶けた粘膜にペニスを擦り付けられる。
 快楽に溶けたキリヤの表情に、ユノはどうにかなりそうだった。
 あんなにも焦がれた腕の中にいることが信じられなくて、また鼻の奥がツン、として涙が溢れる。
 泣き虫、といいながらユノの涙を舐め取るくせに、キリヤの目元も赤く濡れていた。
「ユノ……愛してる……っ」
 そう言って下腹の紋様をとても愛おしいと言うように撫でた。
「あっ……キリヤぁっ……俺もっ……俺も愛してる……っ」
 彼のペニスを奥深くまで感じながら、そこを優しく撫でられて、ユノは深い絶頂に達した。
「く……ぁっユノ……っ」
 キリヤの熱い体液を一番奥で感じながら、あまりの快楽に溢れた涙はこれ以上無く甘く幸せなものだった。
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