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8章
勝利宣言
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王都に到着すると、城下町はそれはそれは大きな騒ぎだった。
国王の戴冠式の時も驚いたが、その比ではなかった。
馬車は何両も用意され、一番先頭の豪奢な馬車にキリヤとイヴァン、それと騎士団長を務めるアンドレアが乗った。
ユノは後ろに続く馬車にアンドレアの騎士団員と共に乗り込んだ。
「キリヤ様!! おめでとうございます!!」
「光の魔法使い万歳!!」
沿道では人々は声の限りにキリヤの勝利を祝っていた。
勝利を祝うための花火が何度も打ち上げられる中、務めを果たし無事に生還してきたキリヤは国民の希望の光なのだと、後ろの馬車から様子を見ていたユノはまざまざと感じさせられた。
国民の期待に応えた愛する人の姿を誇らしく思いながらも、あまりの眩しさに目がくらみそうだった。
ユノは自分とは天と地ほども違う輝きの差にただただ圧倒された。
馬車はそのまま民衆の大歓声に背を押されるように連なって王宮の敷地内に入った。
そして、そのまま王宮の壮大な正面玄関に馬車はずらりと付けられた。
先頭の馬車から降り立つキリヤに従うようにアンドレアとイヴァン。
三人は多くの近衛兵がずらりと両サイドに立つ真紅の絨毯が敷かれた階段を登った。
三人と少し距離を空けた後ろを騎士団員達と一緒にユノも歩いた。
「この階段を昇った先に『国王の間』があって、そこで勝利の報告を国王にすると思いますよ」
騎士団員の一人が初めて『国王の間』に入るユノにそっと教えてくれた。
「国境周辺の土地に詳しいだけじゃなく魔法がこんなに得意な方が国境警備隊に居て本当に助かりました。ユノさん、きっと国境警備隊から階級がめちゃめちゃ上がりますよ。もしかしたら王都の騎士団に、と言うことになるかもしれませんね」
騎士団員はみんなユノのことをクルリ村にいた腕の立つ国境警備隊だと信じ切っているようだった。
階段を登り切ると、見たことがないくらい大きく荘厳な扉が見えた。
扉前に居た二人の近衛兵が左右の扉を魔法で開けると共にファンファーレが鳴り響いた。
「『光の魔法使い』キリヤ様のご帰還です」
大きな声が響くと、扉が開かれて王宮内で一番豪華絢爛である『国王の間』が目の前に広がった。
王宮前の階段からずっと続く真紅の絨毯の先には玉座があり、国王が座っているのが見えた。
その横にはキリヤの兄である王太子とシュツバルト神殿の大神官も帰りを待ちわびていたように控えていた。
絨毯の上をキリヤを先頭に進んでいく。
王の元へ進む絨毯の両サイドにはぎっしりと座席が用意されていて、そこには重臣たちや有力な貴族たちが座っているようだった。
アンリ学園長の姿もありそうだと思い、ユノは見つからないようにそっと俯いた。
「緊張しますよね」
ユノの様子を見て隣で歩いていた騎士団員が小声でそう言った。
それに頷くと、隊列は止まった。
先頭であるキリヤだけが隊列を残して段をいくつか上った先にある玉座の前で跪いた。
段の下に残ったイヴァンやアンドレア、騎士団員達もキリヤに倣って跪いたのでユノも跪いた。
「国王様にご報告します」
キリヤの凛とした声が『国王の間』に響いた。
そして、堂々とキリヤが勝利の報告をし、無事に封印したドレイクの黒い魔法石を大神官に託すと、『国王の間』に集まった多くの者たちから会場が割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
中にはキリヤの姿に涙を流している者までいた。
実に眩しい光景だった。
「よくやった、キリヤ」
国王はキリヤにねぎらいの言葉を掛け、名誉の勲章を授与した。
「疲れているだろう。堅苦しいことや戦後の処理は明日以降進めていくこととして、今宵は最前線で戦ってくれたお前と戦士達の為の宴を用意した。好きに楽しんでくれ」
勝利の報告の式典が一通り終わると、国王は父親らしい顔を覗かせ、国王が指を振った。
すると、厳かな会場が一転し、華やかで明るいパーティ会場に一瞬で切り替わった。
現れたテーブルには豪華な料理が並び、現れた楽団が勝利を祝う壮大な音楽を演奏する。
キリヤがよく聞いているグレリーの『勝者のシンフォニー』が流れ、キリヤが王宮の人々に愛されていることがユノには伝わってきた。
いくつか学園のパーティに参加したユノだったが、やはり王宮での宴となるとその規模や華やかさは桁違いでユノは目を丸くした。
「ここに集っている者たちも、国のために戦ってくれた者を労ってやってくれ。今夜は戦士たちの勝利に祝杯を存分に上げよう」
国王がそう宣言すると、宴が始まった。
国王の戴冠式の時も驚いたが、その比ではなかった。
馬車は何両も用意され、一番先頭の豪奢な馬車にキリヤとイヴァン、それと騎士団長を務めるアンドレアが乗った。
ユノは後ろに続く馬車にアンドレアの騎士団員と共に乗り込んだ。
「キリヤ様!! おめでとうございます!!」
「光の魔法使い万歳!!」
沿道では人々は声の限りにキリヤの勝利を祝っていた。
勝利を祝うための花火が何度も打ち上げられる中、務めを果たし無事に生還してきたキリヤは国民の希望の光なのだと、後ろの馬車から様子を見ていたユノはまざまざと感じさせられた。
国民の期待に応えた愛する人の姿を誇らしく思いながらも、あまりの眩しさに目がくらみそうだった。
ユノは自分とは天と地ほども違う輝きの差にただただ圧倒された。
馬車はそのまま民衆の大歓声に背を押されるように連なって王宮の敷地内に入った。
そして、そのまま王宮の壮大な正面玄関に馬車はずらりと付けられた。
先頭の馬車から降り立つキリヤに従うようにアンドレアとイヴァン。
三人は多くの近衛兵がずらりと両サイドに立つ真紅の絨毯が敷かれた階段を登った。
三人と少し距離を空けた後ろを騎士団員達と一緒にユノも歩いた。
「この階段を昇った先に『国王の間』があって、そこで勝利の報告を国王にすると思いますよ」
騎士団員の一人が初めて『国王の間』に入るユノにそっと教えてくれた。
「国境周辺の土地に詳しいだけじゃなく魔法がこんなに得意な方が国境警備隊に居て本当に助かりました。ユノさん、きっと国境警備隊から階級がめちゃめちゃ上がりますよ。もしかしたら王都の騎士団に、と言うことになるかもしれませんね」
騎士団員はみんなユノのことをクルリ村にいた腕の立つ国境警備隊だと信じ切っているようだった。
階段を登り切ると、見たことがないくらい大きく荘厳な扉が見えた。
扉前に居た二人の近衛兵が左右の扉を魔法で開けると共にファンファーレが鳴り響いた。
「『光の魔法使い』キリヤ様のご帰還です」
大きな声が響くと、扉が開かれて王宮内で一番豪華絢爛である『国王の間』が目の前に広がった。
王宮前の階段からずっと続く真紅の絨毯の先には玉座があり、国王が座っているのが見えた。
その横にはキリヤの兄である王太子とシュツバルト神殿の大神官も帰りを待ちわびていたように控えていた。
絨毯の上をキリヤを先頭に進んでいく。
王の元へ進む絨毯の両サイドにはぎっしりと座席が用意されていて、そこには重臣たちや有力な貴族たちが座っているようだった。
アンリ学園長の姿もありそうだと思い、ユノは見つからないようにそっと俯いた。
「緊張しますよね」
ユノの様子を見て隣で歩いていた騎士団員が小声でそう言った。
それに頷くと、隊列は止まった。
先頭であるキリヤだけが隊列を残して段をいくつか上った先にある玉座の前で跪いた。
段の下に残ったイヴァンやアンドレア、騎士団員達もキリヤに倣って跪いたのでユノも跪いた。
「国王様にご報告します」
キリヤの凛とした声が『国王の間』に響いた。
そして、堂々とキリヤが勝利の報告をし、無事に封印したドレイクの黒い魔法石を大神官に託すと、『国王の間』に集まった多くの者たちから会場が割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
中にはキリヤの姿に涙を流している者までいた。
実に眩しい光景だった。
「よくやった、キリヤ」
国王はキリヤにねぎらいの言葉を掛け、名誉の勲章を授与した。
「疲れているだろう。堅苦しいことや戦後の処理は明日以降進めていくこととして、今宵は最前線で戦ってくれたお前と戦士達の為の宴を用意した。好きに楽しんでくれ」
勝利の報告の式典が一通り終わると、国王は父親らしい顔を覗かせ、国王が指を振った。
すると、厳かな会場が一転し、華やかで明るいパーティ会場に一瞬で切り替わった。
現れたテーブルには豪華な料理が並び、現れた楽団が勝利を祝う壮大な音楽を演奏する。
キリヤがよく聞いているグレリーの『勝者のシンフォニー』が流れ、キリヤが王宮の人々に愛されていることがユノには伝わってきた。
いくつか学園のパーティに参加したユノだったが、やはり王宮での宴となるとその規模や華やかさは桁違いでユノは目を丸くした。
「ここに集っている者たちも、国のために戦ってくれた者を労ってやってくれ。今夜は戦士たちの勝利に祝杯を存分に上げよう」
国王がそう宣言すると、宴が始まった。
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