平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました

ゆなな

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6章

氷の洞窟1キリヤ視点

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※ここからキリヤ視点

『氷の洞窟』にいる可能性が高いと気付き、すぐにキリヤに知らせに来たアンドレアとサランには感謝をするしかない。
『氷の洞窟』はキリヤの生家であるシュトレイン家の氷の竜が生まれえる場所だ。
番の竜がその洞窟の奥に住み、今も小さな子供の竜を育てているところだ。
大きくなった竜はシュトレイン家のものとなるが、独り立ちするまでは父竜と母竜の元で過ごす。
『氷の洞窟』は『守りの氷』を初めとする様々な資源にも恵まれているが、子育て中の母竜はとても気が立っているため採掘には母竜を苛立たせないように気を付けなければならない。
母竜を怒らせてしまうと、『氷の洞窟』の入り口を凍らされ、洞窟から出ることが出来なくなってしまう。
母竜の怒りが溶けた頃には入り口は開くが、怒りが解けるまでは人はとてもじゃないが生きていられない。
怒りが解ける前に『氷の洞窟』を開くことができるのは、唯一母竜の息子であるシュトレイン家の氷の竜の帰還をもってしてのみである。
何者かがユノを攫って『氷の洞窟』に連れて行ったのだとしたら、入り口を凍らせるように仕向けるはずだ。
だから先に『氷の洞窟』に向かわず、氷の竜を保有するキリヤの元に知らせに来たことは、非常時の中でもとてもよかったことだ。
だが、『氷の洞窟』の中はとても厳しい寒さだ。
すぐに最悪の事態になってしまうことが考えられる。
キリヤは彼の氷の竜に語り掛けた。
「今日お前に紹介しようと思っていたユノが、お前の実家で危険な目に遭っているんだ。お前にとっては居心地のいい生家だが、人間には危険な場所だ。どうか助け出すために力を貸してほしい」
キリヤが言うと、氷の竜は凍てつく空気の中、大きな鳴き声を上げた。

『氷の洞窟』の入り口に到着すると案の定、氷で固く閉ざされていた。
「できるか?」
キリヤが相棒である氷の竜に呼びかけると、いつもより高い声を上げた。
耳を劈くような声を二度、三度と氷の竜が声を出すと、入り口の氷が崩れだした。
「よくやった! お前の母上に声が届いたみたいだ! このまま洞窟の中に入ってくれ!」
氷の竜はキリヤの声を聞くと、彼を背に乗せたまま『氷の洞窟』の中に入った。
洞窟の中は、凍てつくような寒さだった外よりもなお寒く、すべてが氷でできていた。
洞窟の中には轍があり、つい最近ここを馬車で通ったことが良く分かる。
壁面も床も全てが氷でできている洞窟の奥まで轍を辿って進んでいく。
明かりはキリヤの持つランタンのみ。
暗いところでも目が利く竜は壁にぶつかることもなく洞窟を進んでいくが、キリヤは小さな橙色の炎が照らす光を頼りにユノの姿を探す。
小さなランタンの光だけでは中々照らせない。
目を凝らしながらだと、氷の竜にもゆっくり飛んでもらわなければならなくなる。
その時だった。
洞窟の奥に青く光るものが見えた。
同時に呼応するように、キリヤの胸元にある魔法石の付いた指輪も青く強く光った。
その光は見覚えがありすぎるものだった。
「あの青い光に向かって急いでくれ」
告げると賢い竜は大きく羽根を羽ばたかせ、あっという間に青い光の元まで飛んだ。
もうすぐ母竜のいる最奥に着いてしまうのではないかというくらい洞窟の奥。
とても暗くて、ランタンの光だけでは難しかったかもしれない。
遠くに光る青い光とキリヤの胸元の青い光が重なった先を見ると氷の地面に倒れている人影が見えた。
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