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6章
ユノの行方1
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ユノが出て行ったあとサランはどこか不安な気持ちに襲われていた。
窓の外は一面の雪景色。
王都育ちのサランは雪景色にはあまり馴染みがない。
汽車を降りた途端に感じた、刺すように冷たい空気にも馴染みがない。
だから何となく不安に感じてしまうのだろうか。
「でも赤の竜の鱗は欲しいしなぁ」
アンドレアの赤の竜の鱗は竜の体から離れてもとても温かいらしい。
その鱗を小さく砕いて、丸くなるように削ればポケットに入れておくといつまでも温かいポケットウォーマーが作れる。
しかも竜の鱗で作ったポケットウォーマーは体の芯まで温めてくれる。
明日からの採掘作業に全身全霊をかけて参加するであろうユノにそれをプレゼントしたい。
ずっと『守護神の石』を作って村を二度と戦火で焼かれないようにしたいと言っていたユノは、きっと大分無理をするだろうから。
窓の外に見える雪景色。
雪はしんしんと降っていて、更に厚く降り積もる様子だった。
なんだかサランの心配が降り積もっているような気がしてならなかった。
ユノは北部出身で寒さにはサラン以上にずっと慣れているのに、この胸騒ぎは何だと言うのか。
「おい、準備ができた。行くぞ」
「アンドレア………」
呆れた目で突然現れて部屋にずかずかと入ってきたアンドレアを見ながらサランは立ち上がり、二人はいつものように小突き合いながら廊下に出た。
「この時間に約束していたんだから別にノックは必要ないだろう? あれ? ユノは? キリヤ様は今夜ユノと会うって浮かれて……いや楽しそうに準備をするために学園の宿舎には寄らずそのまま別邸に向かわれたから、まだ待ち合わせではないと思うんだが」
話しながら二人並んで宿舎の廊下を歩く。
「うん。ユノはトリトン教授が打ち合わせがあるから来るようにって呼ばれて行っちゃった」
「トリトン教授が? 既に現地入りして明日からの発掘に備えて打ち合わせは全て終わっているはずだ。シュリが一足早くこっちに来ていたのも、『占術』で『守りの氷』が多く発掘できそうな場所を探り下準備をしっかり済ますためだったんだぞ。さっき現地入りしたキリヤ様に無事にすべての準備が終わったと報告しているシュリの姿も見た」
首を傾げながら言うアンドレアのセリフにサランの胸はより一層ざわついた。
「うそ……だってそんな。伝言してくれたのはジェイコブで……あっ」
「サラン?」
「ジェイコブ……フィザード家の侍従だ……」
サランの顔が真っ青になる。
グラグラと頭が揺れるみたいな感覚がして、足元がふらついた。
「おい。大丈夫か? サラン」
「だって……だって……ジェイコブはずっと僕らの友達で……こんな伝言に利用されているって知ったら……っ」
「大丈夫だ。落ち着け。まずはユノを探そう。本当にトリトン教授はなにかユノに用事があったのかもしれない。まだ事件に巻き込まれたと考えるのは早計だ」
アンドレアが真っ直ぐにサランの目を見て言った。
窓の外は一面の雪景色。
王都育ちのサランは雪景色にはあまり馴染みがない。
汽車を降りた途端に感じた、刺すように冷たい空気にも馴染みがない。
だから何となく不安に感じてしまうのだろうか。
「でも赤の竜の鱗は欲しいしなぁ」
アンドレアの赤の竜の鱗は竜の体から離れてもとても温かいらしい。
その鱗を小さく砕いて、丸くなるように削ればポケットに入れておくといつまでも温かいポケットウォーマーが作れる。
しかも竜の鱗で作ったポケットウォーマーは体の芯まで温めてくれる。
明日からの採掘作業に全身全霊をかけて参加するであろうユノにそれをプレゼントしたい。
ずっと『守護神の石』を作って村を二度と戦火で焼かれないようにしたいと言っていたユノは、きっと大分無理をするだろうから。
窓の外に見える雪景色。
雪はしんしんと降っていて、更に厚く降り積もる様子だった。
なんだかサランの心配が降り積もっているような気がしてならなかった。
ユノは北部出身で寒さにはサラン以上にずっと慣れているのに、この胸騒ぎは何だと言うのか。
「おい、準備ができた。行くぞ」
「アンドレア………」
呆れた目で突然現れて部屋にずかずかと入ってきたアンドレアを見ながらサランは立ち上がり、二人はいつものように小突き合いながら廊下に出た。
「この時間に約束していたんだから別にノックは必要ないだろう? あれ? ユノは? キリヤ様は今夜ユノと会うって浮かれて……いや楽しそうに準備をするために学園の宿舎には寄らずそのまま別邸に向かわれたから、まだ待ち合わせではないと思うんだが」
話しながら二人並んで宿舎の廊下を歩く。
「うん。ユノはトリトン教授が打ち合わせがあるから来るようにって呼ばれて行っちゃった」
「トリトン教授が? 既に現地入りして明日からの発掘に備えて打ち合わせは全て終わっているはずだ。シュリが一足早くこっちに来ていたのも、『占術』で『守りの氷』が多く発掘できそうな場所を探り下準備をしっかり済ますためだったんだぞ。さっき現地入りしたキリヤ様に無事にすべての準備が終わったと報告しているシュリの姿も見た」
首を傾げながら言うアンドレアのセリフにサランの胸はより一層ざわついた。
「うそ……だってそんな。伝言してくれたのはジェイコブで……あっ」
「サラン?」
「ジェイコブ……フィザード家の侍従だ……」
サランの顔が真っ青になる。
グラグラと頭が揺れるみたいな感覚がして、足元がふらついた。
「おい。大丈夫か? サラン」
「だって……だって……ジェイコブはずっと僕らの友達で……こんな伝言に利用されているって知ったら……っ」
「大丈夫だ。落ち着け。まずはユノを探そう。本当にトリトン教授はなにかユノに用事があったのかもしれない。まだ事件に巻き込まれたと考えるのは早計だ」
アンドレアが真っ直ぐにサランの目を見て言った。
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