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5章

冬の休暇~ユノの家2~

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ユノを安心させるようにキリヤは言ったが照れ臭かったようで、テーブルの上に置きっぱなしであった教科書や本に手を伸ばした。
「今日も勉強を?」
「今日は昼間子供たちに簡単な魔法を教えていたので、勉強していたわけではないんです。朝時間まで教科書に目を通していたらギリギリになってしまったので、出しっぱなしで出ちゃって」
ユノが恥ずかしそうに言うと、キリヤは笑った。
「よっぽど夢中になって読んでいたんだな。え……?『魔法大戦史』……こっちは『攻撃魔法実践』……?」
ユノが読んでいた教科書のタイトルとユノの顔をキリヤの視線が行ったり来たりする。
図書館ではこれまで治癒学や建築学、錬金術など村のためになりそうな科目ばかり熱心に学んでいたユノだったので、意外であったのだろう。
「実は俺、特性が『戦士』なんです」
そのことを告げると、キリヤは一瞬目を見開いたが、次の瞬間声をたてて笑った。
「……笑うとこですか?」
「いや、ユノの雰囲気と戦士が繋がらなかったんだ。『賢者』とか『治癒者』だと思い込んでいた。でも要所要所で見えるお前の気が強いところとか、フライングレースの強さとか思い出したらなるほどな、とも思えた。『戦士』なのか」
「見えないって確かによく言われます。引きました?……うわっ」
「僕のために特性の戦士が役立てる、と思って勉強していたんだろう? それに『魔法戦史』は先の戦争のことが詳しく記録されている本だ。そこからトーマ叔父がなぜ『封印の魔法』を使うとともに命を落としたのか探ろうとしてもいてくれたんだな……そういうところ……ほんと……っ」
小さなソファの上に半身押し倒される。
首筋のところに鼻筋を埋めるようにされると、ユノの頬に大好きなプラチナ色の髪が触れる。
久しぶりの彼のムスクに胸がかき乱され、お腹の奥が熱くなるみたいだった。
「そんなんじゃないです。ただ勉強したかっただけです」
少し掠れた声でユノが言う。
「本当に?」
ユノの首筋から顔を上げたキリヤ。
至近距離にある青い瞳の前では素直に全部白状してしまいそうだったから。
「本当ですっ」
そう言って今度はユノがキリヤの首筋に抱き着いて鼻先を埋めた。
彼の瞳を正面から見ないようにするためだったのに、彼の香りをまともに吸って頭がぼんやりしてしまう。
「わかったよ。そういうことにしておく……でも」
ありがとう、ユノのそういう頼もしいところも格好良くて好きだ……
なんて嬉しそうに囁かれてしまったから、今度は素直に頷いてしまった。
大きな掌が髪を撫でて、耳を撫でて、頬を撫でて。
それから両手で包み込むように頬を包まれる。
こつん。
優しい額がぶつかって。
「可愛い……もう全部僕のなんだよな……?」
そう言った、彼の顔があまりに美しくて、息を呑んだとき。
そっと、柔らかく唇が重なった。
「……ん」
そっと押し付けられて、啄むように何度も触れては離れて、ちゅっ……と甘くてくすぐったい音が響く。
愛おしくてたまらないというように、掌が頬から首筋、それから背中を撫でてゆく。
「……ユノの目、溶けそうだな……とろん、ってなってる……」
吐息が触れる距離でキリヤは言って笑ったけど、至近距離の青い瞳だってとろとろに溶けそうな色をしていた。
綺麗できれいで引き込まれそうだと思った次の瞬間。
「ん……っぁ」
ぬる……と、とても熱く濡れたものがユノの唇を辿った。
甘く痺れるようなものが背筋を走り抜けて、思わず彼の背に回っていた指先に力が籠り、柔らかなシャツをぎゅっと掴んだ。
宥める様に何度も掌がユノの背を撫でて、彼の熱い舌もユノの唇を這う。
甘い痺れの逃がし方がわからなくて、ただただ体を震わすことしかできない。
それなのに。
上唇と下唇の間。
わずかに覗く粘膜を何度も何度も舌で擽る。
「は……んんーーーっ!」
苦しくなって、甘い痺れを逃がそうとして僅かに唇を開いた。
すると、その僅かな隙間に舌が忍び込んできたのだ。
驚きと、呼吸の苦しさでひと際大きく体を震わせたユノ。
「ここで息して……ユノ……」
ユノの鼻先に軽くトントン、とすらりと長い指先が触れた。
促されるままに呼吸をする。
ユノが落ち着いたのを見計らうと、熱い舌はゆっくりと咥内を侵し始めた。
ユノの無防備で柔らかい粘膜をキリヤの舌が味わうように舐めていく。
口の中が熱くて、どうしたらいいかわからない。
「ん……んん……っ」
甘い痺れに翻弄されるユノの舌に、キリヤの舌がゆっくりと絡む。
辿って、舐めて、そっと吸って、絡めとられる。
体の熱をどうしたらいいのかわからなくなったとき、目の端から熱い雫か溢れて零れた。
「いやだったか? ユノ?」
その涙に気が付いたキリヤは、慌てて唇を離して問うが、ユノの頭は霞が掛かってしまったようで、うまく答えられない。
「キ……キリヤ……ぁ」
彼の唾液ですっかり濡れてしまった唇。
すごく苦しかったのに、離れてしまったことが寂しい。
上手く伝える言葉が出てくることもなくて、彼の名前をひどく甘えたような声で零してしまった。
「……っユノ……っあぁ、くそ……っ」
育ちのいい彼からは聞いたことのないような悪態が零れたかと思うと、再び唇を塞がれた。
「んん……っ」
今度はユノの目尻からぽろぽろと雫が零れ落ちるのにも構わず、咥内を彼の舌が這いまわる。
宥める様に撫でていた掌は、ユノの体のラインを何度も何度も熱を確かめるように撫でる手つきに変わって、ユノのセーターの中。
「ん……ん……っ」
ユノの素肌に直接、大きくて熱い掌が、触れる。
熱くて、熱くて。
二人の間にある熱の逃がし方が分からなくて、あまりの熱さが怖くて。
キリヤはユノの汗に気が付き、セーターを脱がせる。
ごくり、とキリヤの喉が動いたのがひどく妖艶でユノは思わず目を瞑った。
「……っあ……」
首筋の柔らかいところに彼の唇が触れる。
「前から思っていたが……君のここからはとても……甘い香りがする……」
そう言って、首筋の柔らかいところを彼は夢中になったように幾度も吸った。
「ひゃ……ぁ……」
首筋に吸い付く、ちゅ……というリップ音が響く。
そして首筋に吸い付きながら、彼の手が皮膚の薄い脇腹に触れて、ユノの体が大きく震えたそのときだった。

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