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4章
誰と踊るの7
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晩餐会が終わると大広間にセッティングされていた皿やカトラリーが並んでいた長テーブルは、会場係の魔法使いたちの鮮やかな魔法によってさっと片づけられた。
あっと驚く間もないほどに素早くダンスホールが広がった。
ユノが出演を依頼した楽団は、晩餐会の間幕の後ろから演奏していたが、いつの間にか幕は上がってダンスナンバーを演奏するためのタクトが振り上げられるのを今か今かと待っている状況だった。
「それではダンスパーティを始めましょう」
アンリ学園長が挨拶をすると、キリヤとシュリ、魔女学校の生徒会長リリィ・カナリアと今宵彼女のパートナーを務めるマコレ、それと先日のフライングレースで三位の成績を修め国の代表選手になったゴーダと魔女学校の美しい魔女の三組が広いダンスホールの中央に立った。
まずは各校を代表する三組のダンスをオープニングで披露してからダンスパーティは始まる。
楽団の指揮者がタクトを振り上げ、華やかなダンス曲が奏でられると、三組は踊りだした。
ワルツの調べに乗せて美しく舞う三組。
そのダンスを見ながらもしキリヤがユノをパートナーに選んでくれたとしても、この場でシュリのように美しく踊って立派にパートナーとしての役割を果たすことなど、付け焼刃のダンスしか踊れないユノには無理であろう。
目の前で繰り広げられる美しく優雅なダンスをただただ息を呑むように見ていた。
まるでお伽噺のように美しい世界。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。この後は沢山の人が一斉に踊りだすし、基礎のダンスで十分だよ」
ユノの様子を見ていたイヴァンが隣でユノを安心させるようにそっと言ってくれた。
「ん。ありがとう。イヴァン」
優しいイヴァンにユノは微笑み返して言う。
するとオープニングの曲が終わり、イヴァンはそっとユノの手を掬い上げた。
「行こうか、ユノ」
心優しく頼れるパートナーに手を取られ、ユノはダンスホールの端で踊るべく体勢を整えた。
再び、楽団の生演奏が始まると、二人はステップを踏み始めた。
身長やスタイルはイヴァンとキリヤは似ているため、練習と相違なくダンスは踊れたが、イヴァンからは花のような香りがした。
ユノの心臓をかき回すようなムスクのような香りとは違い、今踊っている相手はキリヤではないのだとまざまざと感じさせられた。
しかしながら、練習の甲斐があったのか、ダンスはとても楽しく踊れた。
キリヤと同じようにダンスが上手なイヴァンはユノをリードするのが上手だった。
「ユノ、びっくりした。踊れないって言ってたから。中々上手じゃないか」
「イヴァンのリードが上手だからだよ」
思いっきり体を動かしていると、余計なことを考えずにすんだ。
「うわ……っ」
曲が盛り上がったところで、イヴァンがリフトをしてユノを持ち上げたのだ。
体が宙に浮き、驚いた声を上げると、イヴァンが笑った。
つられてユノも笑った。
「リフトは初めて?」
囁くようにイヴァンが尋ねたので、ユノは頷いた。
図書館の隅でこっそり練習していたので、リフトのような大技はやらなかった。
そして額を寄せ合うようにして二人で笑いながら踊っていたときだった。
「やりすぎだ」
「えっ?」
低い声が聞こえたと思うと、ユノは腕をぐいっと引かれ、花の香りではなく、ムスクの香りに包まれていた。
あっと驚く間もないほどに素早くダンスホールが広がった。
ユノが出演を依頼した楽団は、晩餐会の間幕の後ろから演奏していたが、いつの間にか幕は上がってダンスナンバーを演奏するためのタクトが振り上げられるのを今か今かと待っている状況だった。
「それではダンスパーティを始めましょう」
アンリ学園長が挨拶をすると、キリヤとシュリ、魔女学校の生徒会長リリィ・カナリアと今宵彼女のパートナーを務めるマコレ、それと先日のフライングレースで三位の成績を修め国の代表選手になったゴーダと魔女学校の美しい魔女の三組が広いダンスホールの中央に立った。
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ワルツの調べに乗せて美しく舞う三組。
そのダンスを見ながらもしキリヤがユノをパートナーに選んでくれたとしても、この場でシュリのように美しく踊って立派にパートナーとしての役割を果たすことなど、付け焼刃のダンスしか踊れないユノには無理であろう。
目の前で繰り広げられる美しく優雅なダンスをただただ息を呑むように見ていた。
まるでお伽噺のように美しい世界。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。この後は沢山の人が一斉に踊りだすし、基礎のダンスで十分だよ」
ユノの様子を見ていたイヴァンが隣でユノを安心させるようにそっと言ってくれた。
「ん。ありがとう。イヴァン」
優しいイヴァンにユノは微笑み返して言う。
するとオープニングの曲が終わり、イヴァンはそっとユノの手を掬い上げた。
「行こうか、ユノ」
心優しく頼れるパートナーに手を取られ、ユノはダンスホールの端で踊るべく体勢を整えた。
再び、楽団の生演奏が始まると、二人はステップを踏み始めた。
身長やスタイルはイヴァンとキリヤは似ているため、練習と相違なくダンスは踊れたが、イヴァンからは花のような香りがした。
ユノの心臓をかき回すようなムスクのような香りとは違い、今踊っている相手はキリヤではないのだとまざまざと感じさせられた。
しかしながら、練習の甲斐があったのか、ダンスはとても楽しく踊れた。
キリヤと同じようにダンスが上手なイヴァンはユノをリードするのが上手だった。
「ユノ、びっくりした。踊れないって言ってたから。中々上手じゃないか」
「イヴァンのリードが上手だからだよ」
思いっきり体を動かしていると、余計なことを考えずにすんだ。
「うわ……っ」
曲が盛り上がったところで、イヴァンがリフトをしてユノを持ち上げたのだ。
体が宙に浮き、驚いた声を上げると、イヴァンが笑った。
つられてユノも笑った。
「リフトは初めて?」
囁くようにイヴァンが尋ねたので、ユノは頷いた。
図書館の隅でこっそり練習していたので、リフトのような大技はやらなかった。
そして額を寄せ合うようにして二人で笑いながら踊っていたときだった。
「やりすぎだ」
「えっ?」
低い声が聞こえたと思うと、ユノは腕をぐいっと引かれ、花の香りではなく、ムスクの香りに包まれていた。
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