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4章

誰と踊るの1※キリヤ視点

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※キリヤ視点になります。

戴冠式を終え、学園に戻って来ると魔女学校との交流会の準備は滞りなく進められていた。
キリヤに注意を受けたことから臍を曲げたシュリは仕事をほとんどしなかったが、ユノが代わりに行ったようであった。
しかし、肝心のユノとは折角学園に戻ってこられたのに、殆ど会うことができなかった。
時折すれ違う時に交わす視線の中には、隠しきれない熱が籠っているように感じられるのに、意図的に彼に避けられているように思えた。
そして戴冠式から息を吐く間もないほどのスピードで交流会の日はやってきた。
昼間の交流プログラムとして、シュトレイン国立魔法学園独自の授業を魔女学校の生徒たちに受講してもらう。
問題なく昼のプログラムを終えると、ダンスパーティに参加する多くの生徒がしているようにキリヤも準備をするべく一旦寮の自室に戻っていた。
「本日の交流会のダンスパーティのパートナーですが今年はカナリア家のご令嬢はお断りいたしましたので、シュリ様に依頼してあります」
「シュリに?」
寮の自室で身支度を整えながら侍従の話を聞いていたキリヤはタイを調整していた手を止めた。
ハイクラスの生徒が使用する寮の部屋は個室で、侍従の出入りも許されているため十分な広さが取られている。
柔らかな天鵞絨の絨毯が敷かれた床の上を、キリヤの支度のため忙しく動き回りながら侍従は続ける。
「現在シュリ様は正式に生徒会役員を解任になったわけではないですが、殆ど仕事をされていないので実質的に解任になったようなものです。このことがフィザード家の耳に入れば説明が求められるでしょう」
そこまで聞いて、キリヤは全てを察した。
「わかった、わかった。正直全部話してやりたいが、話したところでフィザード家相手では矛先がユノに行きかねない」
「はい。キリヤ様のお察しの通りです。シュリ様だけでなく、フィザード家が本気でユノ様を排除しようと動き出したら止めるのは厄介です」
「この辺りでシュリの機嫌を取っておいた方が得策というわけか」
キリヤがため息交じりに言うと、侍従はキリヤの背に回り、シルクの光沢が美しい燕尾服のジャケット広げた。
慣れた仕種でそのままジャケットの袖に腕を通すと、キリヤは侍従を伴って部屋を後にした。
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