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3章

シュリのいない生徒会室2

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「え? お菓子って……俺が作ったメイプルケーキ……? 確かにいくつか残っていたけれど、踏まれたものと一緒にバスケットごと捨てられたんじゃなかったの?」
ユノが作ったお菓子と言えば、生徒会室に初日に持ってきたメープルケーキしか思い当たらない。
床を片付けたあと、机を見たら何も無くなっていたから、誰かが捨てたのかと思っていた。
「捨ててないよー。踏まれたり床に落ちちゃったのは食べられなかったけど、バスケットの中にはまだ手付かずのが残っていたでしょ? だから僕が貰って寮に持って帰ったんだけど、だめだったかな?」
イヴァンがにっこり笑って覗き込む。
ユノは驚いたが持ち帰ってもらえたと知って嬉しかったので、だめではないと意思表示をするために首を横に振った。
そんなユノを笑ったあと、イヴァンは続けた。
「寮のサロンで紅茶を淹れて食べたよ。すっごく美味しかった。そのとき、キリヤが来て一つ寄越せって言いうから、一緒に食べたんだ。ユノが作ったやつだって気が付いてないのかなって思ったんだけど、今の顔を見る限り気付いていそうだね」
向かいには少しばつが悪そうな顔をしたキリヤがいた。
時折見せる、彼の年相応の表情を見ると、なんだか胸のあたりが落ち着かない。
「捨てないで食べてくれたんですね。ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ。ごちそうさまでした」
イヴァンが礼を言ったあとキリヤも顔を上げた。
「……美味しかった。ありがとう」
二人からの礼がくすぐったくて、つい俯いてしまったが、二人の声はとても優しかった。
「アンドレアも何か言いたそうだね」
イヴァンがアンドレアに話を振る。
「べ……別にっ俺は……っ」
アンドレアは否定するように言って思わずその場から立ち上がったが、ユノと視線が合うとぴたりと動きが止まった。
「……っ……作ったものを踏んだりして本当に申し訳なかった……」
「アンドレア……」
ユノが思わず、驚きで目を瞠る。
「じゃあ、俺あっちで作業があるからっ」
アンドレアは瞳や髪と同じくらい真っ赤になった顔を隠すように、倉庫に行ってしまった。
「ユノの片づけてくれた倉庫、作業部屋にできてすごく便利になったよねー。アンドレア結構気に入っているみたいだし、自分の椅子持ち込んでいたよ。じゃ、今日の作業を始めようか。今日は招待状に使う紙を選ぼうと思うんだけど」
そう言うと、イヴァンは見本紙を纏めた革張りのファイルを取り出した。
打ち合わせを始めた二人の様子を見て、キリヤも手元の書類に目を落とした。
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