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3章

シュリのいない生徒会室5

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生徒会のメンバーのダンスへの参加は必須ということなら、キリヤはやはりシュリをパートナーに選んで踊るのだろうか。
ユノの頭に無意識にそんな考えが浮かんだときだった。
「キリヤは昨年、魔女学校の生徒会長のリリィ・カナリアと踊っていたよ」
ユノの考えを見透かしたかのようなイヴァンのセリフにどきりとする。
『術者』というのは遠く見えないはずの場所での人の動きを察知し、その影を水晶に映して観ることのできる能力なのだが、心の動きまで見えてしまうものなのだろうか。
「そう……ですか……」
心を読まれてしまったのかと思って動揺すると、イヴァンは微笑んだ。
「心は読めないよ。『占術』の勉強をするうちに何となく察することも覚えただけ。これは魔法の能力ではないけれど『術師』としては大事なことだからね」
イヴァンは飄々として見えるが、自分の持つ『術師』としての能力がいかに大切で国の役に立つのかを理解しているようで、『術師』の勉強にかなり打ち込んでいるのを一緒に生徒会の仕事をするうちにユノも気が付いた。
今はフィザード家が国の『占術』の殆どを行っているが、イヴァンの考えとしては両家が交互に行うのではなく同時に行った方が国のためになるのではないかということらしい。
そんなイヴァンだから心を読んでいなくてもかなり正確にユノの心情を推測したとは思う。
「リリィとキリヤは確かによく似合っては見えるけど、二人とも氷みたいで現実味がなかったよ」
続いたイヴァンのセリフからもユノを気遣っているのが伺えた。
「物語に出てきそうな二人だよね」
なのでユノは気にしていないような笑顔を見せて応えた。
昨年の交流会のダンスパーティに参加していないので、その時の様子はわからないが、昼間の交換授業のときに見かけたその魔女はとても美しかったのを覚えている。
貴族の中でもシュリのフィザード家に並ぶくらいの名門のカナリア家の娘だ。
そのうち二人は婚約するのではないかと、スタンダードクラスにまで噂は流れていた。
キリヤは今年、誰を誘うんだろう。
リリィ・カナリアを誘わなかったとしても、校内の公のイベントではいつもシュリを伴っている。キリヤとシュリは対に作られたみたいにお似合いだ。
どちらにせよ、溜息が出るほどに美しいダンスをユノは見ることになるのだろう。
ユノが黙り込んでしまうと、イヴァンは意味深長に笑った。
「キリヤを怒らせちゃいそうだけど、キリヤの為でもあるから仕方ないよね」
「え? 何て?」
イヴァンの言った言葉を聞き取れず、ユノは尋ねる。
「ううん。何でもないよ。僕のパートナーとして、よろしく」
するとそんなユノの手をそっと取り、イヴァンは指先に唇を押し当てた。
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