平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました

ゆなな

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3章

シュリのいない生徒会室4

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扉の向こうに消えていくプラチナブロンドを、つい目が追ってしまう。
しばらく彼が出て行った扉をじっと見つめていると、そのユノの様子をイヴァンが見ていることに気がついた。
ユノは小さく咳払いをしてから口を開いた。
「キリヤ、忙しそうだね。日が暮れてからも用があるなんて」
授業の課題、授業の予復習。生徒会の仕事もユノよりずっと多いし、さらに王家としての仕事もあるらしい。
ユノが言うと、イヴァンは片眉を上げた。
「戴冠式が近いからね。最近帰りはいつも真夜中なんだよ。で、門限に間に合いそうにないときは、僕が寮に届出を出してあげているんだ」
他の生徒会役員の前では然程仲がよくなさそうだったキリヤとイヴァンだが、今日は何だか二人の間に流れる空気がいつもと違った気がする。
「もしかして、イヴァンとキリヤも『秘密の友達』なんですか?」
「『秘密の友達』……? ぷっ……くくくっ」
その言葉を聞いてイヴァンは可笑しそうに笑った。 
「……何か変なこと言いました?」
「いや、変なことなんて言ってないよ。そうだね。僕達『は』『秘密の友達』みたいなものかな」
「やっぱり、そうなんですね。王族は何でも注目の的になってしまうから、友達付き合いも苦労するんですね」
イヴァンが『は』と強調したことは特に気にせずにユノは頷いた。
キリヤの置かれる難しい立場が少しだけわかったような気がした。
だが、イヴァンとキリヤも『秘密の友達』と聞き、胸が少しだけ痛い。
彼の秘密の友達は願わくば自分だけがよかった、なんて狭量な考えだ。
ユノはそんな思いを振り切るように軽く頭を降ってから、話題を戴冠式に戻した。
「あ……そう言えば昨年キリヤのお父上のシュトレイン十五世が即位されましたが、まだ戴冠式は行われていなかったですね。もうそろそろなんですか?」
ユノが思いついたように言うと、イヴァンは意外な質問を受けたというように首を傾げた。
「戴冠式はもうすぐだよ。学園でも街でもその噂でもちきりじゃないか。その日は城下町もお祭り騒ぎになるから皆楽しみにしてるんじゃないの?」
「城下町のカーニバルとかはあんまり詳しくなくて」
ユノの答えを聞くと納得したようで、イヴァンはくすくすと笑った。
「ふふ。色んなことにユノは詳しいのに、イベントは詳しくないんだね」
イヴァンは紫色の瞳を細めて、とても優しい顔になった。
「戴冠式は僕も式典に出席しないといけないから、一緒に行けないんだけどさ、ユノの交流会のダンスのパートナーはもう決まっている?」
「ダンスのパートナー? 俺は踊る予定はないので、特に誰ともパートナーになるつもりはありませんよ」
ユノが答えると、イヴァンは、やっぱり、と笑った。
「やっぱりイベントには本当に詳しくないね。交流会のダンスに一般生徒は参加自由だけど、生徒会のメンバーは参加必須なんだよ」
「ええ?! そうなんですか?! でも俺魔女学校に知り合いなんていないんですけど」
ユノが驚きの声を上げると、イヴァンはまた笑った。
「相手は魔女じゃなくても大丈夫だよ。魔法使い同士でも全然大丈夫。まだユノが誰ともペアになっていないなら、僕とペアにならない?」
「え……?」
「毎年パートナーを探すのに苦戦するんだよ。パートナーに、なんて選んでしまうと、その後婚約者にでもなったと勘違いする子が多くてね」
ユノの驚いた顔を見たイヴァンが言った。
なるほど、紫色の宝石のように美しいイヴァンにダンスのパートナーとして誘われたら、舞い上がって勘違いしてしまう子も多そうだ。
「そうなんですね。俺もパートナー探す手間が省けて助かりますが、ダンス踊れないですよ」
この前の仮面舞踏会で踊ったのが初めてだし、そもそもあれは音楽に合わせて体を揺らしていただけで正式なダンスとは言えないものだ。
「心配なら図書館に映像も見られる基本のダンスのオーディオブックがあったと思うから、それを見ておいてよ」
「わかりました。練習しておきます。でも上手に練習できなかったらそのときは他の人を選んでくださいね」
「ふふ。ユノならきっと大丈夫だよ」
イヴァンは美しいアメジストを細めて微笑んだ。
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