平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました

ゆなな

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2章

螺旋階段

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「か……からかわれたのかな……っ」
呟きながら、ユノは急いで生徒会室のあるシュトレイン塔の螺旋階段を降りた。
恐らく、あの脚では速く降りることは出来ないはずだ。
そう思ってできる限り速く階段を降りる。
彼の掛けてくれた治癒魔法のお陰でユノの怪我の具合はすっかり良かった。だがそれと引き換えに彼の魔力はほとんど無くなっているはずだし、ユノの見立てが正しければきっと彼は速くは歩けない。
それなら彼はまだ近くにいるはずだ。
「会長!」
その凛とした背中を視界に捉えるとユノは叫んだ。
すると、ゆっくりとした動きで振り返った青い瞳と視線がぶつかる。
ユノは転がるようにキリヤのところまで駆け下りた。
「なんだ?」
疲労の色が浮かんでいてもなお美しいプラチナブロンドを搔き上げた。
「あの……脚……」
ユノがそれだけ言うと、キリヤはぎくり、と体を強張らせた。
「……別に何ともないが?」
「俺にもう少し魔力が残っていたら治癒魔法を無理矢理でも使うんですが、今使ったら怪我を治し切ることもなく倒れてしまいそうなので」
何ともないといつもの冷やかな表情のままキリヤは言ったが、ユノは怯むことなく言った。
キリヤはユノを助けるために引き上げの魔法を使ってくれた。
だが、引き上げの魔法はある程度ユノに近づかなければ使えないため、『悪魔の木』の森にキリヤも少し潜っていた。
その際に、体のどこか。恐らく脚を傷付けてしまっている。
「何を……」
「これ、『悪魔の木』の毒を解毒してくれる『月時雨草』という薬草と、切り傷によく効く薬草を数種類配合して作った貼り薬です。もし誰かに治癒魔法を使ってもらえるか医務室に行くならいいのですが、そのつもりがないなら使ってください」
そう言って、ユノは自らの収納バッグから手製の貼り薬を数枚取り出してキリヤに差し出した。
「だから、何ともないって……」
「じゃあ、捨ててもらって構わないので取り敢えず受け取ってください。治癒魔法みたいにすぐに治るわけじゃないですが、元気なときの俺の魔力も込めているので一晩で回復します。多分王宮の治癒者が取り扱っている貼り薬の効果と変わらないはずです」
ユノは言い切ると、強引にキリヤの制服のローブのポケットに貼り薬を押し込んだ。
ついでに多少だが魔力を回復の補助をしてくれる水薬を詰めた小瓶も。
「おい……っ」
「今日は助けていただき本当にありがとうございました。お互い今夜はできるだけ体を休めましょうね」
キリヤは声を荒らげたが、ユノはアイテムを押し付けるだけ押し付けると笑顔で頭を下げ、その場から逃げるように残りの階段を駆け下りた。

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