53 / 54
番外編SS
昼下がりの×××
しおりを挟む
1章と2章の間。まだ二人がくっつく前のお話になります。
開けっ放しの窓からは、ミーンミーンと夏休み定番の蝉の声が流れ込むばかりで、涼しい風が入ってくることはない。
「あー、くそ。あっちぃ……なんなんだよ……」
そこに先程高弥の部屋に訪れたばかりの男の声が混じる。
「クーラー壊れちゃったんだから仕方ないじゃないですか。新しいの頼んだんですけど来るの来週なんです」
話しながらも汗がたらりと高弥の頬を伝う。沢村は今この部屋に来たばかりだが、高弥は朝からずっとこの部屋にいるのだ。
「来週って……今週も始まったばっかじゃねぇか……つか、一年で一番暑い時期の一日で一番暑い時間にクーラーつかないとかってマジありえねぇんだけど」
そう言って、沢村はキッチンに行くと慣れた様子で冷凍室を開ける。
「ちょっと、勝手に俺のアイス食わないで下さいよ!」
高弥が大事に取って置いたソーダのアイスバーを咥えてキッチンから出てきた沢村。
「るせぇな。こんぐらいいーだろ……あー、あっちぃ」
高弥のベッドの上にひっくり返って、沢村はアイスを咥える。
「暑さに耐えられなくなったら食べようと思ってた大事な俺の生命線なんですよ……! ちゃんと後で買って返しておいて下さいね!」
「はいはい。買っとく、買っとく」
「……言い方。絶対買いませんよね?! っていうか、そんなに暑いなら帰ったらいいじゃないですか。沢村先生んちはエアコンあるんでしょ」
「ったりめーだろ。リビングにも寝室にも付いてるからどっちか壊れてもこんなことにならねーよ」
「だから、帰ればいいじゃないですか」
もう、ただでさえ暑いのに、勝手に押しかけてきて、アイスを取られた上に文句を言われるなんて、ホント理不尽だ。
「あーじゃ、お前も来る?」
「絶対行きません……っうわ」
沢村の部屋で、もし彼の女達と遭遇するなんてことになったら冗談じゃない。そんな地獄絵図に巻き込まれたくない。そう思って言ったところで、ぐいっと腕を引かれて沢村の上に倒れ込んだ。
「お前がそろそろはつじょーきだと思って来てやったのに、随分な態度じゃね?」
今回の発情期は少しいつもの周期より早まったみたいだった。それを気付かれたと知り、高弥はぎくり、と身を硬くした。
「あ、なんでバレたんかなーって思った?」
ケラケラと笑う沢村。発情期はオメガの高弥にとっては生活を左右する重大なものであるんだから、こんなに気楽に笑われるとムッとしてしまう。
「別に俺の発情期何とかしてくれって頼んでないです。帰ってください。もー外で着た服のままベッドに寝転ばれるのも俺は嫌なんです」
「キャンキャンキャンキャンうっせぇなぁ。あ……ほら。やっぱめっちゃ甘い匂いしてる……お前」
悪態を吐きながらも鼻先を耳の裏に押し当てながら言う。
「……っ薬を飲めばなんとかなりますから……ってか、匂い嗅ぐなぁっ」
「またまたぁ。薬で具合悪くなっちゃうんだろ? 俺とヤってスッキリした方が気持ちいーし、発情期の症状も消えるし、いいことしかねぇじゃん」
「……っ沢村先生とするの、全然よくない」
高弥は唇を尖らせて、ふい、と首を横に向けて言う。
そう、全然よくない。
自分ばかりがこのロクでもない男が好きでどうしようもない現実が突き付けられる。
「んぐっ……ぅ」
突然口の中に冷たい甘味が広がる。
口にアイスバーを突っ込まれたのだ。
「ほんと、お前可愛くねぇことばっか言う」
面白くなさそうな顔をした沢村は、高弥の口からアイスバーを突っ込んで意地悪く口内をかきまぜた後、抜いて残りを食べてしまう。
「んんっ」
そしてアイスが抜かれた冷たい唇に、沢村の唇が噛みつくように重なる。
冷たくて、甘くて、冷たくて……夏の暑さと発情期のせいで火照った体にはキモチイイ。
沢村の冷たくてソーダ味の甘い舌を絡められて、頭の中がとろりと溶け出す。
ぽいっとアイスの棒をベッド横のゴミ箱に放った沢村に気がついたが、ベトベトした棒を洗わないで捨てないでって文句は沢村の口の中で溶けて消えた。
「お前のくちんなか、マジであっちぃ……」
ちゅうっと唇を吸ったあと、唇が触れ合いそうな距離で沢村が言う。
「ひ……っ」
ずるっ、と穿いていたハーフパンツは下着ごと脱がされて、それもぽいっとベッドの外に投げられる。
「すげぇ、匂い……」
「や……っ匂い嗅ぐなって……っ」
汗だくの体の匂いを嗅がれたくなくて、身をよじるのに、沢村は鼻先を首筋に潜らせて匂いを嗅いでくる。
「体もこんなに熱くて、お前我慢できるわけ?」
意地悪な声が耳に流れ込む。大きな掌が体を撫で回す。
「……っそれは、エアコン壊れてるからっ……」
「まぁ、確かに汗なんだか発情期だから濡れてんのかわかんねぇくらい、ぐっしょぐしょ」
「ひゃ……っ」
笑いの混じった声で、蒸れた脚の間を弄られる。
まだ発情期は完全に始まったわけではないのに、もう膨らんだペニスからはたらたらと先走りの液は垂れてるし、後ろの孔からも愛液がとろとろと溢れている。そこに沢山の汗も加わって、もう何が何だかわからないくらい濡れている。
「あ……っ……」
ちゅぷ、と沢村の長い指が濡れて火照る孔に挿し込まれた、
「すげぇ、あちぃ……指溶けそ……」
くちくち、と濡れた孔の温度を確かめるように指が動いて、高弥の腰も揺れる。
喉の奥でその様を嗤うような声を漏らした沢村を高弥は睨みつけようと、その顔を見て固まった。
「ぁ…………」
人を馬鹿にしたような顔をしているのかと思ったら、沢村も顔を火照らせ、額に汗を光らせていた。
アイスを食べて、少しは涼しくなったんじゃないの? なんでそんなに汗かいてるの。
熱気が立ち込める室内。
沢村が空いていた窓を閉めた。
「んんっ……窓閉めたら……っ部屋やばい……っ」
体内に長く器用な沢村の指を感じながら高弥が言う。
「……っばーか。ぜんっぜん風入ってこねぇから、空けてても閉じてても一緒だろ。つーかお前、声外に漏れても平気なわけ? ふーん。そういう趣味?」
「違っ……あっ……」
くっ、と曲げられた沢村の指は、オペのとき寸分も狂わないのと同じように、間違うことなく高弥の感じるところに触れる。
「おー……あっつくて、とろとろ。もう俺の入りそーだな……」
口調は変わらないが、声がいつもより少し低くて濡れてるみたいな沢村の声。
その声の後ろに聞こえる蝉の鳴き声は、窓を隔てたせいか先程より遠くに聞こえる。
閉ざされた部屋は湿度を増し、二人の香りが濃厚に匂い立つ。
「……っぅ」
あまりに濃厚な香りに高弥のくらくら目眩がして、正常な思考が徐々に奪われてゆく。
体中を汗が伝っておかしくなりそうなほど暑いのに、湯気が出てるんじゃないかと思ってしまうほど熱い目の前の沢村の体にしがみつきたくなってしまう。
汗で湿った腕で、汗で湿った沢村の首筋に腕を回してしがみつくと、彼が喉の奥で低く唸った音がした。
「……くそ……っ力抜け……っ」
挿れるぞ、と湿度を纏った低い声が耳の中に流される。
混ざる吐息も熱い。
彼の吐息で耳も溶けてしまいそうだった。
「あぅ……っ」
そして更に狂おしいほど熱い沢村のペニスが入ってくる。
先の一番膨れているところは、発情期じゃないときは受け入れるとき少しだけ苦しいけれど、今日は早く奥まで埋めてほしくて焦れったくて、高弥は無意識に沢村の腰に脚を絡めて誘うような仕種をしてしまう。
「……っち……どうなっても知らねぇからな……っ」
吐き捨てるように言ったくせに、何かを耐えてるように眉を寄せる沢村の顔。
何だかんだで優しいなんて、ほんとずるい。
「……っどうなっても……いぃ……から……はやく、ほし……ぃっうぁっ……」
意地っ張りの唇から珍しく素直な言葉が落ちて部屋の熱い空気に溶け込む。
言うなり、脚を掴まれて、ぐっと奥に沢村が入り込む。
奥まで入り込むと隙間なくぴったりと体が重なる。
あまりの熱さに汗が流れるのが止まらないけれど、もうどっちの汗なのかもわからない。
「っ……んだよっ……お前ん中、めちゃめちゃ熱くて頭おかしくなりそ……っ」
高弥の汗なのか、沢村の汗が垂れてきたのか、それとも気持ちよくて涙が溢れたのかわからないくらいびしょびしょの頬に沢村の唇が落ちて、そんなことさえも気持ちよくて涙が追加される。
「んんんっ……」
頬に落ちた唇は、なめらかに滑って次は唇を塞いだ。
人の口の中が熱いと言うけれど、この男の口の中だって大概だ。
熱くてたまらない体内を、熱くてたまらないものがかきまぜる。舌で口の中もかきまぜられて、二人の汗が混ざり合うほどきつく抱きしめられる。
「ひ………っぅあっ……」
暑くて熱くい室内なのに、熱い体をばかみたいにぴったりくっつけて、汗に塗れながら繋がって、狂ってるみたい。
いつもは沢村を好きな気持ちを悟られないように、と意識のどこかで思っているのに、暑さのせいでおかしくなった頭では何も考えられない。
彼の首筋には腕を、腰には脚を絡めて、まるで少しも離れたくないよう目の前の熱い体に必死に縋り付いしまう。
遠くに聞こえる蝉の声。蒸れた室内。高弥の安物のベッドが軋む音。沢村の興奮しきった荒い吐息。カーテンを引いてもまだ明るい室内。
全てが婬猥な室内でどこもかしこも敏感で、合わさった胸の先が擦れるのまでもたまらなく気持ちいい。
「……っ出すぞ……」
耳の奥に濡れたような沢村の声。
ぽたり、と彼の汗が高弥の上に落ちる。
「あぁっ……」
高弥はオメガだが、中学生の頃大病したことが理由で妊娠はしづらい体がだと医師に言われている。
それを知っている沢村は当然のように避妊具を着けていない。
そのため体の奥に熱い精液がじかに注がれる。
「あーーやべ……きもちいー……」
「っあ……あ、あっ……熱ぅっ……」
溶かされてしまいそうなくらい熱い体液でお腹の中を濡らされる。
「あっ、も、やだぁ……抜いて……ぇ……うぁっ」
アルファ特有の長い射精に耐えられず狭いベッドの上を逃げようとするのに、ぐっと腰を押し付けられて脚を掴まれ、一番奥深くで繋がったまま少しも逃げることは許されない。
沢村の精液が全て出される頃には、高弥の意識はすっかり遠のいていた。
*******
「うぉ!これでホーム10連勝じゃん!」
デカい声が聞えて、高弥は目を開けた。
「……家主が寝てんだから、配慮とかできないんですかね……」
枕に顔を埋めながら高弥は言う。
「おー、おー。やっと起きたか。お前全然起きねぇから死んだと思ったわー」
コーラ片手にベッドの端に座り、ナイターを見ていた沢村が振り返る。
体は拭いてもらえたのかさらりとしていて、新しいTシャツに着替えさせられている。
「……それも俺が冷やしておいたコーラじゃないですか?」
「一本くらいいーだろ。ケチケチすんな」
「一本くらいって……一本しか入ってなかったでしょ?! なけなしの一本飲むなんて鬼! 悪魔! 暑さに耐えられなかった時用の対策だったのに……ってあれ……?」
そういえば、部屋が暑くない……?
涼しい風がふわっと高弥の前髪を揺らした。
風が吹いてきたところを振り返ると、高弥の腰ほどある高さの四角い機械からみたいなものから冷たい風が吹いてきて気持ちいい。
その機械はどこかで見覚えがあった。
「これ、病院の……?」
高弥は身を起こして機械をよく見た。
「あー、エアコン壊れた病室に修理来るまで入れてた簡易エアコンな。そういや、倉庫に置きっぱになってて今使ってねぇから借りてきてやった」
移動式の簡易エアコンはちゃんとしたエアコンほどの冷却力はないが、この狭い部屋なら十分涼しくしてくれた。
「え……?」
「こんなクソ熱あちぃ部屋、球場行った気分で野球見ろっつーのかよ。暑くて死ぬかと思ったわ」
「いや、野球は帰って見ればいいじゃないですか」
「っせぇな。簡易エアコン持ってきてやった救世主だろうが、俺は。もっと感謝しろ。それとも……」
沢村はコーラをテーブルに置くと、高弥のすぐそばに手を突き耳元に唇を寄せた。
思わず後退って沢村と距離を取ろうとするが、先回りされた腕で腰を抑えられて、逃げられない。
「あちぃ部屋で汗だくでヤる方が、イイ?」
熱くて、気持ちよかったもんな、と低い声で笑いながら、声を注ぎ込まれる。
「……っん」
すると、沢村に体の奥に出された体液がとろりと溢れ出てきてTシャツに滲んだ。体は拭いてくれたけど、奥に出したものはそのままにされていたらしい。
「折角涼しくなったんだから、快適な環境でもう一回ヤるかぁ」
そう言った沢村がニヤリと笑って高弥の体を再びベッドの中にゆっくりと沈めた。
おわり
開けっ放しの窓からは、ミーンミーンと夏休み定番の蝉の声が流れ込むばかりで、涼しい風が入ってくることはない。
「あー、くそ。あっちぃ……なんなんだよ……」
そこに先程高弥の部屋に訪れたばかりの男の声が混じる。
「クーラー壊れちゃったんだから仕方ないじゃないですか。新しいの頼んだんですけど来るの来週なんです」
話しながらも汗がたらりと高弥の頬を伝う。沢村は今この部屋に来たばかりだが、高弥は朝からずっとこの部屋にいるのだ。
「来週って……今週も始まったばっかじゃねぇか……つか、一年で一番暑い時期の一日で一番暑い時間にクーラーつかないとかってマジありえねぇんだけど」
そう言って、沢村はキッチンに行くと慣れた様子で冷凍室を開ける。
「ちょっと、勝手に俺のアイス食わないで下さいよ!」
高弥が大事に取って置いたソーダのアイスバーを咥えてキッチンから出てきた沢村。
「るせぇな。こんぐらいいーだろ……あー、あっちぃ」
高弥のベッドの上にひっくり返って、沢村はアイスを咥える。
「暑さに耐えられなくなったら食べようと思ってた大事な俺の生命線なんですよ……! ちゃんと後で買って返しておいて下さいね!」
「はいはい。買っとく、買っとく」
「……言い方。絶対買いませんよね?! っていうか、そんなに暑いなら帰ったらいいじゃないですか。沢村先生んちはエアコンあるんでしょ」
「ったりめーだろ。リビングにも寝室にも付いてるからどっちか壊れてもこんなことにならねーよ」
「だから、帰ればいいじゃないですか」
もう、ただでさえ暑いのに、勝手に押しかけてきて、アイスを取られた上に文句を言われるなんて、ホント理不尽だ。
「あーじゃ、お前も来る?」
「絶対行きません……っうわ」
沢村の部屋で、もし彼の女達と遭遇するなんてことになったら冗談じゃない。そんな地獄絵図に巻き込まれたくない。そう思って言ったところで、ぐいっと腕を引かれて沢村の上に倒れ込んだ。
「お前がそろそろはつじょーきだと思って来てやったのに、随分な態度じゃね?」
今回の発情期は少しいつもの周期より早まったみたいだった。それを気付かれたと知り、高弥はぎくり、と身を硬くした。
「あ、なんでバレたんかなーって思った?」
ケラケラと笑う沢村。発情期はオメガの高弥にとっては生活を左右する重大なものであるんだから、こんなに気楽に笑われるとムッとしてしまう。
「別に俺の発情期何とかしてくれって頼んでないです。帰ってください。もー外で着た服のままベッドに寝転ばれるのも俺は嫌なんです」
「キャンキャンキャンキャンうっせぇなぁ。あ……ほら。やっぱめっちゃ甘い匂いしてる……お前」
悪態を吐きながらも鼻先を耳の裏に押し当てながら言う。
「……っ薬を飲めばなんとかなりますから……ってか、匂い嗅ぐなぁっ」
「またまたぁ。薬で具合悪くなっちゃうんだろ? 俺とヤってスッキリした方が気持ちいーし、発情期の症状も消えるし、いいことしかねぇじゃん」
「……っ沢村先生とするの、全然よくない」
高弥は唇を尖らせて、ふい、と首を横に向けて言う。
そう、全然よくない。
自分ばかりがこのロクでもない男が好きでどうしようもない現実が突き付けられる。
「んぐっ……ぅ」
突然口の中に冷たい甘味が広がる。
口にアイスバーを突っ込まれたのだ。
「ほんと、お前可愛くねぇことばっか言う」
面白くなさそうな顔をした沢村は、高弥の口からアイスバーを突っ込んで意地悪く口内をかきまぜた後、抜いて残りを食べてしまう。
「んんっ」
そしてアイスが抜かれた冷たい唇に、沢村の唇が噛みつくように重なる。
冷たくて、甘くて、冷たくて……夏の暑さと発情期のせいで火照った体にはキモチイイ。
沢村の冷たくてソーダ味の甘い舌を絡められて、頭の中がとろりと溶け出す。
ぽいっとアイスの棒をベッド横のゴミ箱に放った沢村に気がついたが、ベトベトした棒を洗わないで捨てないでって文句は沢村の口の中で溶けて消えた。
「お前のくちんなか、マジであっちぃ……」
ちゅうっと唇を吸ったあと、唇が触れ合いそうな距離で沢村が言う。
「ひ……っ」
ずるっ、と穿いていたハーフパンツは下着ごと脱がされて、それもぽいっとベッドの外に投げられる。
「すげぇ、匂い……」
「や……っ匂い嗅ぐなって……っ」
汗だくの体の匂いを嗅がれたくなくて、身をよじるのに、沢村は鼻先を首筋に潜らせて匂いを嗅いでくる。
「体もこんなに熱くて、お前我慢できるわけ?」
意地悪な声が耳に流れ込む。大きな掌が体を撫で回す。
「……っそれは、エアコン壊れてるからっ……」
「まぁ、確かに汗なんだか発情期だから濡れてんのかわかんねぇくらい、ぐっしょぐしょ」
「ひゃ……っ」
笑いの混じった声で、蒸れた脚の間を弄られる。
まだ発情期は完全に始まったわけではないのに、もう膨らんだペニスからはたらたらと先走りの液は垂れてるし、後ろの孔からも愛液がとろとろと溢れている。そこに沢山の汗も加わって、もう何が何だかわからないくらい濡れている。
「あ……っ……」
ちゅぷ、と沢村の長い指が濡れて火照る孔に挿し込まれた、
「すげぇ、あちぃ……指溶けそ……」
くちくち、と濡れた孔の温度を確かめるように指が動いて、高弥の腰も揺れる。
喉の奥でその様を嗤うような声を漏らした沢村を高弥は睨みつけようと、その顔を見て固まった。
「ぁ…………」
人を馬鹿にしたような顔をしているのかと思ったら、沢村も顔を火照らせ、額に汗を光らせていた。
アイスを食べて、少しは涼しくなったんじゃないの? なんでそんなに汗かいてるの。
熱気が立ち込める室内。
沢村が空いていた窓を閉めた。
「んんっ……窓閉めたら……っ部屋やばい……っ」
体内に長く器用な沢村の指を感じながら高弥が言う。
「……っばーか。ぜんっぜん風入ってこねぇから、空けてても閉じてても一緒だろ。つーかお前、声外に漏れても平気なわけ? ふーん。そういう趣味?」
「違っ……あっ……」
くっ、と曲げられた沢村の指は、オペのとき寸分も狂わないのと同じように、間違うことなく高弥の感じるところに触れる。
「おー……あっつくて、とろとろ。もう俺の入りそーだな……」
口調は変わらないが、声がいつもより少し低くて濡れてるみたいな沢村の声。
その声の後ろに聞こえる蝉の鳴き声は、窓を隔てたせいか先程より遠くに聞こえる。
閉ざされた部屋は湿度を増し、二人の香りが濃厚に匂い立つ。
「……っぅ」
あまりに濃厚な香りに高弥のくらくら目眩がして、正常な思考が徐々に奪われてゆく。
体中を汗が伝っておかしくなりそうなほど暑いのに、湯気が出てるんじゃないかと思ってしまうほど熱い目の前の沢村の体にしがみつきたくなってしまう。
汗で湿った腕で、汗で湿った沢村の首筋に腕を回してしがみつくと、彼が喉の奥で低く唸った音がした。
「……くそ……っ力抜け……っ」
挿れるぞ、と湿度を纏った低い声が耳の中に流される。
混ざる吐息も熱い。
彼の吐息で耳も溶けてしまいそうだった。
「あぅ……っ」
そして更に狂おしいほど熱い沢村のペニスが入ってくる。
先の一番膨れているところは、発情期じゃないときは受け入れるとき少しだけ苦しいけれど、今日は早く奥まで埋めてほしくて焦れったくて、高弥は無意識に沢村の腰に脚を絡めて誘うような仕種をしてしまう。
「……っち……どうなっても知らねぇからな……っ」
吐き捨てるように言ったくせに、何かを耐えてるように眉を寄せる沢村の顔。
何だかんだで優しいなんて、ほんとずるい。
「……っどうなっても……いぃ……から……はやく、ほし……ぃっうぁっ……」
意地っ張りの唇から珍しく素直な言葉が落ちて部屋の熱い空気に溶け込む。
言うなり、脚を掴まれて、ぐっと奥に沢村が入り込む。
奥まで入り込むと隙間なくぴったりと体が重なる。
あまりの熱さに汗が流れるのが止まらないけれど、もうどっちの汗なのかもわからない。
「っ……んだよっ……お前ん中、めちゃめちゃ熱くて頭おかしくなりそ……っ」
高弥の汗なのか、沢村の汗が垂れてきたのか、それとも気持ちよくて涙が溢れたのかわからないくらいびしょびしょの頬に沢村の唇が落ちて、そんなことさえも気持ちよくて涙が追加される。
「んんんっ……」
頬に落ちた唇は、なめらかに滑って次は唇を塞いだ。
人の口の中が熱いと言うけれど、この男の口の中だって大概だ。
熱くてたまらない体内を、熱くてたまらないものがかきまぜる。舌で口の中もかきまぜられて、二人の汗が混ざり合うほどきつく抱きしめられる。
「ひ………っぅあっ……」
暑くて熱くい室内なのに、熱い体をばかみたいにぴったりくっつけて、汗に塗れながら繋がって、狂ってるみたい。
いつもは沢村を好きな気持ちを悟られないように、と意識のどこかで思っているのに、暑さのせいでおかしくなった頭では何も考えられない。
彼の首筋には腕を、腰には脚を絡めて、まるで少しも離れたくないよう目の前の熱い体に必死に縋り付いしまう。
遠くに聞こえる蝉の声。蒸れた室内。高弥の安物のベッドが軋む音。沢村の興奮しきった荒い吐息。カーテンを引いてもまだ明るい室内。
全てが婬猥な室内でどこもかしこも敏感で、合わさった胸の先が擦れるのまでもたまらなく気持ちいい。
「……っ出すぞ……」
耳の奥に濡れたような沢村の声。
ぽたり、と彼の汗が高弥の上に落ちる。
「あぁっ……」
高弥はオメガだが、中学生の頃大病したことが理由で妊娠はしづらい体がだと医師に言われている。
それを知っている沢村は当然のように避妊具を着けていない。
そのため体の奥に熱い精液がじかに注がれる。
「あーーやべ……きもちいー……」
「っあ……あ、あっ……熱ぅっ……」
溶かされてしまいそうなくらい熱い体液でお腹の中を濡らされる。
「あっ、も、やだぁ……抜いて……ぇ……うぁっ」
アルファ特有の長い射精に耐えられず狭いベッドの上を逃げようとするのに、ぐっと腰を押し付けられて脚を掴まれ、一番奥深くで繋がったまま少しも逃げることは許されない。
沢村の精液が全て出される頃には、高弥の意識はすっかり遠のいていた。
*******
「うぉ!これでホーム10連勝じゃん!」
デカい声が聞えて、高弥は目を開けた。
「……家主が寝てんだから、配慮とかできないんですかね……」
枕に顔を埋めながら高弥は言う。
「おー、おー。やっと起きたか。お前全然起きねぇから死んだと思ったわー」
コーラ片手にベッドの端に座り、ナイターを見ていた沢村が振り返る。
体は拭いてもらえたのかさらりとしていて、新しいTシャツに着替えさせられている。
「……それも俺が冷やしておいたコーラじゃないですか?」
「一本くらいいーだろ。ケチケチすんな」
「一本くらいって……一本しか入ってなかったでしょ?! なけなしの一本飲むなんて鬼! 悪魔! 暑さに耐えられなかった時用の対策だったのに……ってあれ……?」
そういえば、部屋が暑くない……?
涼しい風がふわっと高弥の前髪を揺らした。
風が吹いてきたところを振り返ると、高弥の腰ほどある高さの四角い機械からみたいなものから冷たい風が吹いてきて気持ちいい。
その機械はどこかで見覚えがあった。
「これ、病院の……?」
高弥は身を起こして機械をよく見た。
「あー、エアコン壊れた病室に修理来るまで入れてた簡易エアコンな。そういや、倉庫に置きっぱになってて今使ってねぇから借りてきてやった」
移動式の簡易エアコンはちゃんとしたエアコンほどの冷却力はないが、この狭い部屋なら十分涼しくしてくれた。
「え……?」
「こんなクソ熱あちぃ部屋、球場行った気分で野球見ろっつーのかよ。暑くて死ぬかと思ったわ」
「いや、野球は帰って見ればいいじゃないですか」
「っせぇな。簡易エアコン持ってきてやった救世主だろうが、俺は。もっと感謝しろ。それとも……」
沢村はコーラをテーブルに置くと、高弥のすぐそばに手を突き耳元に唇を寄せた。
思わず後退って沢村と距離を取ろうとするが、先回りされた腕で腰を抑えられて、逃げられない。
「あちぃ部屋で汗だくでヤる方が、イイ?」
熱くて、気持ちよかったもんな、と低い声で笑いながら、声を注ぎ込まれる。
「……っん」
すると、沢村に体の奥に出された体液がとろりと溢れ出てきてTシャツに滲んだ。体は拭いてくれたけど、奥に出したものはそのままにされていたらしい。
「折角涼しくなったんだから、快適な環境でもう一回ヤるかぁ」
そう言った沢村がニヤリと笑って高弥の体を再びベッドの中にゆっくりと沈めた。
おわり
99
お気に入りに追加
3,434
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる