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番外編SS
BLUE HEAVEN1
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沢村と高弥の初めての出会いの話です。
沢村大学生、高弥中学生です。
BLUE HEAVEN
「陽介ぇ、今日Safari行く?」
溜まり場である地下にある仄昏い店で声を掛けてきた女は派手だが、すらりとした美人。 その女が美しく長い爪で陽介のピアスを弄りながら問う。
「あー、わり。俺今日ボランティアで行けねーわ」
黒いフードを被った陽介は口に煙草を咥えながら面倒くさそうに言った。
「ボランティアぁ? 陽介がボランティアとかありえねぇんだけど」
隣で同じように煙草を咥え、耳にぐるりと一周大量のピアスが光る男が低く笑った。
続くようにその場に集った者達の笑い声が響いた。
「何か病院でボランティアしねーと海外の病院での実習の推薦状書かねぇってガッコがうるさくてなー」
あぁ、面倒クセェと言った陽介はゆるゆると紫煙を吐き出した。フードから覗く髪はプラチナ色に美しくカラーリングされていて、日焼けした男の肌と絶妙に似合っていた。国籍不明の外国人にも見える容姿は、美しく筋肉の乗った伸びやかな青年らしい肢体と相まって面白いほど女達に騒がれた。
「病気になっても陽介だけには診てもらいたくねぇな。つーか日本の病院じゃだめなわけ?」
「日本の病院だと、決まりがうるさくてなー。決まりもクソもねぇぐらい未開の地の病院だったら、日本で学生にさせてくんなさそうなことまでどんどんやらせてくれるらしいんだよ。オペとかやってみてぇじゃん?」
金髪の前髪から覗く、鋭い肉食獣のような瞳が愉しそうに嗤う。
「うっわ。怖ぇ。今からお前にオペされる患者に同情するわ」
「言ってろ。人体の仕組みなんか完璧に頭んナカ入ってるから何処にどうメスを入れたらいいかも間違いなくわかるっつーの」
そう言って陽介はちらりと時計を見る。
「面倒くせぇけどそろそろ行くわ。じゃな」
陽介は座っていたテーブルの上から降りる。
先ほど声を掛けてきた女に
「わりーな、今度またSafariでヤろうぜ 」
そう低く囁いて、女のピアスを長い指先で揺らすと、陽介は地下の店を後にした。
地下の店から出ると、 午後の日差しは大分傾いて夕方が近いことを陽介に知らせた。
「4時っつてたっけ。やべー、遅れっかな。ま、 ボランティアなんだから別にいっか」
そう言ってギリギリの時間にも関わらず、気にすることなく怠そうに灰色の道を陽介は歩く。
「この辺いつもマジでこんなにクセェんだよ」
若者が集うこの街は華やかだけれど、いつも色んな匂いが入り交じって不快だった。
「それにボランティアも響きからしてつまんなそうな匂いしかしねぇし」
何をやっても人より何でも出来た。特に努力したこともない。
一度耳に入れたら大抵のことは覚えられたし理解できた。
運動も勉強も何だって簡単すぎる。
簡単すぎて何もかもが面白くなかったけど、どうしてか人体にだけは少し興味が持てた。
政治家である一族に逆らいたかったのもあるかもしれない。全く関係ない医学部を目指したが大した努力もしていないのに最高峰と言われる帝大医学部にも合格してしまった。
面白い授業をする講師がいるのでそこそこ満足して通ってはいるが、どうしても、いつも、何か物足りない。何をしてもどんな遊びをしても満足できない。
大通りに出て右手を挙げると一台のタクシーが停まった。
「帝大付属病院まで」
端的に告げると、目的地に向かってするりとタクシーは走り出した。
沢村大学生、高弥中学生です。
BLUE HEAVEN
「陽介ぇ、今日Safari行く?」
溜まり場である地下にある仄昏い店で声を掛けてきた女は派手だが、すらりとした美人。 その女が美しく長い爪で陽介のピアスを弄りながら問う。
「あー、わり。俺今日ボランティアで行けねーわ」
黒いフードを被った陽介は口に煙草を咥えながら面倒くさそうに言った。
「ボランティアぁ? 陽介がボランティアとかありえねぇんだけど」
隣で同じように煙草を咥え、耳にぐるりと一周大量のピアスが光る男が低く笑った。
続くようにその場に集った者達の笑い声が響いた。
「何か病院でボランティアしねーと海外の病院での実習の推薦状書かねぇってガッコがうるさくてなー」
あぁ、面倒クセェと言った陽介はゆるゆると紫煙を吐き出した。フードから覗く髪はプラチナ色に美しくカラーリングされていて、日焼けした男の肌と絶妙に似合っていた。国籍不明の外国人にも見える容姿は、美しく筋肉の乗った伸びやかな青年らしい肢体と相まって面白いほど女達に騒がれた。
「病気になっても陽介だけには診てもらいたくねぇな。つーか日本の病院じゃだめなわけ?」
「日本の病院だと、決まりがうるさくてなー。決まりもクソもねぇぐらい未開の地の病院だったら、日本で学生にさせてくんなさそうなことまでどんどんやらせてくれるらしいんだよ。オペとかやってみてぇじゃん?」
金髪の前髪から覗く、鋭い肉食獣のような瞳が愉しそうに嗤う。
「うっわ。怖ぇ。今からお前にオペされる患者に同情するわ」
「言ってろ。人体の仕組みなんか完璧に頭んナカ入ってるから何処にどうメスを入れたらいいかも間違いなくわかるっつーの」
そう言って陽介はちらりと時計を見る。
「面倒くせぇけどそろそろ行くわ。じゃな」
陽介は座っていたテーブルの上から降りる。
先ほど声を掛けてきた女に
「わりーな、今度またSafariでヤろうぜ 」
そう低く囁いて、女のピアスを長い指先で揺らすと、陽介は地下の店を後にした。
地下の店から出ると、 午後の日差しは大分傾いて夕方が近いことを陽介に知らせた。
「4時っつてたっけ。やべー、遅れっかな。ま、 ボランティアなんだから別にいっか」
そう言ってギリギリの時間にも関わらず、気にすることなく怠そうに灰色の道を陽介は歩く。
「この辺いつもマジでこんなにクセェんだよ」
若者が集うこの街は華やかだけれど、いつも色んな匂いが入り交じって不快だった。
「それにボランティアも響きからしてつまんなそうな匂いしかしねぇし」
何をやっても人より何でも出来た。特に努力したこともない。
一度耳に入れたら大抵のことは覚えられたし理解できた。
運動も勉強も何だって簡単すぎる。
簡単すぎて何もかもが面白くなかったけど、どうしてか人体にだけは少し興味が持てた。
政治家である一族に逆らいたかったのもあるかもしれない。全く関係ない医学部を目指したが大した努力もしていないのに最高峰と言われる帝大医学部にも合格してしまった。
面白い授業をする講師がいるのでそこそこ満足して通ってはいるが、どうしても、いつも、何か物足りない。何をしてもどんな遊びをしても満足できない。
大通りに出て右手を挙げると一台のタクシーが停まった。
「帝大付属病院まで」
端的に告げると、目的地に向かってするりとタクシーは走り出した。
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