42 / 54
番外編SS
旦那さんは心配症1
しおりを挟む
※本編終了後からちょっと経った頃。まだ妊娠中です。
「はぁ? 高梨先生点滴しなかったわけ?」
かかりつけの病院で妊娠の検診を終え、沢村が待つ車に戻ると、怒りで眉を寄せながら沢村が言った。
「今日凄い混んでて……だから俺がしなくていいって言ったんです」
高弥が言うと
「患者がいらねぇつっても、無理にでも点滴するとこだろーが。ちょっと文句言ってくる」
「ちょっ……ちょっーと待ったぁ」
車から飛び出しかけた沢村の袖を何とか捕まえて運転席に引き戻す。
「んだよ。すぐ済むから待ってろ。すぐに点滴の準備させる」
「もーこれ以上やったら通いづらくなるから止めて下さい。そもそも沢村先生がこの前の検診のとき診察室まで付いて来るから、高梨先生超ビビっちゃったじゃないですか」
「はぁ? 診察室まで旦那が入るのなんて別に珍しくねぇだろうが」
「そうですけど……威圧感半端ないし、あの質問の嵐ホント止めてください」
「んだよ、患者と家族の質問に答えるのは医者の当然の職務だろーが。俺でさえもちゃんとやってるっつーの。つーかさぁこんなに痩せて殆んど食えてねぇんだから点滴すんだろーが、普通」
「体重もまだ2キロくらいしか減ってないし、尿検査でケトン体は陽性でしたけどそんなひどいのは数字じゃなかったし」
「ケトン体出て体重減少してんだから点滴の案件だろうが、何処に目ぇ付けてんだよあのヤブ医者」
「だから、自分で断ったんですって……っう」
勢いよく喧嘩したら、くらりと目眩がして、 助手席のシートに高弥は凭れた。
「っと、わり……大丈夫か?」
心配そうな顔で覗き込まれる。この男に心配そうな顔をさせているのだと思うと、しんどいけれど悪くもないと思えてしまった。
「大丈夫です……ただちょっと疲れました。眠い……」
ふ、と小さく吐息を吐くと
「なぁ、何か飲めるか? できればちょっとでも甘いモンがいいと思うんだけど」
そう言ってコンビニの袋の中を沢村が見せる。
どうやら駐車場で待っているうちに買ったらしい。
中には水、麦茶、りんごジュース、オレンジジュース、スポーツドリンク。
「何本買ってんすか……」
呆れた声を出す高弥に
「だって日によってお前飲めるモン変わんじゃん」
「……じゃあ折角だから」
そう言った沢村の持っていた袋からスポーツドリンクを選ぶ。そのまま袋から取り出そうとしたが、先に沢村が取ってボトルキャップを回してから高弥に渡した。
そうして、恐る恐る口を近づける。ここで勢いよくいってしまうと水分補給どころか、更に体内の水分が奪われる結果になるのだ。
ふわりとスポーツドリンクの爽やかな香りが鼻腔を擽る。
「……すみません……折角買ってくれたのに、やっぱだめです……多分吐いちゃう……」
ここ数日は益々つわりが酷くなったため、 嘔吐が怖くて食べたり飲んだりすることも躊躇ってしまう。
「あー買ってくるのは別にいいんだけどさぁ……飲めないのは問題点だと思うぜ……とりあえず、眠れるなら寝とけよ。長かったから疲れたろ」
「はい……すみません、 じゃあ着くまで寝ますね」
そう言って高弥は重たい瞼を閉じた。
「はぁ? 高梨先生点滴しなかったわけ?」
かかりつけの病院で妊娠の検診を終え、沢村が待つ車に戻ると、怒りで眉を寄せながら沢村が言った。
「今日凄い混んでて……だから俺がしなくていいって言ったんです」
高弥が言うと
「患者がいらねぇつっても、無理にでも点滴するとこだろーが。ちょっと文句言ってくる」
「ちょっ……ちょっーと待ったぁ」
車から飛び出しかけた沢村の袖を何とか捕まえて運転席に引き戻す。
「んだよ。すぐ済むから待ってろ。すぐに点滴の準備させる」
「もーこれ以上やったら通いづらくなるから止めて下さい。そもそも沢村先生がこの前の検診のとき診察室まで付いて来るから、高梨先生超ビビっちゃったじゃないですか」
「はぁ? 診察室まで旦那が入るのなんて別に珍しくねぇだろうが」
「そうですけど……威圧感半端ないし、あの質問の嵐ホント止めてください」
「んだよ、患者と家族の質問に答えるのは医者の当然の職務だろーが。俺でさえもちゃんとやってるっつーの。つーかさぁこんなに痩せて殆んど食えてねぇんだから点滴すんだろーが、普通」
「体重もまだ2キロくらいしか減ってないし、尿検査でケトン体は陽性でしたけどそんなひどいのは数字じゃなかったし」
「ケトン体出て体重減少してんだから点滴の案件だろうが、何処に目ぇ付けてんだよあのヤブ医者」
「だから、自分で断ったんですって……っう」
勢いよく喧嘩したら、くらりと目眩がして、 助手席のシートに高弥は凭れた。
「っと、わり……大丈夫か?」
心配そうな顔で覗き込まれる。この男に心配そうな顔をさせているのだと思うと、しんどいけれど悪くもないと思えてしまった。
「大丈夫です……ただちょっと疲れました。眠い……」
ふ、と小さく吐息を吐くと
「なぁ、何か飲めるか? できればちょっとでも甘いモンがいいと思うんだけど」
そう言ってコンビニの袋の中を沢村が見せる。
どうやら駐車場で待っているうちに買ったらしい。
中には水、麦茶、りんごジュース、オレンジジュース、スポーツドリンク。
「何本買ってんすか……」
呆れた声を出す高弥に
「だって日によってお前飲めるモン変わんじゃん」
「……じゃあ折角だから」
そう言った沢村の持っていた袋からスポーツドリンクを選ぶ。そのまま袋から取り出そうとしたが、先に沢村が取ってボトルキャップを回してから高弥に渡した。
そうして、恐る恐る口を近づける。ここで勢いよくいってしまうと水分補給どころか、更に体内の水分が奪われる結果になるのだ。
ふわりとスポーツドリンクの爽やかな香りが鼻腔を擽る。
「……すみません……折角買ってくれたのに、やっぱだめです……多分吐いちゃう……」
ここ数日は益々つわりが酷くなったため、 嘔吐が怖くて食べたり飲んだりすることも躊躇ってしまう。
「あー買ってくるのは別にいいんだけどさぁ……飲めないのは問題点だと思うぜ……とりあえず、眠れるなら寝とけよ。長かったから疲れたろ」
「はい……すみません、 じゃあ着くまで寝ますね」
そう言って高弥は重たい瞼を閉じた。
112
お気に入りに追加
3,453
あなたにおすすめの小説

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。



新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる