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3章
8話
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先ほど沢村が降りてきたファミリータイプの黒のワンボックスカーに近付くと、車はピカピカに綺麗だった。
「これ、もしかして新車じゃないですか?」
沢村は身軽にどこでも行けるバイク派なのに。
「ボストン行くちょっと前くらいに納車したばっか」
そう言って運転席に乗り込んだ沢村に倣い、高弥も助手席に乗り込む。
「沢村先生がファミリータイプの車とか超意外なんですけど」
高弥が助手席に座って沢村の方を見て言うと、沢村は少しだけ気まずそうに視線をずらして
「……お前旅行もしたことねーっつてたし、何かテレビでグランピングキャンプしてんの見ていいなーっつてたじゃねぇか」
と言った。
高弥の目が真ん丸になって
「もしかして旅行とかキャンプとか連れてってくれるつもりだったんすか?」
と、 言うと照れたようにちいさく「うるせぇな、そうだよ。キャンプとか旅行行くならでけぇ車のがいいだろ」と呟くように言った。
そのとき、高弥のポケットに入れていた携帯が震えて着信を知らせた。
「あ……ユキ先生」
画面を見た高弥はそう言って電話に出た。
「もしもし、ユキ先生?……… え?……… あ……来ました。今一緒です。はい。………すみません、迷惑かけちゃって。あとで永瀬先生にも……はい、わかりました。必ず行きます。ありがとうございます」
幾つか言葉を交わしたあと、高弥は通話を切った。
「なぁ、雪也さん、何て?」
沢村が聞くと
「面接キャンセルするのは永瀬先生から連絡しておいてくれるそうです。それから二人でちゃんと後で先生達のところに来るようにって」
と高弥は聞いたことを伝える。
「永瀬さんはどうせ俺がお前のこと迎えに行くってわかってたんだから、面接の予定なんか最初から入れてなかったんじゃねぇの」
ため息を吐いてハンドルに突っ伏した沢村。
「まさかそんなわけないですよ。俺のために色々やってくれて面接キャンセルまでさせちゃったんだから、ちゃんと謝りに行かなきゃ。ユキ先生、沢村先生のことぶん殴ってくれるって言ってたし」
そう言って高弥が笑うと
「笑ってんじゃねぇよ、しかもそれ冗談じゃなさそうじゃん」
と沢村は溜め息を吐いたものだから高弥は更に笑いが止まらなくなった。
一頻り笑ったあと、沢村が高弥にシートベルトをするために、高弥の方に体ごと腕を伸ばしシートベルトをかちりと留めた。
「苦しくねぇ?」
「え?」
「まだ悪阻あんだろ? ベルトで気持ち悪くなんねぇか聞いてんの」
軽く覆い被さるような体勢。すぐ近くにある沢村の心配そうな目と視線が交わった。
「ん、大丈夫そう」
心配されるのがくすぐったくて高弥が少し笑って答えると、その顔を間近で見た沢村はちいさく数秒固まった。
すると。
「悪ぃ、ちょっとだけ」
我慢、 できねぇ
くちびるに、軽く吐息が掛かったと思ったら、そっとやわらかく触れた。
何度か軽く表面を啄んでからくちびるが離れた。互いの鼻先が触れあうほどに近いところで視線が絡まる。
「……っ高弥……」
低音が狂おしく響いた次の瞬間。
「んっ……」
奪うように深く、くちびるが重ねられた。
熱い舌が絡まって、優しく何度も吸われる。
大きなてのひらが高弥の髪に潜ったり、頬を撫でたり、高弥の感触を味わうように動く。
くちびるからもてのひらからも沢村が高弥をどれだけ愛しく思っているかが溢れんばかりに伝わったきた。
でも思い起こせば、沢村はいつだってこうやって高弥に触れていたような気がする。
ちゅ、ちゅと濡れた音を立てて何度も柔らかく舌を吸ってはくちびるを押し当ててくる。
どれくらいそうして、柔らかくくちびるを味わっていただろうか。
ようやくくちびるを離すと
「きりねぇな。早く帰るぞ」
そう照れくさそうに沢村が言うと車はゆっくりと発進した。
「これ、もしかして新車じゃないですか?」
沢村は身軽にどこでも行けるバイク派なのに。
「ボストン行くちょっと前くらいに納車したばっか」
そう言って運転席に乗り込んだ沢村に倣い、高弥も助手席に乗り込む。
「沢村先生がファミリータイプの車とか超意外なんですけど」
高弥が助手席に座って沢村の方を見て言うと、沢村は少しだけ気まずそうに視線をずらして
「……お前旅行もしたことねーっつてたし、何かテレビでグランピングキャンプしてんの見ていいなーっつてたじゃねぇか」
と言った。
高弥の目が真ん丸になって
「もしかして旅行とかキャンプとか連れてってくれるつもりだったんすか?」
と、 言うと照れたようにちいさく「うるせぇな、そうだよ。キャンプとか旅行行くならでけぇ車のがいいだろ」と呟くように言った。
そのとき、高弥のポケットに入れていた携帯が震えて着信を知らせた。
「あ……ユキ先生」
画面を見た高弥はそう言って電話に出た。
「もしもし、ユキ先生?……… え?……… あ……来ました。今一緒です。はい。………すみません、迷惑かけちゃって。あとで永瀬先生にも……はい、わかりました。必ず行きます。ありがとうございます」
幾つか言葉を交わしたあと、高弥は通話を切った。
「なぁ、雪也さん、何て?」
沢村が聞くと
「面接キャンセルするのは永瀬先生から連絡しておいてくれるそうです。それから二人でちゃんと後で先生達のところに来るようにって」
と高弥は聞いたことを伝える。
「永瀬さんはどうせ俺がお前のこと迎えに行くってわかってたんだから、面接の予定なんか最初から入れてなかったんじゃねぇの」
ため息を吐いてハンドルに突っ伏した沢村。
「まさかそんなわけないですよ。俺のために色々やってくれて面接キャンセルまでさせちゃったんだから、ちゃんと謝りに行かなきゃ。ユキ先生、沢村先生のことぶん殴ってくれるって言ってたし」
そう言って高弥が笑うと
「笑ってんじゃねぇよ、しかもそれ冗談じゃなさそうじゃん」
と沢村は溜め息を吐いたものだから高弥は更に笑いが止まらなくなった。
一頻り笑ったあと、沢村が高弥にシートベルトをするために、高弥の方に体ごと腕を伸ばしシートベルトをかちりと留めた。
「苦しくねぇ?」
「え?」
「まだ悪阻あんだろ? ベルトで気持ち悪くなんねぇか聞いてんの」
軽く覆い被さるような体勢。すぐ近くにある沢村の心配そうな目と視線が交わった。
「ん、大丈夫そう」
心配されるのがくすぐったくて高弥が少し笑って答えると、その顔を間近で見た沢村はちいさく数秒固まった。
すると。
「悪ぃ、ちょっとだけ」
我慢、 できねぇ
くちびるに、軽く吐息が掛かったと思ったら、そっとやわらかく触れた。
何度か軽く表面を啄んでからくちびるが離れた。互いの鼻先が触れあうほどに近いところで視線が絡まる。
「……っ高弥……」
低音が狂おしく響いた次の瞬間。
「んっ……」
奪うように深く、くちびるが重ねられた。
熱い舌が絡まって、優しく何度も吸われる。
大きなてのひらが高弥の髪に潜ったり、頬を撫でたり、高弥の感触を味わうように動く。
くちびるからもてのひらからも沢村が高弥をどれだけ愛しく思っているかが溢れんばかりに伝わったきた。
でも思い起こせば、沢村はいつだってこうやって高弥に触れていたような気がする。
ちゅ、ちゅと濡れた音を立てて何度も柔らかく舌を吸ってはくちびるを押し当ててくる。
どれくらいそうして、柔らかくくちびるを味わっていただろうか。
ようやくくちびるを離すと
「きりねぇな。早く帰るぞ」
そう照れくさそうに沢村が言うと車はゆっくりと発進した。
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