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番外編SS
レオンの出産レポート3
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「よかったぁ……」
そう言って長いまつ毛をゆっくりと伏せると、目の縁からひと雫溢れた。
その表情があまりに美しく、レオンは時が止まったかのかのようにシンの顔を見つめた。
口を開けば、らしくないことを口走りそうで、ただ黙ってシンの頭を撫でた。
胸に去来する想いは言葉にできなかった。
「はい。赤ちゃんしっかり体重もあるし、元気いっぱいよ」
そう言って産着に包まれた赤子がレオンに手渡された。
「……っ」
レンが生まれたばかりの頃は会えなかった。だから、レオンにとっては初めて腕に抱く小さな小さな体。少しでも力を入れたら壊れてしまいそうなほどだ。
「ふふ……すごい緊張してますね? ね。赤ちゃんの……かお、みたい……」
疲労で少し掠れた声のシンがそっとレオンのシャツの裾を引っ張る。
「うわぁ。やっぱりレオンによく似てますね」
恐る恐る屈んでシンにも赤ん坊の顔がよく見えるようにしてやると、シンは笑って赤ん坊の頬に触れた。
「そうか? 俺にはお前に似ているように見える」
レオンがそう言うと、シンは驚いたように目を見開いた。
そのときだった。
「シンくん、やっぱり今回も出血が酷いから先生呼んでくるね。止血の処置はしたんだけど多分すぐには止まらないと思う」
レオンとシンが話している間も、シンの処置を続けていた助産師の硬い声が聞こえた。
「わかりました」
シンは予想していたらしく落ち着いた声で答えていた。
「出血が酷いって……痛みはないのか?」
出血が多いと言われているのに落ち着いた様子で受け答えしているシン。
「さっきみたいな激痛はないですけど……ジンジン疼くみたいな痛みは結構強いですよ。でもこうやって話しができる程度ですから」
産後だからと思ったが、それにしても酷く顔色が悪い。透けそうなほど青白い顔に、全く血の気のない唇。
「レオンさん、先生の処置が始まりますので、廊下でお待ちいただいてもいいですか? 赤ちゃんはしばらくこちらでお預かりしますね」
硬い顔をしたスタッフに告げられ、レオンは赤ん坊を手渡した。
「そんな顔しないで。レンのときも出血多かったこと先生は把握してるし大丈夫」
シンに指摘され、レオンは自分が随分と不安そうな顔をしていることに気がついた。
「……っ」
当のシンに励まされるようにぎゅっと手を握られたが、シンの手は驚くほど冷たかった。
だが、すぐに駆け足で病室に入ってきた医師と入れ替わるように、レオンは分娩室を出なければならなかった。
そう言って長いまつ毛をゆっくりと伏せると、目の縁からひと雫溢れた。
その表情があまりに美しく、レオンは時が止まったかのかのようにシンの顔を見つめた。
口を開けば、らしくないことを口走りそうで、ただ黙ってシンの頭を撫でた。
胸に去来する想いは言葉にできなかった。
「はい。赤ちゃんしっかり体重もあるし、元気いっぱいよ」
そう言って産着に包まれた赤子がレオンに手渡された。
「……っ」
レンが生まれたばかりの頃は会えなかった。だから、レオンにとっては初めて腕に抱く小さな小さな体。少しでも力を入れたら壊れてしまいそうなほどだ。
「ふふ……すごい緊張してますね? ね。赤ちゃんの……かお、みたい……」
疲労で少し掠れた声のシンがそっとレオンのシャツの裾を引っ張る。
「うわぁ。やっぱりレオンによく似てますね」
恐る恐る屈んでシンにも赤ん坊の顔がよく見えるようにしてやると、シンは笑って赤ん坊の頬に触れた。
「そうか? 俺にはお前に似ているように見える」
レオンがそう言うと、シンは驚いたように目を見開いた。
そのときだった。
「シンくん、やっぱり今回も出血が酷いから先生呼んでくるね。止血の処置はしたんだけど多分すぐには止まらないと思う」
レオンとシンが話している間も、シンの処置を続けていた助産師の硬い声が聞こえた。
「わかりました」
シンは予想していたらしく落ち着いた声で答えていた。
「出血が酷いって……痛みはないのか?」
出血が多いと言われているのに落ち着いた様子で受け答えしているシン。
「さっきみたいな激痛はないですけど……ジンジン疼くみたいな痛みは結構強いですよ。でもこうやって話しができる程度ですから」
産後だからと思ったが、それにしても酷く顔色が悪い。透けそうなほど青白い顔に、全く血の気のない唇。
「レオンさん、先生の処置が始まりますので、廊下でお待ちいただいてもいいですか? 赤ちゃんはしばらくこちらでお預かりしますね」
硬い顔をしたスタッフに告げられ、レオンは赤ん坊を手渡した。
「そんな顔しないで。レンのときも出血多かったこと先生は把握してるし大丈夫」
シンに指摘され、レオンは自分が随分と不安そうな顔をしていることに気がついた。
「……っ」
当のシンに励まされるようにぎゅっと手を握られたが、シンの手は驚くほど冷たかった。
だが、すぐに駆け足で病室に入ってきた医師と入れ替わるように、レオンは分娩室を出なければならなかった。
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