双子の王子に双子で婚約したけど「じゃない方」だから闇魔法を極める

福澤ゆき

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番外その2-オールキャラ短篇『悪い遊び』

1.

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本編ラストのその後の短篇です。シュリ総受け風味なコンラート視点。






アルシュタットの冬は、首都ヘッセンよりもさらに冷え込む。
街中は、夜もいたるところに光魔法によるランプで彩られて美しいが、日が落ちてしまうと外を観光するにはあまりに寒さが厳しく、早々に宿泊予定先であるフレーベルの屋敷に引き上げていた。
お忍びとはいえ、二人の王子に加え、その婚約者までが泊りにくるとなっては、屋敷内はどこかピリついていた。
特に父は、朝から緊張で気が立っており、落ち着かない様子で冬眠明けのクマのように廊下をうろうろとしている。

晩餐を終えてしまえば、屋敷内にいてもやることはない。
シュリが泊っているゲストルームに遊びに行こうと廊下に出ると、待ち構えていたように後ろからガシッと父に肩を掴まれた。

「コンラート。どこに行くつもりだ?」
「え? シュリたんのお部屋に」

当然のように言うと、父は血相を変えて「この馬鹿息子が!」と怒鳴った。

「こんな時間に、王子の婚約者の部屋に行くなどと正気か? 間違いがあったらどうする! 首を刎ねられるだけじゃ済まないぞ!」
「間違いって……」

親友だって言ってんじゃんとコンラートは苦笑しながらも、父に首根っこを掴まれて引きずられ、部屋に引き戻された。

「間違い、ねー……」

一人になった部屋で、ごろんと寝ころび、天井を眺めながらコンラートは呟いた。
むしろそんなこと、あってみたいものだ。自分からは絶対にシュリにその手のことは言わないと決めている。そしてシュリがそんな間違いを犯す訳がないことも分かっていた。
最近は、以前より二人きりになることが少なくなっていた。
それはシュリ自身が学園に馴染んだということもあるが、一緒にいて、友達以上の感情が暴走しないかどうか心配だった。

(シュリ、綺麗になったもんなー……)

出会ったばかりの頃は、彼は今にも壊れてしまいそうに繊細で、ただ守りたい、守らなければという気持ちの方が強かった。だが今は、凛として、一本筋の通った美しさがあり、ぼんやりしていると惹きつけられてしまいそうになる。

(万に一つ……いや、億に一つそういう間違いが起きたとしたら……。激しい夜になるだろうな~。俺も積年の想いがあるし。シュリああ見えて情熱的だからなー。その後はやっぱ駆け落ちか……。南の方の海沿いの暖かい街で、一緒に小さな店でもやって……子供は3人ぐらいかな。半獣と人間の子供ってマジどうなるんだろう。シュリたん似の美人黒猫と、俺似のイケメン茶トラと……あーでもやっぱネコチャンだし、3人と言わず子だくさんになっちゃうかなーそれも楽しみだなあ)

そんな将来を真剣に妄想していると、不意にドアがノックされた。

「はい?」
「コンラート? 俺だ」

まさに勝手に妄想して結婚相手にしていたシュリの声で、コンラートは柄にもなく心臓が跳ね上がった。

「ど、どうぞー、入って」

(やばー……勃ってないよな?)

思わず下半身を確認しつつ、中に招き入れると、シュリはすでに寝巻に着替えている。
「どうしたの? 眠れないの?」と言おうとすると、シュリはシーと人差し指を自分の唇に当て、少し艶っぽく笑った。

「コンラート、悪い遊びをしよう」
「………へ?」

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