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第4章 ホーム
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「そんな食い入るように見ないで」
マリエは照れたように小さく笑った。
「噂の真偽はわからない。でも、私たちの中に高齢者はいないじゃない? ある程度の年齢になったらリタイアできるとしたら、高齢の奉仕者がいないことの説明はつくわ」
「似たような噂は聞いたことあるよ」
僕も白状した。
「性奉仕をすると、三十一歳で国民に準ずる権利が与えられるって」
「職種は違うけど、似たような噂はあるのね」
マリエの口ぶりはさりげなかったが、目がキラリと輝くのはわかった。
「あの……私もひとつ聞いていい?」
彼女は言った。
「なに?」
「スグルは、自分たちが、その……性奉仕に携わることになるかも知れないって、いつ頃から知ってたの?」
「いつって……」
僕はすぐに答えることは出来なかった。
センターで居住棟に向かう車の中で、タケルが「性奉仕」と口にした時のことを思い出していた。
あの時、僕はタブーが破られたような気がして、少し動揺すると同時に、それを痛快に思う気持ちもあった。
センターに移送されたときはすでに、自分が性奉仕に携わるであろうと予見する知識はあった。
その知識は、いつ、僕の頭に植え込まれたのか。
十二歳の時には、すでに知っていたような気がする。
それよりもずっと前から、薄々ながらも気づいていたのかも知れない。
マリエは照れたように小さく笑った。
「噂の真偽はわからない。でも、私たちの中に高齢者はいないじゃない? ある程度の年齢になったらリタイアできるとしたら、高齢の奉仕者がいないことの説明はつくわ」
「似たような噂は聞いたことあるよ」
僕も白状した。
「性奉仕をすると、三十一歳で国民に準ずる権利が与えられるって」
「職種は違うけど、似たような噂はあるのね」
マリエの口ぶりはさりげなかったが、目がキラリと輝くのはわかった。
「あの……私もひとつ聞いていい?」
彼女は言った。
「なに?」
「スグルは、自分たちが、その……性奉仕に携わることになるかも知れないって、いつ頃から知ってたの?」
「いつって……」
僕はすぐに答えることは出来なかった。
センターで居住棟に向かう車の中で、タケルが「性奉仕」と口にした時のことを思い出していた。
あの時、僕はタブーが破られたような気がして、少し動揺すると同時に、それを痛快に思う気持ちもあった。
センターに移送されたときはすでに、自分が性奉仕に携わるであろうと予見する知識はあった。
その知識は、いつ、僕の頭に植え込まれたのか。
十二歳の時には、すでに知っていたような気がする。
それよりもずっと前から、薄々ながらも気づいていたのかも知れない。
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