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第2章 タケル
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センター送りが通告されたのは、男子寮での出来事があってから、ちょうど一週間後のことだった。
そういう基準で選ばれるのではないとわかっていても、僕の中でタケルとのセックスとセンターへの移送は地続きになっていて、おそらくタケルも同じ気持ちでいたに違いない。
僕たちはわだかまりを抱えたままセンターに来て、二人の生活を始めた。
そして、タケルは変わった。
「言うつもりはなかったけど、きみもかなり変だと思うよ。あのことがあってから、なんというか……僕の上に立って支配しようとしただろう? 僕が誰かに喋るとでも思ったの? 僕がそんなに馬鹿だと思ってるの?」
「そんなホームにいた頃の話を、今さら蒸し返して──」
「まだ三ヶ月も経ってない」
僕は言って、自分でも意外に感じた。
もっと昔のことのように思えた。
「スグル、きみはまだホームにいる気でいるのかい? もうあの時とはまったく状況が違うんだ」
タケルの口調は、まるで僕が蛇のような執念深さで大昔のことをほじくり返しているかのようだった。
僕は腹が立った。
「きみだって、大上段に立って人にお説教できる立場か? 人を見下して、自分は皆と違うと思ってるんだろ? そんなことをして楽しい? きみは違うと思っているかも知れないけど、きみも彼らと同じだ。外の人から見れば何も変わらない、同じ穴の狢なんだ」
タケルの顔は怒りで蒼白になった。
くるりと踵を返すと、足早に去って行った。
それから、僕たちは気まずいまま、残りの日々を過ごした。
お互い他に行くところがないから一緒にいるし、会話はするけど、二人の間には目に見えない大きな岩のような動かし難いわだかまりがあった。
わだかまりがあることを互いに意識して、食べ物のことや天気のことのようなつまらない話をするときも、腹のうちを探り合うようなギクシャクした空気を拭えなかった。
それを取り除けないまま、十二週間の訓練過程が終了した。
そういう基準で選ばれるのではないとわかっていても、僕の中でタケルとのセックスとセンターへの移送は地続きになっていて、おそらくタケルも同じ気持ちでいたに違いない。
僕たちはわだかまりを抱えたままセンターに来て、二人の生活を始めた。
そして、タケルは変わった。
「言うつもりはなかったけど、きみもかなり変だと思うよ。あのことがあってから、なんというか……僕の上に立って支配しようとしただろう? 僕が誰かに喋るとでも思ったの? 僕がそんなに馬鹿だと思ってるの?」
「そんなホームにいた頃の話を、今さら蒸し返して──」
「まだ三ヶ月も経ってない」
僕は言って、自分でも意外に感じた。
もっと昔のことのように思えた。
「スグル、きみはまだホームにいる気でいるのかい? もうあの時とはまったく状況が違うんだ」
タケルの口調は、まるで僕が蛇のような執念深さで大昔のことをほじくり返しているかのようだった。
僕は腹が立った。
「きみだって、大上段に立って人にお説教できる立場か? 人を見下して、自分は皆と違うと思ってるんだろ? そんなことをして楽しい? きみは違うと思っているかも知れないけど、きみも彼らと同じだ。外の人から見れば何も変わらない、同じ穴の狢なんだ」
タケルの顔は怒りで蒼白になった。
くるりと踵を返すと、足早に去って行った。
それから、僕たちは気まずいまま、残りの日々を過ごした。
お互い他に行くところがないから一緒にいるし、会話はするけど、二人の間には目に見えない大きな岩のような動かし難いわだかまりがあった。
わだかまりがあることを互いに意識して、食べ物のことや天気のことのようなつまらない話をするときも、腹のうちを探り合うようなギクシャクした空気を拭えなかった。
それを取り除けないまま、十二週間の訓練過程が終了した。
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