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第8章 セクサロイド
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病院の診察室というよりは、刑事モノの映画に登場する警察署の署長室のような部屋だった。
カウンセラーは四十前後の男で、スーツも白衣も着ておらず、紺色とクリーム色のセーターにチノパンというカジュアルな服装をしていた。
「スグル君、そこに座って」
手で「そこ」と示されたソファに僕は腰を下ろし、その斜め右手にカウンセラーは着席した。
「あまりよく眠れていないみたいだね」
「はい」
「入眠に時間がかかるの?」
「それもあるし、眠れても早朝に目が覚めてしまいます」
「なるほど」
彼は手元のファイルを覗き込んだ。
「きみの利用者……林田さんとは上手く行ってないのかな?」
「いや、まあ、なんとか上手くやってますよ」
僕の返事に、彼は顔を上げて訝しむように眉根を寄せる。
「問診した医師によると、暴力を受けていると……」
「プレイの一環で、蝋燭遊びをされたり、打たれたりはしていますが」
「きみはそれを楽しんでるの?」
そう聞かれて、つい僕は笑ってしまった。
「痛くて怖いだけですよ。どうやって楽しめと?」
「痛くて怖いことをされてるのに、きみは『なんとか上手くやってる』と言う」
「これまで五人の利用者さんに奉仕しましたが、僕が嫌がることをしない人はいませんでした。皆に痛いことをされました。結局、目クソ鼻クソなんです。今回はとくに巨大なクソだけど、全員もれなくクソだ」
「なるほど」
彼はまたファイルに目線を落とした。
「あのサディストを相手に、僕は上手く対応してると思います。希死念慮はないし自制は出来てる」
「スグル君、きみは勘違いをしている」
その言葉に、僕は彼の真意を見極めようと目をすがめた。
「私はきみを『減点』するために事情聴取をしているのではない。力になりたいんだ」
「じゃあ、あいつのところから僕を回収してくれるんですか?」
「きみが十六歳未満だったら、虐待事例で保護官の出番になるところだが……」
彼は言い難そうに答えた。
「残念ながら、きみと利用者の間に介入はできない」
カウンセラーは四十前後の男で、スーツも白衣も着ておらず、紺色とクリーム色のセーターにチノパンというカジュアルな服装をしていた。
「スグル君、そこに座って」
手で「そこ」と示されたソファに僕は腰を下ろし、その斜め右手にカウンセラーは着席した。
「あまりよく眠れていないみたいだね」
「はい」
「入眠に時間がかかるの?」
「それもあるし、眠れても早朝に目が覚めてしまいます」
「なるほど」
彼は手元のファイルを覗き込んだ。
「きみの利用者……林田さんとは上手く行ってないのかな?」
「いや、まあ、なんとか上手くやってますよ」
僕の返事に、彼は顔を上げて訝しむように眉根を寄せる。
「問診した医師によると、暴力を受けていると……」
「プレイの一環で、蝋燭遊びをされたり、打たれたりはしていますが」
「きみはそれを楽しんでるの?」
そう聞かれて、つい僕は笑ってしまった。
「痛くて怖いだけですよ。どうやって楽しめと?」
「痛くて怖いことをされてるのに、きみは『なんとか上手くやってる』と言う」
「これまで五人の利用者さんに奉仕しましたが、僕が嫌がることをしない人はいませんでした。皆に痛いことをされました。結局、目クソ鼻クソなんです。今回はとくに巨大なクソだけど、全員もれなくクソだ」
「なるほど」
彼はまたファイルに目線を落とした。
「あのサディストを相手に、僕は上手く対応してると思います。希死念慮はないし自制は出来てる」
「スグル君、きみは勘違いをしている」
その言葉に、僕は彼の真意を見極めようと目をすがめた。
「私はきみを『減点』するために事情聴取をしているのではない。力になりたいんだ」
「じゃあ、あいつのところから僕を回収してくれるんですか?」
「きみが十六歳未満だったら、虐待事例で保護官の出番になるところだが……」
彼は言い難そうに答えた。
「残念ながら、きみと利用者の間に介入はできない」
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