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第6章 手がかり
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タケルが出演していたポルノ動画は、「ブライト・コーポレーション」というメーカーが制作していた。
このような動画制作会社が専属モデルを抱えている場合もあれば、モデルはプロダクションが管理し、メーカーはプロダクションからモデルを派遣されている場合もある。
ブライト・コーポレーションのサイトを見ると、タケルは専属モデルのようで、ほぼ毎週一本のペースで新作を出しており、これまで百本以上のタイトルに出演していることがわかった。
どれもこれも、その過激な内容が想像できるような扇情的なタイトルで、僕は暗澹とした。
今週の新作は、「初フィストで大絶叫! 美青年のアナルを引き裂く! 悲鳴、号泣、ヤラセなし」というもので、作り手の正気を疑うようなタイトルだった。
タケルの所在がわかったのは進展だが、彼の置かれている過酷な環境を思うと焦燥感が募り、なにをしているときも心ここにあらずだった。
僕は居ても立ってもいられず、ブライト・コーポレーションのサイトに表示されている住所に行った。
それは、新宿区の住宅街にある低層マンションだった。
玄関がオートロックでもなければコンシェルジュもいない庶民的な賃貸マンションで、一階はコンビニになっており、二階と三階の各部屋のベランダには洗濯物や布団が干してあるのが見える。
狭いエントランスを入ってすぐ内側に、郵便受けが並んでいた。
ブライト・コーポレーションは二階にあり、郵便受けにはダイヤル式の鍵が掛かっていた。
建物の規模を部屋の数で割ると、ワンルームの狭い部屋であることが想像できた。
ここにあるのは事務所だけで、モデルはべつの場所で管理されているのだろう。
事務所を訪ねてもなにも収穫はないとわかっていても、このまま引き返すのは惜しい気がした。
僕はエントランスホールの右手にある階段を上がった。
二階の廊下にはドアが三つあり、ブライト・コーポレーションは一番手前にあった。
ドアの前に立ち、気配をうかがう。
物音はしないが、ドアの上に設置された電気メーターの円盤が回転しており、中に人がいるのはわかった。
インターホンのボタンを押した。
電子音がした後、しばし静寂が流れた。
僕は急に自分が大胆なことをしていると気付き、怖くなって逃げようとした。が、
『はい?』
インターホンのスピーカーから、男の声がした。
『どなたですか?』
「あ、あの、タケルはいますか?」
『あんた、誰?』
「間違えました、すみません」
僕は逃げ出した。
急いで階段を駆け下り、建物の外に出る。
追いかけてくる人はいないとわかるまで、駅へ向かう道を走った。
このような動画制作会社が専属モデルを抱えている場合もあれば、モデルはプロダクションが管理し、メーカーはプロダクションからモデルを派遣されている場合もある。
ブライト・コーポレーションのサイトを見ると、タケルは専属モデルのようで、ほぼ毎週一本のペースで新作を出しており、これまで百本以上のタイトルに出演していることがわかった。
どれもこれも、その過激な内容が想像できるような扇情的なタイトルで、僕は暗澹とした。
今週の新作は、「初フィストで大絶叫! 美青年のアナルを引き裂く! 悲鳴、号泣、ヤラセなし」というもので、作り手の正気を疑うようなタイトルだった。
タケルの所在がわかったのは進展だが、彼の置かれている過酷な環境を思うと焦燥感が募り、なにをしているときも心ここにあらずだった。
僕は居ても立ってもいられず、ブライト・コーポレーションのサイトに表示されている住所に行った。
それは、新宿区の住宅街にある低層マンションだった。
玄関がオートロックでもなければコンシェルジュもいない庶民的な賃貸マンションで、一階はコンビニになっており、二階と三階の各部屋のベランダには洗濯物や布団が干してあるのが見える。
狭いエントランスを入ってすぐ内側に、郵便受けが並んでいた。
ブライト・コーポレーションは二階にあり、郵便受けにはダイヤル式の鍵が掛かっていた。
建物の規模を部屋の数で割ると、ワンルームの狭い部屋であることが想像できた。
ここにあるのは事務所だけで、モデルはべつの場所で管理されているのだろう。
事務所を訪ねてもなにも収穫はないとわかっていても、このまま引き返すのは惜しい気がした。
僕はエントランスホールの右手にある階段を上がった。
二階の廊下にはドアが三つあり、ブライト・コーポレーションは一番手前にあった。
ドアの前に立ち、気配をうかがう。
物音はしないが、ドアの上に設置された電気メーターの円盤が回転しており、中に人がいるのはわかった。
インターホンのボタンを押した。
電子音がした後、しばし静寂が流れた。
僕は急に自分が大胆なことをしていると気付き、怖くなって逃げようとした。が、
『はい?』
インターホンのスピーカーから、男の声がした。
『どなたですか?』
「あ、あの、タケルはいますか?」
『あんた、誰?』
「間違えました、すみません」
僕は逃げ出した。
急いで階段を駆け下り、建物の外に出る。
追いかけてくる人はいないとわかるまで、駅へ向かう道を走った。
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