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第3章 奉仕者
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普段、高島さんは別のところで生活しており、マンションを訪ねるのは、週に二、三回だった。
僕はマンションをきれいに整え、高島さんのために美味しい料理を作り、お酒を用意し、シャワーを浴びる。
天気のよい日にマンションの近くを散歩したり、買い物に行く以外は、あまり外に出なかった。
べつに家の中に閉じ込められているわけではなく、高島さんがいない間は自由に外出できたし、僕の自由に使える電子マネーも与えられていた。
しかし、物心付いてから──センターで暮らした一時期をのぞいては──ずっとホームの敷地の中で生活してきた僕は、いきなり自由に外出していいと言われても、どこに行けばいいのかわからなかった。
体力的には、決してハードな奉仕ではない。
寝て、起きて、身のまわりや家の中を整えて 買い物をし、料理をして、週に二回か三回、高島さんとセックスをする。
この暮らしが辛いと言ったら、怒られるのはわかっている。
しかし、僕は次第に疲弊していった。
心には感情のゴミがヘドロのように堆積し、それは目に、表情に、姿勢に、立ち方に、歩き方に、ため息の中にも滲み出てくる。
愛のないセックスを食べて生きる者に特有の、ある種の翳りのようなものが、笑っている顔にも貼りついている。
ふとした瞬間、鏡やガラスに映る自分の顔に、ぎょっとすることがあった。
高島さんに抱かれた後は、彼が寝息を立てはじめるのを確認すると、ベッドを抜け出し、シャワーを浴びた。
ボディソープの泡でごしごしと体をこすり、勢いよく吹き出すお湯ですすぎ落とす。
それを何度もくり返した。
心にたまったゴミから漂う腐敗臭のようなものを恐れ、少しでも洗い浄めたかった。
僕はマンションをきれいに整え、高島さんのために美味しい料理を作り、お酒を用意し、シャワーを浴びる。
天気のよい日にマンションの近くを散歩したり、買い物に行く以外は、あまり外に出なかった。
べつに家の中に閉じ込められているわけではなく、高島さんがいない間は自由に外出できたし、僕の自由に使える電子マネーも与えられていた。
しかし、物心付いてから──センターで暮らした一時期をのぞいては──ずっとホームの敷地の中で生活してきた僕は、いきなり自由に外出していいと言われても、どこに行けばいいのかわからなかった。
体力的には、決してハードな奉仕ではない。
寝て、起きて、身のまわりや家の中を整えて 買い物をし、料理をして、週に二回か三回、高島さんとセックスをする。
この暮らしが辛いと言ったら、怒られるのはわかっている。
しかし、僕は次第に疲弊していった。
心には感情のゴミがヘドロのように堆積し、それは目に、表情に、姿勢に、立ち方に、歩き方に、ため息の中にも滲み出てくる。
愛のないセックスを食べて生きる者に特有の、ある種の翳りのようなものが、笑っている顔にも貼りついている。
ふとした瞬間、鏡やガラスに映る自分の顔に、ぎょっとすることがあった。
高島さんに抱かれた後は、彼が寝息を立てはじめるのを確認すると、ベッドを抜け出し、シャワーを浴びた。
ボディソープの泡でごしごしと体をこすり、勢いよく吹き出すお湯ですすぎ落とす。
それを何度もくり返した。
心にたまったゴミから漂う腐敗臭のようなものを恐れ、少しでも洗い浄めたかった。
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