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第3章 奉仕者
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最初の利用者は、高島さんという中年男性だった。
僕はハウスボーイとして、彼の家で奉仕することになった。
それはタワーマンションの二十九階にある三LDKの部屋で、リビングの掃き出し窓から東京湾が見えた。
「海は好きかい?」
窓の前に立って外を見ていると、うしろで高島さんが言った。
「はい」
僕はさしさわりのない返事をしたが、本心はがっかりしていた。
海を見るのはこれが初めてだったが、どんよりとした灰色の巨大な水たまりのようだった。
テレビや写真で見た海は、もっと青かったり、明るいエメラルドブルーだったり、水面に日射しが反射してキラキラと輝いていたから、僕が抱いていた海のイメージとのギャップに落胆した。
「私も海が好きでね、だからこの部屋にしたんだ。きみとは気が合いそうでよかった」
高島さんが近づいてくる気配に、僕は体を硬くした。
まだ昼下りだったが、僕は促されるままシャワーを浴びて、彼が用意したバスローブを素肌の上に着ていた。
ホームにいた頃、同性間でもセックスは行われると教わった。
先生は、同性間と異性間の、どちらが良いとも悪いとも言わなかった。
でも、生徒たちは──少なくとも僕と同学年の男子生徒の間では、同性愛よりも異性愛のほうがノーマルだという認識が共有されていた。
異性愛のほうがノーマルというよりも、男性の同性間のセックスはコミカルなものとして扱われ、軟弱な者がやることだと見なされていた。
タケルが僕とセックスした後、彼のほうから誘ってきたにもかかわらず、僕を牽制するような態度をとったのは、軟弱に思われるのが嫌だったからだと思う。
そして、僕が男子寮でのタケルとの出来事を「セックス」に分類することに拘ったのは、あれが僕の「初体験」だと思いたかったからだ。
正直に言ってしまうと、高島さんとの初めてのセックスは、悲惨だった。
とっくに覚悟はできている──つもりでいた。
なにをされても我慢して、犬に噛まれたと思っておとなしくしていればいいと思っていた。
僕はハウスボーイとして、彼の家で奉仕することになった。
それはタワーマンションの二十九階にある三LDKの部屋で、リビングの掃き出し窓から東京湾が見えた。
「海は好きかい?」
窓の前に立って外を見ていると、うしろで高島さんが言った。
「はい」
僕はさしさわりのない返事をしたが、本心はがっかりしていた。
海を見るのはこれが初めてだったが、どんよりとした灰色の巨大な水たまりのようだった。
テレビや写真で見た海は、もっと青かったり、明るいエメラルドブルーだったり、水面に日射しが反射してキラキラと輝いていたから、僕が抱いていた海のイメージとのギャップに落胆した。
「私も海が好きでね、だからこの部屋にしたんだ。きみとは気が合いそうでよかった」
高島さんが近づいてくる気配に、僕は体を硬くした。
まだ昼下りだったが、僕は促されるままシャワーを浴びて、彼が用意したバスローブを素肌の上に着ていた。
ホームにいた頃、同性間でもセックスは行われると教わった。
先生は、同性間と異性間の、どちらが良いとも悪いとも言わなかった。
でも、生徒たちは──少なくとも僕と同学年の男子生徒の間では、同性愛よりも異性愛のほうがノーマルだという認識が共有されていた。
異性愛のほうがノーマルというよりも、男性の同性間のセックスはコミカルなものとして扱われ、軟弱な者がやることだと見なされていた。
タケルが僕とセックスした後、彼のほうから誘ってきたにもかかわらず、僕を牽制するような態度をとったのは、軟弱に思われるのが嫌だったからだと思う。
そして、僕が男子寮でのタケルとの出来事を「セックス」に分類することに拘ったのは、あれが僕の「初体験」だと思いたかったからだ。
正直に言ってしまうと、高島さんとの初めてのセックスは、悲惨だった。
とっくに覚悟はできている──つもりでいた。
なにをされても我慢して、犬に噛まれたと思っておとなしくしていればいいと思っていた。
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