神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

文字の大きさ
上 下
18 / 53
第3章 淫欲の島

しおりを挟む
 故郷の志摩国は、豊かなところではあるが、政治的に安定しているとは言い難い。

 雪千代たちの生家のような、小規模な領主一族は、権力の所在が変わるたびに、前の主家を裏切り、新しい勢力に従うことで生き延びてきた。

 風見鶏のように時勢を読んで、節操なくあちらに靡いたり、こちらに尻尾を振ったりしながら、先祖代々の領地を守ってきたのだ。

 士分だからといって家柄の上に胡座をかいていられる時代ではなく、常に破滅と隣り合わせにあることは、幼い頃から肌で理解していた。

 また、家では継母に気をつかう暮らしだった。

 日々の生活の節々に、自分たちと異母弟妹らとの扱いに、微妙な差別があるのを感じながら成長した。

 それでも父が生きている間は、これみよがしに粗末な扱いはされなかった。

 しかし、父が病で急死すると、継母は豹変した。

 雪千代と鶴千代の兄弟は、親戚の家に行くと騙されて、人買いに売られた。

 そんな嫌な記憶の結びついた故郷の家に、鶴千代は帰りたがっていた。

 いや、そんな故郷に帰りたいと思うほど、ここでの暮らしが辛いのだ。

「今頃は、田畑が青々としているだろうな」

 その言葉につられるように、雪千代の脳裏に、豊かな田畑の広がる人里の風景があざやかに思い出された。

 夕映えに燃える空を横切るカラスの影、蛙の声、風にそよぐ稲穂のさざ波。

 ともすると、それは故郷の村の記憶ではなく、この時代に生きる人々が抱いている「人里」の概念のような心象風景だったのかも知れない。

 それがなんであれ、雪千代の心はなつかしさでいっぱいになった。

 この島には田畑がない。
 漁で採れる海産物以外の食糧は、本土から船で定期的に運ばれてくる。

 しかし、彼の人生の土台をなすのは、土地に根付き、泥にまみれて田畑を耕し、それを糧に生きる人々が暮らす村里の、その営みである。

「いつか帰ろう、一緒に」

 雪千代は弟に顔を向けていたものの、その言葉は自分に言い聞かせるものだった。

「はい、兄上」

 鶴千代は返事をしたが、目線はぼんやりと遠い空に置かれたままだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...