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第8章 魔王の使者
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雪千代は着ているものを脱ぎ、湯帷子──風呂に入るときに身につける、裾の短い薄手の肌着を着た。
その姿で、客人のために用意した湯帷子や着替えを乗せた衣装盆を持って、堀のいる部屋へ向かった。
「堀さま、お風呂の支度ができました」
敷居の手前に指先をついて、深々とこうべを垂れる。
「風呂か。今日は冷える故、ありがたい」
堀はくつろいだ着流しの小袖姿で、にっこり笑って立ち上がった。
「こちらでございます」
雪千代は堀を風呂場に案内した。
「ほう、これは見事だ」
この時代、風呂といえば蒸し風呂をさした。
総檜造りの風呂場は広々として、蒸気の立ち上るところに敷いた石菖が蒸され、清涼な香りを放っている。
雪千代は堀の前にひざまずき、背後に腕をまわして帯を解こうとした。
しかし、
「いや、よい、自分でやる」
堀は穏やかに雪千代の手をのけて、手早く小袖と肌着を脱ぎはじめた。
むき出しになった背中に、雪千代は湯帷子を羽織らせる。
「かたじけない、あとは一人でできる。そなたはここで待っておるがよい」
堀は告げると、雪千代を脱衣所に残し、ひとりで風呂場に入っていくと引き戸を閉めた。
雪千代は、拍子抜けした。
この時代、寺社や武家社会では男色は当たり前に行われており、武士のたしなみとさえ言われている。
こうして透けるような湯帷子を一枚まとっただけの美少年が風呂場にいれば、やることは決まっていた。
この社に連れて来られて以来、性の対象として見られて扱われることに慣れていた雪千代は、堀のふるまいに呆然とした。
その姿で、客人のために用意した湯帷子や着替えを乗せた衣装盆を持って、堀のいる部屋へ向かった。
「堀さま、お風呂の支度ができました」
敷居の手前に指先をついて、深々とこうべを垂れる。
「風呂か。今日は冷える故、ありがたい」
堀はくつろいだ着流しの小袖姿で、にっこり笑って立ち上がった。
「こちらでございます」
雪千代は堀を風呂場に案内した。
「ほう、これは見事だ」
この時代、風呂といえば蒸し風呂をさした。
総檜造りの風呂場は広々として、蒸気の立ち上るところに敷いた石菖が蒸され、清涼な香りを放っている。
雪千代は堀の前にひざまずき、背後に腕をまわして帯を解こうとした。
しかし、
「いや、よい、自分でやる」
堀は穏やかに雪千代の手をのけて、手早く小袖と肌着を脱ぎはじめた。
むき出しになった背中に、雪千代は湯帷子を羽織らせる。
「かたじけない、あとは一人でできる。そなたはここで待っておるがよい」
堀は告げると、雪千代を脱衣所に残し、ひとりで風呂場に入っていくと引き戸を閉めた。
雪千代は、拍子抜けした。
この時代、寺社や武家社会では男色は当たり前に行われており、武士のたしなみとさえ言われている。
こうして透けるような湯帷子を一枚まとっただけの美少年が風呂場にいれば、やることは決まっていた。
この社に連れて来られて以来、性の対象として見られて扱われることに慣れていた雪千代は、堀のふるまいに呆然とした。
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