神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第12章 帰還

最終回

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 雪千代は、九鬼嘉隆から三百の兵を借り受けて、故郷の村に帰った。

 柳原家の一族郎党は、継母を除いて、雪千代は死んだと思い込んでいたようだった。

 彼らは雪千代を見ると、まずは驚き、あわてふためいた。

 そして、雪千代が正真正銘、柳原一之助の長男の雪千代であると認めると、すんなりと門を開けて迎え入れた。

 雪千代は継母に縄をうち、問いただしたところ、彼女は小者に金銭を渡し、雪千代と鶴千代を殺害するように命じたという。

 しかし、小者は欲に目がくらんではいたが、子供を手にかけるほどの度胸はなく、周旋屋に雪千代たちを売り飛ばしたのだ。

 まだ九歳の松蔵をはじめとする弟や妹たちは、雪千代たちは病で死んだと聞かされており、それを信じ込んでいた。

 九鬼と織田の力を後ろ盾に、柳原家の当主となった雪千代は、継母と小者を磔刑に処した。

 自分だけならまだしも、痩せ細って血を吐いて死んだ鶴千代の無念を思うと、何度殺しても殺し足りないほどだった。

 それから、あまり待たずに、やしろに復讐する機会が訪れた。

 その夏、信長は、伊勢長島で勢力をふるう一向衆の討伐に出陣する計画を立てており、九鬼嘉隆は、水軍の大将として、船で兵を上陸させる役目を担っていた。

 玉宮神社は、織田家に恭順を示していたが、九鬼嘉隆は、玉宮神社を灰燼に帰せよと、信長からの密命を受けていた。

 雪千代は、九鬼水軍の一員として、手勢を率いて姫島に向かう船に乗り込んだ。

 玉宮神社が、本願寺や毛利と通じているという根拠はない。

 雪千代が信長に告げたのは、根も葉もない作り話であったが、一欠片の罪悪感も覚えなかった。

 いよいよかと胸が高鳴った。

 九鬼水軍一万に対し、玉宮神社の手勢は、わずか二百余。

 兵力の差もさることながら、不意打ちということもあり、最初から勝ち目はないと悟ったやしろ側は、九鬼勢が島に上陸する前に、和議の使者をよこした。

 しかし、使者は切り捨てられた。

 和睦はならず、根切りにせよ──それが信長の命令だった。

 九鬼勢は島に上陸した。
 社の兵は逃げ出したのか、恐れをなして隠れているのか、港でも参道でも抵抗は一切なかった。

 山頂に着いた九鬼勢は、奥宮、紅葉殿、松葉殿の三手に別れて取り囲み、社殿に火を放った。

 建物に火がまわるよりも早く、立て籠もっていた神職や出仕、民兵らが外に出てきて、あっさりと降伏した。

 しかし、出仕と民兵は全員、その場で斬り殺された。

 もはや戦ではなく、虐殺だった。

 神職は生け捕りにされて、禰宜と権禰宜は磔刑に、宮司と権宮司は逆さ磔にされた。

 そのまま数刻のあいだ放置して、彼らがまるで別人になったかのように顔立ちが変わるほど、たっぷりと苦しんだことを見届けてから、いったん逆さ磔から解放した。

 そして、今度は頭を上にして、再度、磔柱にくくりつけると、柱の足元に薪をくべて、火をつけた。

 すべて信長の命令どおりであった。

 ごうごうと炎を上げる社殿を背景に、宮司と権宮司は、生きながらにして火炙りにされた。

 少し離れたところで、雪千代は、九鬼嘉隆と共に、その様子を見ていた。

 復讐はなにも生まないと言われるが、それは強者の理論である。

 やり返せなかったから、決して癒えることのない傷として心に残るのだ。

 恨みを晴らしたことで、雪千代の心に突き刺さっていた屈辱的な記憶は、ようやく生々しさを捨てて、過去のものになった。

 ──見えるか、鶴、かたきをとったぞ。

 雪千代は胸の中で、弟の思い出に語りかけた。


  ~おわり~
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感想 1

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みんなの感想(1件)

内藤 亮
2022.02.28 内藤 亮

文章がさらさらと読みやすくて、とても好きです。
潔く〝腐〟と書いていらっしゃるのもよいですw

丸井マロ
2022.02.28 丸井マロ

ご感想ありがとうございます。
読んでいる方がいるとわかって励みになります。
今後ともよろしくお願いします。

解除

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