神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第11章 出発の朝

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 翌朝、雪千代が目覚めると、枕元には堀がいた。

「目を覚まされましたか?」

「はい……」

「起き上がれますか?」

 雪千代は上体を起こした。

 頭から血が引いたのか、視界が暗くなって目眩がしたが、しばらくじっとしているとおさまった。

「水は?」
 堀は吸い飲みを手に尋ねた。

 雪千代はうなずいた。

 堀が手ずから雪千代に水を飲ませた。

「ご気分は?」

「生き返ったようです」

 雪千代は笑みを浮かべた。

「よかった」

 堀は盛大に安堵のため息をつくと、雪千代ににこやかな顔を向けた。

 そうしていると、昨夜とは別人のように穏やかな好青年だ。

「体力が回復するまでは横になって休んでいるほうが良いとは思うが、ここは伏魔殿だ。人間の皮をかぶった鬼どもがうろうろしておる」

 堀は顔を歪め、嫌悪を隠さなかった。

「町から人を呼んでおる。そなたには無理をさせて申し訳ないが、今日中に島を出よう」

「かたじけのうございます」

 雪千代は頭を下げた。
 この島を出られる。
 そう思うと、感極まって涙がこぼれた。

 堀は微笑を浮かべて、雪千代を見守っていた。

 やがて、長谷川が、下の集落から集めた四人の漁民を連れて、戻ってきた。

 板戸に褥を敷いて、そこに雪千代を寝かせると、男たちが板戸を持ち上げる。

 神職や出仕らがぞろぞろと、玄関の外まで見送りに出てきた。

「神子様、お達者で」

 高浜が神妙に述べた。
 雪千代は笑みを返した。

「出発だ」

 堀の号令に、一同は歩き出した。
 雪千代は、板戸に仰向けになって青い空を見上げながら、奥宮を後にした。
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