神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第10章 毒

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「は……」
 にわかに宮司のおもてに緊張が走る。

「今夏、われわれは伊勢長島に出陣します。玉宮神社は九鬼水軍の配下に入り、織田にお味方していただけるという認識でよろしいですかな?」

「はあ、その、ええと……」

 いきなり際どい話を振られて、宮司はしどろもどろになった。

 若くても、さすがは信長公の側近、侮ることはできない。

「さて、神子様のお顔を拝見させていただくとしましょうか」

 しどろもどろになった宮司にさらに畳み掛けるように、堀は言葉を重ねた。

「それは、その……神子様に近づくと、病がうつるやも知れず……」

「かまわん。案内したまえ」

 堀と長谷川はさっと立ち上がると、宮司を見下ろした。

「お待ちくださいませ」

 宮司と使者の間に、最年長の禰宜が割り入り、引き止めようとする。

 しかし、

「案内してくれぬなら、勝手に探すがよろしいかな?」

 堀らは一歩も引かなかった。

 仕方なく、宮司は客人らを雪千代の部屋に案内した。

 彼らが入室したとき、雪千代は命じられたとおり、おとなしく床に入っていたものの、以前、堀が見たときよりも顔色はよかった。

 雪千代はしばらく陵辱の苦痛から解放されているおかげで、この島に来てからもっとも体調がよかった。

「お元気そうで安心しました」
 堀は雪千代に笑みをかけた。

「神子様は、今日はめずらしく調子がよろしく……」

 宮司が苦しまぎれに言い訳をするが、

「ほう、めずらしく調子が良いなら、今のうちに岐阜に連れて参ろう」

「しかし──」

「しかしもかかしもない」堀はぴしゃりと言った。「それがしの言葉は、上さまの言葉と思っていただきたい。従わぬは、上さまに逆らうことになりまするぞ」

 神職らは黙り込んだ。

 突然のことに、雪千代は褥の上に横たわったまま、目を丸くしていた。
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