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第5章 立浪
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立浪は誰かに見られていないかと注意して、用心深く周囲を見まわしながら奥宮を後にすると、参道を通って山を下った。
途中で参道をそれて、獣道のような山道を進む。
大きな岩の前に来ると、その下の窪みに隠しておいた荒縄を取り上げ、肩に担いだ。
狭い島では、どちらに向かって歩いても、いずれは海岸線にたどり着く。
彼が来たのは、海を見下ろす崖っぷちだった。
島は、港の周辺にある低地の岩場をのぞいては、このような断崖絶壁に囲まれている。
立浪はなにかを探して海を見下ろしながら、崖っぷちを歩いた。
ややあって足を止めると、崖の下を覗き込んだ。
そこは、剥き出しになっている岩肌の傾斜が、他の場所より穏やかに見えた。
立浪は、落ちないようにと姿勢を低くして、崖の斜面を観察した。
岩肌には、足場になりそうな出っ張りが、ちょうどよい間隔をあけて数ヶ所ある。
彼は立ち上がると、近くにあった丈夫そうな木の幹に縄を結びつけた。
その縄の端を、崖の下に放り投げる。
立浪は気合いを入れるように自身の頬を叩き、手に唾を吐いた。
そして、縄をつかんで崖に足をかけると、するすると縄を伝って岩肌をおりていく。
彼の予想したとおり、岩肌のゴツゴツとした出っ張りが足場になり、難なく下の岩場までおりることができた。
「これなら、神子様でもおりられるだろう」
立浪はまぶしげに目を細め、崖を見上げてひとりごちた。
それから、くるりと半回転して沖を見つめた。
「あとは船か……」
目線の先には、大小の船が沖合いに浮かんでいた。
途中で参道をそれて、獣道のような山道を進む。
大きな岩の前に来ると、その下の窪みに隠しておいた荒縄を取り上げ、肩に担いだ。
狭い島では、どちらに向かって歩いても、いずれは海岸線にたどり着く。
彼が来たのは、海を見下ろす崖っぷちだった。
島は、港の周辺にある低地の岩場をのぞいては、このような断崖絶壁に囲まれている。
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ややあって足を止めると、崖の下を覗き込んだ。
そこは、剥き出しになっている岩肌の傾斜が、他の場所より穏やかに見えた。
立浪は、落ちないようにと姿勢を低くして、崖の斜面を観察した。
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彼は立ち上がると、近くにあった丈夫そうな木の幹に縄を結びつけた。
その縄の端を、崖の下に放り投げる。
立浪は気合いを入れるように自身の頬を叩き、手に唾を吐いた。
そして、縄をつかんで崖に足をかけると、するすると縄を伝って岩肌をおりていく。
彼の予想したとおり、岩肌のゴツゴツとした出っ張りが足場になり、難なく下の岩場までおりることができた。
「これなら、神子様でもおりられるだろう」
立浪はまぶしげに目を細め、崖を見上げてひとりごちた。
それから、くるりと半回転して沖を見つめた。
「あとは船か……」
目線の先には、大小の船が沖合いに浮かんでいた。
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