神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第4章 肺病

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 夏が終わり、短い秋が通り過ぎていくのは、あっという間だった。

「うう、冷えるな」

 雪千代はひとりごち、みずからの手にほおっとぬくい息を吐いた。

 いつものように奥宮の庭を横切り、松葉殿に向かった。

 この島に来てから、鶴千代は病がちであったが、ここ数日、急に調子を崩し、熱を出して臥せっていると聞いている。

 心配で、雪千代の足は自然と速くなった。

 雪千代を出迎えた松葉殿の出仕は、いつもと様子が違った。

「鶴神子様はご容態が悪く、ご面会はかないませぬ」

「容態が悪い?」

「はい、本日はお引き取りくださいませ」

「待て!」

 出仕の背中を雪千代は呼び止める。

「鶴に会うまで私は帰らぬぞ」

「し、しかし……」

「帰らぬと言ったら帰らぬ」

 騒ぎを聞きつけて、数人の出仕が集まってきた。

 その中に、鶴千代の世話をしている高浜の顔があった。

「高浜、どういうことだ?」

「……こちらに」

 高浜に促され、雪千代は玄関の外に出た。

「鶴の病は重いのか?」

「ここ数日、朝晩冷え込むようになってから、ご不調が続いておられましたが……」

 雪千代は高浜とならんで、ぐるりと建物の裏手にまわる小路を歩いた。

「薬師の見立てによると、労咳ろうがいとのことです」

「労咳……」

 それは肺結核のことで、抗生物質のない時代、不治の病としておそれられていた。

 高浜について行くうちに、雪千代はいつの間にか、松葉殿の北側にある厨房の裏側に来ていることに気づいた。

 こんなところに来るのは初めてだった。

「こちらに」

 案内されたのは、小さな薪小屋だった。
 不審に思い、雪千代は足を止めて、高浜の顔を見つめる。

 高浜は小屋の引き戸を開けて、もう一度、「どうぞ」と促した。

 雪千代は警戒しながら、おそるおそる中を覗き込んだ。

「鶴!」

 小屋の中に保管されている薪を掻き分けて作られた空間。

 そこに鶴千代は横たわっていた。
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