神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第3章 淫欲の島

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 松葉殿の頂点は権宮司で、紅葉殿より若干、人的規模は小さいものの、鶴千代も兄と同じような暴行陵辱に曝されていた。

 まだ数え年で十一歳の鶴千代には酷すぎる日々に、またたく間に体は衰弱し、病がちになった。

 医師の手当てや薬で一時的に回復しても、しばらくすると、また床に臥せってしまう。

 雪千代が訪ねると、笑顔を見せるときもあるが、その目は虚ろで、以前のような鷹揚とした無邪気さは失われていた。

 梅雨が明けると、いきなり太陽が近くに来たように日差しが強くなった。

 雪千代はスイカが手に入ったので、鶴千代に食べさせてやろうと松葉殿を訪ねた。

 兄弟は、故郷の家にいた頃のように、濡れ縁に並んで座り、スイカをかじった。

 鶴千代は、しばらくは楽しげに笑っていたが、半分ほど食べたところで、スイカを手にしたままうつむいた。

「どうした、食べないのか?」

 雪千代の問いかけに、

「柳原の村は、変わりないかのう?」

 弟は、ひとりごとのようにつぶやいた。 

「柳原の村か……」

 雪千代は遠い空を見た。

 海の向こうの本土では、織田信長が、第十五代将軍である足利義昭を京から追放し、室町幕府は事実上の滅亡を迎えた。

 信長は、己が唯一の「天下人」となったことを誇示するために、朝廷に働きかけて、元号を元亀から天正に改めさせたという報せは、この島にも届いている。

「帰りたいな……」

 鶴千代はつぶやいた。
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